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就業規則の作成、見直し

人が育つ強い会社になるために

上記の図をご覧下さい。

よい職員を採用するため、よい職員になってもらうため、人材教育をはじめ、いろいろな手法をこれまでも実施されてきたと思います。

しかし、おおくの職員が応募し、よい職員を採用し、長く勤めてもらうために、介護現場の仕組み(モデル行動基準)制度 を始め、職員と共に育っていくためには、まず、それを導入できる環境が必要です。

その環境が労務管理です。

  • 給料体系はどうなっており、どのように決まるのか
  • 労働時間は適切に管理されているのか
  • 残業代の計算方法は正しく行われているのだろうか
  • 病気やケガで働けなくなったらどうなるのだろうか
  • 健康保険の手続きはきちんとしてくれるのだろうか
  • 育児休業や介護休業の仕組みは正しく運用されているのだろうか

・・・など、まずは、働くための基本的環境を明確にしておく必要があります。
これらが明確になった上で、教育制度や研修などの効果が活かされて、人が育つ強い会社になると信じております。

人が育つ強い会社になるためにの第一歩が就業規則です。

会社にとって、労働条件は就業規則によって決ります。そして、就業規則で決められない個別の内容は労働契約書によって個々に決めることとなります。

就業規則は、会社は社内のルールを就業規則によって提示し、従業員はそのルールを理解した上で働くためのツールです。

従って、何もなければいいのですが、何か労務管理上で困ったことがあった場合、その解決法は就業規則によって判断することとなります。
就業規則の一語、一文が非常に重要であるということです。

よって、モデル就業規則の幾つかを項目を修正して安易に作成してしまうことは、会社の実体に合わない部分がでてくることが予想され、会社、従業員とも混乱することが考えられます。
実務上、特に会社にとっては、非常に不合理で不利な労働条件を提示し続けている状態であるかもしれません。

就業規則を作成、見直す上での主な留意点は、

  • 記載内容が労働基準法で定められている内容を全て含んでいるか
  • 会社での労働条件が、労働基準法をはじめ、各法律に違反してはいないか
  • 会社での労働条件が、判例を無視した内容となっていないか
  • 労働条件の変更に対し、同意を得られる根拠は明確か
  • 各条文で書かれている意味を理解し、実際の運用場面をイメージできるか

など。

福田社会保険労務士事務所は、介護事業所様に特化した、実際に運用できるシンプルな就業規則を数多く手がけております。

 

実際にあったエピソード

1.あるところで働きぶりを見込んで若い職員に入社してもらった。

早く仕事をどんどん覚えて欲しいため、毎日夜遅くまで働いてもらった。本人もそれなりに、意欲を持って一生懸命であった。

約1年後、どうしてもリーダーを任せるには時期尚早と判断した。本人には、リーダーになるにはもうしばらく時間がかかる、場合によってはリーダーではなくサブリーダーとするかもしれない、と伝えたところ退職してしまった。半ば、けんか別れのような感じだった。

その後、労働基準監督署を通じて、残業未払い請求をされた。

→あらかじめ、就業規則や労働契約書で賃金の額や計算方法等を明確にし、労働時間管理をきちんとしておけばよかった。また、会社の理念や職員に求める働き方を就業規則に明記して面接時に説明しておけばよかった。


2.非常に能力が高いので、主任として入社してもらった。
本人のプライドが高く、他の職員に対して、非常に厳しい態度をするようになった。
その影響で、他の職員からついていけないので辞めたいと言われるようになった。
本人に辞めてもらいたいが、トラブルになることが怖くてなかなか言い出せなかった。
ある日、本人が大きなミスをしたため、この機会に、退職勧奨の提案をした。相当怒っていたが、数ヶ月分の退職金(本来は退職金規定はないが・・・)を支払うことで納得してもらった。

→就業規則の服務規定や懲戒規定に、職員に求める働き方のあり方や嫌な働き方(“専断行為の禁止”“協調性の重要さ”など)を就業規則に明記して面接時に説明しておけばよかった。
また、できれば、職場のルールブックを作成して、定期的に全員に説明する機会を作っておけばよかった。



