【介護・障害福祉事業所向け】助成金申請前の労務管理の確認ポイントを解説|社会保険労務士法人エンジー

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【介護・障害福祉事業所向け】助成金申請前の労務管理の確認ポイントを解説

【介護・障害福祉事業所向け】助成金申請前の労務管理の確認ポイントを解説

公開日 2026/10/05

社会保険労務士法人エンジーでは、介護サービス事業所・施設や障害福祉サービス事業所を運営する事業者様に向けて、実務に役立つ情報を発信しています。

助成金の活用を考えるときには、制度の要件だけでなく、日頃の労務管理も確認しておきたいところです。雇用関係助成金では、就業規則や勤務・賃金の記録が、要件の確認に関わる場合があります。本記事では、申請を検討する前に見直しておきたいポイントをご紹介していきます。

※必要な要件や書類は助成金ごとに異なりますので、一つの参考としてご覧ください。

助成金申請前に、労務管理体制を整えるべき理由

助成金の申請を検討する際は、日頃の労務管理が法令に沿っているか、申請内容を記録で確認できるかを点検することが重要です。ただし、過去に労務上の問題があったことだけで、すべての助成金が一律に不支給となるわけではありません。受給の可否は、雇用関係助成金の共通要領と、申請する助成金・コースの個別要件に沿って確認します。[1][2]

雇用関係助成金と労務管理の関係

雇用関係助成金は、雇用の安定や職業能力の向上などに関する取組を支援する制度です。申請時には、共通の支給要件・不支給要件に加え、助成金・コースごとの要件を確認します。労働関係法令の違反が不支給要件に該当する場合や、賃金の支払い・労働時間の記録などが個別要件の確認に影響する場合があるため、日頃の労務管理も併せて点検しましょう。[1][2]

介護・障害福祉サービス事業所が職員の採用、定着、待遇改善などを目的として助成金を活用する場合、申請要件を満たしていることを客観的な書類で証明する必要があります。就業規則の整備や、適切な労働時間管理、正しい賃金計算といった日常の労務管理が適切に行われていないと、要件を満たしていることの証明が難しくなる傾向があるので、助成金は申請手続きそのものだけでなく、土台となる労務環境の整備と一体で進めることが大切です。

助成金の要件や必要書類は制度ごとに異なる

助成金の種類によって、対象となる取り組みや満たすべき条件、提出が求められる書類は異なります。また、法改正や年度ごとの予算措置によって制度内容が変更されることもあります。

雇用関係助成金には、有期雇用労働者等の正社員化を支援するものや、介護休業の取得など仕事と家庭の両立を支援するものがあり、対象となる取組や要件は、助成金・コースごとに異なります。[2][11]

それぞれで求められる労務要件は異なるため、自社が活用したい助成金のルールを正確に把握することが第一歩です。最新の要件や支給額、必要な書類については、必ず厚生労働省の公式ホームページや管轄の労働局の案内をご確認ください。

労務管理や書類の不備が審査上の問題になるケース

日頃の労務管理に不十分な点があると、助成金の審査において要件を満たしていないと判断される原因になります。ここでは、実務上、書類の不整合などが問題になりやすいポイントを整理します。

たとえば、労働条件通知書に記載した賃金の条件と賃金台帳上の支払額に差がある場合や、出勤記録と給与計算に用いた労働時間が異なる場合は、その理由を確認します。残業・欠勤・手当の変動など、説明できる差であれば、数字が一致しないことだけをもって不備とはいえません。一方、実際の労働時間が賃金計算に反映されていない場合や、就業規則の内容が法令上の基準を下回る場合は、是正と、申請要件への影響の確認が必要です。[2][4]

 

申請前にシフト表とタイムカードを照合すると、予定と実績の差について確認が必要になる場合があります。差があること自体を問題視するのではなく、実際の労働時間が正しく記録され、賃金計算に反映されているかを平時から確認しておくことが大切です。

助成金申請前に整えておきたい労務管理の4つのポイント

ここからは、雇用関係助成金の審査において土台として確認されやすい労務管理のポイントを4つに分けて解説していきます。自社の現状と照らし合わせて確認してみてください。

【労務管理のポイント】

  • 労働者名簿・賃金台帳・出勤記録の整備と整合性
  • 就業規則の内容と周知状況
  • 労働時間の把握、時間外労働と割増賃金
  • 労働条件の明示と実際の取扱いとの整合性

1:労働者名簿・賃金台帳・出勤記録の整備と整合性

労働者名簿と賃金台帳に加え、出勤簿やタイムカードなどの労働時間を確認できる記録を整備・保存しているか確認します。これらは、勤務実態や賃金の支払いを確認するための重要な資料です。申請時に提出する資料や確認対象期間は、助成金・コースによって異なります。[2][4]

