【介護・障害福祉】給与計算でミスが起きやすいポイントとは?|処遇改善手当・残業・控除の注意点|社会保険労務士法人エンジー
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公開日 2026/10/16
社会保険労務士法人エンジーでは、介護サービス事業所・施設や障害福祉サービス事業所を運営する事業者様に向けて、実務に役立つ情報を発信しています。今回は、給与計算について取り上げていこうと思います。
介護・障害福祉サービス業界の給与計算は、処遇改善加算への対応に加え、夜勤や変形労働時間制などを踏まえた計算が必要となるため、複雑になりやすいです。本記事では、給与確定前に確認すべき勤怠、支給額、控除のチェックポイントを解説します。
介護・障害福祉サービス業の給与計算は、労働基準法と各種福祉制度の要件を同時に満たす必要があるため難易度が高く、一般企業とは異なる勤務体系や手当が多いため、担当者の負担が大きくなる傾向があります。
給与計算が複雑になる主な要因は以下の通りです。
労働時間の適正な管理や賃金台帳などの給与関係書類の整備は、給与計算の正確性を確保し、運営指導等に備えるうえでも重要です。運営指導の際に事前に準備しておきたい書類については、以下の記事で解説しています。
※関連記事:運営指導で引っかかるとどうなる?介護事業所が整理しておくべき書類一覧と対策を解説【令和8年版】
給与計算の第一歩は、タイムカードやシフト表から正確な労働時間を集計することです。ここでは、勤怠に関する重要な確認事項を整理します。
以下の項目にチェックがつくか確認してください。
□ 夜勤の休憩時間が、労働基準法上の「休憩」として実態を伴っているか
□ シフト変更があった際、時間外労働の判定を正しく行っているか
シフト表に「休憩」と記載されていても、利用者対応のために待機するなど、業務から離れることが保障されていない時間は、労働時間に該当します。
たとえば、ナースコールがあればすぐに対応するよう求められ、業務から離れられない状態で待機している時間は、「手待ち時間」として労働時間に含める必要があります。こうした時間を休憩として差し引かないよう、実態に応じて集計しましょう。[1]

変形労働時間制を採用している場合、急なシフト変更があった際に、時間外労働の集計ミスが起きやすくなります。
具体的な例を挙げると、1か月単位の変形労働時間制では、あらかじめシフトで定めた勤務時間を超えたからといって、そのすべてが法定時間外労働になるわけではありません。
たとえば、あらかじめ10時間勤務と定めた日に11時間働いた場合は、10時間を超えた1時間が、その日の法定時間外労働となります。一方、6時間勤務と定めた日に9時間働いた場合は、所定の6時間を超えた3時間すべてではなく、8時間を超えた1時間が、その日の法定時間外労働となります。[2]
ただし、1日ごとの確認だけでは、時間外労働の判定は完了しません。さらに、1週間の労働時間と、変形期間全体の労働時間が、それぞれの基準を超えていないか確認する必要があります。その際、すでに時間外労働として数えた時間は、重複して計上しません。
また、あらかじめ定めた労働日や勤務時間を任意に変更することはできません。スタッフの欠勤等で急遽シフトを交代した場合も、変更後のシフトだけを基準にせず、あらかじめ定めたシフトと実際の労働時間を確認し、1日ごと・1週間ごと・変形期間全体の3段階で判定しましょう。月間の総労働時間だけで残業代を計算すると、未払いが生じるおそれがあります。
勤怠が確定したら、基本給や各種手当、割増賃金を計算します。特に処遇改善手当の扱いはミスが起きやすいため注意が必要です。
以下の項目にチェックがつくか確認してください。
□ 処遇改善手当の支給が賃金規程等のルールに沿っているか
□ 介護と障害福祉サービスで、適用される加算要件を分けて管理しているか
□ 各種手当を割増賃金の基礎に正しく含めているか
処遇改善手当は、事業所が作成した処遇改善計画書および就業規則(賃金規程)に沿って、支給対象者や金額を確認する必要があります。