3.急に人手不足となり、急遽若い人を採用した。
未経験者であったが、ベテラン職員が教えればなんとかなると思い、見切りで採用した。
数ヶ月後、ベテラン職員から、あまりにも飲み込みが悪いため、時間ばかりかかり、自分の仕事も片づかない。
使えないのでクビにしてくれ、と言ってきた。
社長室に呼んで、そのことを本人に伝えたら、その場で帰ってしまい、翌日より無断欠勤となった。
その後、先輩のいじめにあっていたと損害賠償を請求された。

 



4.パート職員を採用して1ヶ月立経ったことから、無断欠勤や遅刻を頻繁にするようになった。
また、無断で残業するようになった。
何度注意してもなおらない。
仕事を頼んでもできあがるのが非常に遅い。注意したら退職したが、退職後、残業代請求をされた。

→少なくとも、就業規則に面接時の提出資料、採用時の提出資料を明記して、そのルールに基づいて面接をする。
また、会社の理念や職員に求める働き方のあり方や嫌な働き方(“専断行為の禁止”“協調性の重要さ”など)を就業規則に明記して面接時に説明しておけばよかった。

採用した後に辞めさせることは大変しんどい仕事です。
貴重な時間とエネルギーそして費用がかかります。
採用時に求める人材像を就業規則に基づいて説明し、常識のない人が近寄らない(会社の求める人が近寄ってくる)会社にすることが重要です。
したがって、職員の離職率の低下にもつながります。



5.社内でお客様の悪口を言う職員がいる。
会社の理念を説明して、何度も注意するが治らない。

→行動指針があれば、その内容を就業規則に落とし込むことも考えられます。
もちろん、分かりやすく内容を説明することは必要です。
少なくとも、就業規則等労務管理をきちんとしていない職場において、会社の理念を浸透させることはできません。

 

日常におけるよくある労務上の事例

上記以外でも、日常において、下記のような事例は頻繁に起きております。
これらの様な事例を、短時間に、客観的に処理することができるのが就業規則です。

  • 病気で入院したけど、復帰の可否判断はどれくらいですればよいのか
  • 有給休暇を休んだ翌日に請求してきたけれど認めないといけないのか
  • ご利用者様のところの個人情報をうっかり漏らした職員がいて会社にクレームがあった
  • 職員が裁判員に選ばれて休暇をとりたいと言ってきたがどうすればよいか
  • 職員が通勤で使う車、通勤中に交通事故を起こした場合、不安だ
  • 面接時に話していた資格を実際は持っていなかった
  • 残業を拒否された、または、勝手に残業をしている
  • 勤務中に私的メールをネットを頻繁に行っているのでなんとかしたい
  • 突然音信不通になってしまった。
  • 親睦会費などを給与天引きしたい
  • なんだか、遠回りした通勤費を申告されている気がする
  • そのときの都合で適当に手当を作ってきたが、問題にはならないだろうか
  • 人によって手当がバラバラだが問題にはならないだろうか
  • 今期の経営方針を一緒に考えようと言ったら、面倒くさそうな顔をされた
  • 社内研修を実施することとしたが、第1回目から遅刻者が続出している
  • 社長の言うことを聞かない職員がいる
  • 社内に、時間にルーズな雰囲気が漂っているのでなんとかしたい
  • 助成金をもらいやすくしたい

 

就業規則作成のポイント

オリジナル就業規則の必要性

就業規則に最低限記載しなくてはならない項目は、絶対的記載事項と相対的記載事項が労働基準法にて定められております。

作成する際のポイントは、モデル例をそのままコピーするのではなく、各条文を吟味し、会社の内情を具体的に当てはめて(実際に起こり得る事例)を想定しながら修正していくことです。
そうでなければ、多くの場合、作成しても有効に運用できなくなり、お蔵入りとなってしまうだけでなく、労務管理上のトラブルが発生した場合、会社にとって大変困る状況になる可能性があります。

具体的には、

就業規則の適用対象者の範囲の明確性

正規職員やパートタイマー、等色々なタイプの職員が一緒に働いている場合、必要なら就業規則を分けなければなりません。
正規職員でも職務や職群等で区別したければ分けなければなりません。
特に規定がなければ、全職員に対し適用されてしまいます。