出勤記録は、手書きか電子かにかかわらず、実際の始業・終業時刻を適正に確認・記録できているか、打刻漏れや他の記録との食い違いを放置していないかを確認します。労働者の自己申告によって労働時間を把握する場合は、厚生労働省のガイドラインに沿って、客観的な記録との著しい乖離がないか確認し、必要に応じて実態を調査・補正します。また、賃金台帳については、労働日数・労働時間数・時間外/休日/深夜労働の時間数に加え、基本給・手当等の額や控除額など、必要な事項が正確に記載されているか確認します。[4]

労働者名簿・賃金台帳・出勤記録を照らし合わせ、氏名や労働日数、労働時間などに、説明できない食い違いがないか確認することが大切です。

2:就業規則の内容と周知状況

事業所のルールを定めた就業規則が、実際の勤務形態と合致しており、かつ従業員に正しく周知されているかを確認します。ひな形をそのまま使用している場合、実態との乖離が生じやすくなります。

労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する事業場に、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。助成金・コースによっては、就業規則や労働協約など、取組の根拠となる規程の提出も必要です。

一方、常時10人未満の事業場については、たとえば、キャリアアップ助成金で就業規則等への規定が必要なコースでは、取組日までに必要な規定を整備・周知します。常時10人未満の事業場が就業規則を作成する場合は、取組日までに事業場内へ周知したうえで、支給申請前に労働基準監督署へ届け出るか、就業規則の周知実施について、事業主と労働組合等の労働者代表者の氏名等を記載した申立書を申請書に添付する方法が案内されています。必要な規程と提出方法を、申請するコースの案内で確認してください。[3][5]

3:労働時間の把握、時間外労働と割増賃金

従業員の労働時間を適正に把握し、法定労働時間を超えた分について正しい計算で割増賃金が支払われているかが問われます。割増賃金に未払いがあれば、まず支払状況を確認し、必要な是正を行いましょう。助成金への影響は、共通の不支給要件と申請する助成金・コースの賃金支払要件に照らして個別に確認します。[1][2][4]

介護事業所では、申し送りや着替え、記録業務などについても、使用者の指揮命令下にある時間かを実態に即して確認しましょう。[4]

固定残業代を設けている場合は、基本給と固定残業代を区分し、固定残業代が何時間分のどの割増賃金に当たるか、金額や計算方法を確認します。実際に支払うべき割増賃金が固定残業代を上回る場合は、不足分の追加支払いが必要です。休日労働や深夜労働を固定残業代に含めるかどうかも、制度の内容に応じて確認してください。[4][8]

4:労働条件の明示と実際の取扱いとの整合性

従業員を雇い入れる際は、パートタイム・アルバイトを含め、必要な労働条件を明示しているか確認します。一定の事項は書面による明示が原則ですが、労働者が希望し、出力可能な方法であれば、電子メール等による明示も認められます。雇用契約書など、助成金申請時に必要となる資料は、申請する助成金・コースの案内で確認してください。[6][11]

明示した労働時間、休日、賃金、契約期間などの条件と、実際の取扱いが整合しているか確認します。残業・欠勤・シフト変更や、支給条件に応じて変動する手当により、明示した所定時間・基本給と各月の勤務実績・支払額が同じ数字にならない場合もあります。差があるときは、その理由を勤務記録、賃金台帳、適用する規程から説明できるようにしておきましょう。[4][6]

有期労働契約では、契約締結・更新時に適用される労働条件の明示事項(更新の基準・更新上限など)を確認しましょう。そのうえで、助成金を申請する場合は、対象労働者の契約期間や更新状況について、当該コースの要件・必要書類と照合してください。[11][12]

自社の労務状況や帳簿の整備状況に不安がある場合は、申請手続きを進める前に、社会保険労務士などの専門家による労務監査や就業規則の見直し・確認を受けることも一つの選択肢となります。

介護・障害福祉事業所で確認したい実務上の注意点

介護・障害福祉サービス業界ならではの複雑な勤務形態や独自の制度は、助成金申請において判断を迷いやすい要素となります。ここでは実務上の注意点を2つ解説します。

変形労働時間制・夜勤の労働時間と割増賃金

1ヶ月単位の変形労働時間制や夜勤交替制を採用している場合は、あらかじめ定めた労働時間と実際の勤務を照合し、時間外・深夜労働等の割増賃金を正しく計算できているか確認しましょう。

変形労働時間制は、月内の繁閑に合わせて労働時間を調整できる制度ですが、あらかじめシフトを組んで所定労働時間を明確にしておく必要があります。シフトを変更する場合は、変形期間における各日・各週の労働時間の定めと実際の勤務を照らし合わせ、時間外労働に当たる時間を適切に計算します。変更が多いことだけで直ちに制度が無効になるわけではありませんが、当初の定めや実際の勤務時間を確認できないと、割増賃金の計算を誤るおそれがあります。夜勤についても、深夜労働に対する割増賃金を含めて点検しましょう。[7]

 

変形労働時間制では、あらかじめ定めた勤務時間と実際の勤務を照らし合わせて割増賃金を計算します。意図しない未払いがないか、助成金申請の前に運用ルールと賃金計算を点検することをおすすめします。

処遇改善加算と雇用関係助成金を混同しない

介護報酬の「処遇改善加算」と、厚生労働省の「雇用関係助成金」は、目的は似ていても制度の枠組みや賃金アップの考え方が異なるため、混同しないように整理することが大切です。

介護職員等処遇改善加算は、介護報酬上の加算を活用して職員の賃金改善を行う制度です。職員への配分に当たっては、適用される加算の要件を満たす必要があります。一方、雇用関係助成金では、賃金規定の改定や正社員化など、助成金・コースごとに異なる取組を評価します。処遇改善加算を算定していることだけで雇用関係助成金の申請可否は決まりません。手当を賃金引上げの判定に算入できるかなどは、申請するコースの支給要領・Q&Aで個別に確認してください。[3][9][11]

※障害福祉サービス等の処遇改善加算は、介護保険の加算とは別の資料・要件も確認してください。[10]

2026年度の処遇改善加算における配分や制度変更については、以下の関連記事もご参照ください。

※関連記事:【2026年版】処遇改善加算 配分ルールの算定要件とは?変更点やポイントを解説

まとめ|申請する助成金の要件に沿って労務管理を確認しよう

雇用関係助成金を活用するためには、申請直前の帳尻合わせではなく、日頃から労働関連法令に則った適切な労務管理が継続されていることが重要です。

労働者名簿・賃金台帳・出勤記録の整備、就業規則の運用、労働時間と賃金の管理、労働条件の明示は、日頃から点検しておきたい事項です。そして、何度もお伝えしていますが、助成金の審査で必要となる規程、記録、提出書類は一律ではないので申請する助成金・コースの最新の要件に沿って確認しましょう。[1][11]

特に介護・障害福祉サービス事業所においては、変形労働時間制による複雑なシフト管理や、処遇改善加算との要件の違いなど、専門的な判断が求められる場面が多々あります。

自社のシフト制が法令の範囲内に収まっているか不安な場合や、就業規則を長年見直していない場合、あるいはどの助成金が活用できるか分からない場合は、専門家へ相談すべきタイミングと言えます。 社会保険労務士法人エンジーでは、名古屋市を中心に愛知県全域の介護・障害福祉サービス事業所様を支援しており、愛知労働局等の行政窓口の動向や、介護業界特有の実務を踏まえたサポートが可能です。助成金の活用や労務管理の見直しについてより具体的に整理したい場合は、お気軽にご相談ください。

※関連情報:エンジーの助成金手続き代行

お問い合わせ

助成金申請前に確認したいQ&A
Q
労働基準監督署から是正勧告を受けたことがあっても申請できますか?
A
是正勧告を受けたことだけで、一律に申請できなくなるわけではありません。違反内容と現在の是正状況を確認したうえで、申請する助成金に不支給要件があるかを調べましょう。判断に迷う場合は、管轄の労働局への相談が有効です。[1]
Q
古い就業規則を今から見直して、申請に間に合わせられますか?
A
申請する制度と、すでに取り組みを始めているかによります。制度によっては、取組の開始前に計画の提出や就業規則の整備が必要です。まず申請予定の助成金の手順を確認し、就業規則の変更や取組の開始前に準備を進めましょう。[11]
Q
処遇改善加算を算定していても、雇用関係助成金を申請できますか?
A
処遇改善加算を算定していることだけで、雇用関係助成金の申請可否が決まるわけではありません。処遇改善加算を原資とする手当を賃金引上げ要件の判定に含められるかなど、申請する助成金・コースの支給要領やQ&Aを確認しましょう。たとえば令和8年度のキャリアアップ助成金・正社員化コースにおける賃金3%以上の増額判定では、処遇改善加算手当についても特別な取扱いはなく、毎月の状況によって変動することが見込まれる場合は算定から除きます。ほかのコースについては、それぞれの支給要領・Q&Aを確認してください。[3][11]

(参考資料・出典)
この記事は、令和8年9月時点で確認できる厚生労働省の資料を参考に作成しています。助成金の支給要領・Q&Aは更新されるため、申請時には厚生労働省の掲載ページで適用版を確認してください。
[1] 雇用関係助成金の申請にあたって|厚生労働省
[2] 雇用関係助成金支給要領(第1 共通要領を含む。令和8年9月10日現在)|厚生労働省
[3] キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース以外)Q&A(令和8年度版・令和8年7月29日付)|厚生労働省
[4] 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省
[5] モデル就業規則について|厚生労働省
[6] 労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります|厚生労働省
[7] 1か月単位の変形労働時間制|厚生労働省
[8] 固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。|厚生労働省
[9] 介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)|厚生労働省
[10] 令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について|厚生労働省
[11] キャリアアップ助成金|厚生労働省
[12] 令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます|厚生労働省

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