配置転換・転勤・出向等の人事命令権

会社の有効な人事命令権として明確に主張しておかないと、場合によっては無効となることもあります。労働契約書にて記載されていない場合、就業規則に記載することで包括的同意を得たこととなります。

遅刻・早退・欠勤時の賃金控除の計算方法の明確性

職員によって計算方法が違っていては当然トラブルのもととなります。本来働くべき時に労働の提供をしていないのですから、賃金は発生しません。しかし月給者に対しては明確にしておく必要があります。
当まで控除するのか、減額する日額や労働時間を統一しておく必要があります。
また、賃金締切日途中での入社や退職した従業員の賃金計算方法にも同様のことが言えます。

長期休業者への対応の統一性・妥当性

長期休業者に対する、その間の賃金や、長期休業者の理由や勤続年数等にて、会社としていつまで許容するかについて、人によって対応が違っていては当然トラブルとなります。
会社の実状に応じて決定すべきであり、その運用方法も考慮して作成すべきです。

無断での長期欠勤者への対応

長期無断欠勤者の場合、当然、退職届はなく、退職の意思表示もないわけですから、記載がなければ労働契約の解除の処置が難しくなる場合もあります。
解雇した後、復職したいと言ってきたらどうしますか?

二重就業や競合他社への転職者への対応

二重就業によって、自社時間外に他社にて働かれては自社の労働に影響を及ぼす可能性があるため、また、競合他社へ転職されることによって営業上の利益を守るために必要となります。

安全衛生規定の詳細な検討

会社には安全配慮義務があるため、万一事故が発生した場合、民法の債務不履行による損害賠償責任が問われる場合がありますので、自社において実際に発生し得る事故への対策を記載しておく必要があります。

など。

 

パートタイマー就業規則、嘱託従業員就業規則など

今までひとつの就業規則しかなく、新たにパートタイマーや嘱託職員等の就業規則を作成した場合は、就業規則の変更となるため、改めて労働基準監督署へ届け出る必要があります。

また、現状、パートタイマー等の就業規則がない場合は、正規職員用の就業規則が100%適用されます。

  • ボーナス、退職金、昇給といった賃金関係
  • 定年、退職、解雇といった辞めるときの手続きや条件
  • 慶弔休暇、休職といった休むときの手続きや条件
    など正社員だけでなく、パートタイマー、嘱託職員、アルバイトなどすべての職員に一律に適用されます。ご注意下さい。

<パートタイマー等適用対象者を分ける際の作成・変更留意事項>

  1. 適用労働者の定義を明確にする
  2. 雇用形態、雇用期間、契約更新の方法などを明確にする
  3. 各人の勤務時間
  4. 基本給、各種手当、昇給、ボーナス、退職金など賃金に関する事項を明確にする
  5. 退職、解雇の手続きや条件について
  6. 年次有給休暇の付与日数の明示
  7. 安全衛生、服務規定、懲戒規定の検討
  8. 社会保険適用について

など

 

運用できる就業規則のために必要なもの

就業規則の見直しや新規作成をするきっかけには以下のような事が考えられます。
・助成金等の手続きの準備のため
・是正勧告への対応のため
・会社を防衛するための専門化によるチェックがあった
・労使トラブルが発生したため今後の予防が必要になった
など。

就業規則は、労務管理の要であり、会社の憲法的なものと言われているため、会社全体の労務管理体制と就業規則が密接に関連しあい、矛盾のないような整備が必要となります。

会社全体の労務管理体制として、何が必要になるのでしょうか?

  • 採用通知書  不採用通知書  本採用通知書
  • 身元保証書   人事異動承諾書、誓約書
  • 被扶養者(変更)届
  • 通勤経路に関する(変更)届
  • 労働契約書、労働条件通知書
  • 退職届  退職辞令  解雇予告通知書
  • 退職証明書
  • 1年単位の変形労働時間制の労使協定書および協定届(年間カレンダー)1
  • 時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)
  • 事業場外労働労使協定書および労使協定届
  • 休憩に関する協定書  休日変更指示書  勤務記録簿(月別)
  • 時間外労働・休日労働届
  • 遅刻・早退・欠勤届
  • 産休届
  • 年次有給休暇管理簿
  • 特別休暇申請書
  • 母性保護のための休暇等の届
  • 給与振込依頼(変更)届  給与振込停止届   賃金支払いに関する労使協定
  • 始末書〔降格、出勤停止、減給、譴責〕
  • 制裁通知書
  • 育児休業等に関する労使協定書
  • 育児休業申出書
  • 育児休業取扱通知書
  • 育児休業・育児のための時間外労働制限・深夜業制限・育児短時間勤務
  • 対象児出生届育児休業撤回届
  • 育児休業期間変更申出書
  • 育児休業期間変更承諾・却下通知書
  • 育児のための深夜業制限請求書
  • 育児短時間勤務申出書
  • 育児のための時間外労働制限請求書
  • 介護休業等に関する労使協定書
  • 介護休業申出書
  • 介護休業取扱通知書
  • 介護休業撤回届
  • 介護休業期間変更申出書
  • 介護休業期間変更承諾・却下通知書
  • 介護のための深夜業制限請求書
  • 介護短時間勤務申出書
  • 介護のための時間外労働制限請求書
  • 給与振込依頼(変更)届
  • 給与振込停止届
  • 従業員自家用車使用許可申請書
  • 出張届(長距離用)
  • 社用車使用許可申請書
  • 解雇予告除外認定申請書(労基署への届出書)

などなど会社によって様々ですが、数え上げれば結構ありますね。

これらの書式や社内規定を体系図にすると下記のとおりとなります。

就業規則 ⇒ 社内規定 ⇒ 各書式
とリンクすることで、効率的かつ公正な労務管理が可能となります。

 

就業規則の作成手順

素案の作成
就業規則の作成や変更の手順としては、下記のようになります。

  1. パートタイマー就業規則や嘱託従業員就業規則など、就業形態によって分ける必要があるかどうか
  2. 労働時間や賃金など、労働条件や就業状態を細かく洗い出す
  3. 絶対的記載事項、相対的記載事項について洗い出す
  4. 法令に違反していないかチェックする
  5. 条文化する
  6. 従業員代表者の意見を聞いて、意見書に記載および署名
  7. 就業規則作成届(就業規則変更届)を労働基準監督署へ届け出る
  8. 就業規則を従業員へ周知する
  9. 事業場の見安い場所へ掲示、就業規則の写しを交付、誰でも見れるパソコンへの掲示

など

 

就業規則の作成、見直しが必要となるとき

経営理念を浸透させたいとき

採用の手続きを就業規則に定めております。どのような人材を採用したいのかを、就業規則に記載することも可能です。

 

是正勧告を受けたとき、予防をお考えのとき

労働基準監督署より、就業規則、労使協定、健康診断で調査を受ける機会が増えております。その際、就業規則の不備が指摘される可能性が非常に高いです。

また、就業規則があっても、実態と食い違っていたりした場合や最新の法律を反映されていなければ指摘されることもあります。

 

助成金受給をお考えのとき

助成金を受給しようとする場合、条件に適合した就業規則の変更や提出が必要になるものが多いです。
助成金については、助成金手続き代行をご覧下さい。

 

人事評価制度・賃金制度の変更をお考えのとき

年功序列型から仕事遂行能力を重視した人事評価制度や賃金制度への見直しが増えております。

その際、ほとんどの場合、労働勤務体制(勤務時間や変形労働時間制などの導入など)、各種手当の統廃合、手当支給条件や手当額などをおこなうこととなります。

詳細は、人事制度の構築を参照下さい。

 

法律改正があったとき

育児・介護休業法、高年齢者雇用安定法など、労務管理、社会・労働保険に関する法律は毎年のように頻繁に改正されております。
それらの改正に対応するため、1~2年に一度は見直しが必要です。

 

新たに法人を設立や事業所を開設するとき

人を雇って法人を設立する際、統一した雇用条件を設定し、手間のかかる労務管理をすっきりするため、就業規則の定めることによって、スムーズに管理することができます。

 

労働トラブルが発生したときまたは予防をお考えのとき

近年、個別労働トラブルが急増しており、個別労働紛争相談件数は100万件を超えております。

こうした労働トラブルは、就業規則の未整備、就業規則が実態と合ってない、就業規則の記載内容が企業リスクに対応できていない、ことが主原因のひとつです。

 

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