処遇改善加算として事業所が受け取る金額を、そのまま職員に均等に配分する必要はありません。制度上認められる範囲で、その他の職員への配分も含め、事業所が定めた支給方針に基づいて計算します。ただし、職務の内容や勤務の実態に見合わない、著しく偏った配分は認められません。[3][4]
また、配分の自由度があるからといって、毎月の給与計算時に支給対象者や金額を自由に変更できるわけではありません。賃金規程に反する独自の判断で手当を減額したり、規程や計画との整合を確認せずに支給対象者を変更したりしていないか、給与確定前に確認しましょう。
手当の配分ルールを見直す際の考え方は、以下の記事でも詳しく解説しています。
※関連記事:【介護・障害福祉】処遇改善加算の正しい配分ルールとは?賃金改善の考え方も解説
介護保険と障害福祉サービスの両方を運営している場合、それぞれの制度や対象年度の要件を個別に確認して給与計算に反映させる必要があります。
処遇改善加算のルールは、介護保険と障害福祉サービスでベースとなる考え方は似ていますが、加算率や適用されるサービス種別、対象年度ごとの通知内容が異なる場合があります。[3][4]
これらを混同して一律に計算してしまうと、一方の制度において要件違反となる可能性があります。加算の要件を満たさず、不適切な配分や給与計算を行っていた場合、加算の返還を求められるリスクがあります。
※関連記事:【令和8年版】介護・障害福祉の処遇改善加算の返還リスクを回避!よくある7つのミスと確認ポイント
基本給以外の手当を残業代などの割増賃金の算定基礎から除外できるかどうかは、労働基準法で厳格に定められています。
処遇改善手当、資格手当、役職手当などは、原則として割増賃金の算定基礎に含めて計算しなければなりません。ただし、処遇改善の原資を賞与などで支給する場合は、支給実態によって取扱いが異なります。算定基礎から除外できるかどうかは、手当の名称ではなく、支給条件や支給周期などに基づいて判断します。[5]
算定基礎に含めるべき手当を除外して1時間あたりの賃金を算出すると、割増賃金の単価が低くなり、未払い残業代が発生するおそれがあります。
手当を割増賃金の算定基礎から除外できるかは、名称ではなく支給条件で判断します。家族手当や通勤手当も一律に除外できるわけではありません。未払いを防ぐため、給与計算ソフトの設定も確認しましょう。
総支給額が確定した後は、社会保険料や税金などを正しく控除します。控除のタイミングや金額のミスも従業員からの信頼を損なう原因になります。
以下の項目にチェックがつくか確認してください。
□ 社会保険料の随時改定などに伴う控除額の変更が漏れていないか
□ 欠勤控除の計算が賃金規程と合致しているか
□ 法定外の天引きを行う際、労使協定が締結されているか
固定的賃金の変動があった場合、条件に該当すれば社会保険料の随時改定が必要となり、控除額を変更するタイミングに注意が必要です。
基本給の昇給や、毎月定額で支給される処遇改善手当の額が変更された場合は、変更後の賃金を初めて支払った月から3か月間の報酬を確認します。その平均額から算出した標準報酬月額が従前と原則2等級以上異なり、各月の支払基礎日数などの要件も満たす場合は、随時改定(月額変更届の提出)を行います。標準報酬月額は4か月目から改定されるため、給与からの控除額を変更する月も確認しましょう。[6]
翌月徴収の場合、たとえば7月分の改定後の保険料は、8月支給の給与から控除します。改定月と給与からの控除月を区別して管理し、控除額の変更漏れを防ぎましょう。[8]
欠勤や遅刻による賃金控除を行う場合、その計算方法が就業規則や賃金規程に明記されており、その通りに計算されている必要があります。
ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、働いていない時間の賃金を控除すること自体は可能ですが、控除の対象とする賃金や、1時間あたりの控除単価の計算方法が規程と異なっていると、過大に控除してしまうおそれがあります。給与計算を行う前に、自社の規程を再確認することが重要です。
親睦会費や食事代などを給与から天引きする場合、労働基準法に基づく労使協定が締結されていなければなりません。
賃金は原則として全額を支払う必要があり、法令で定められた税金や社会保険料以外を控除する場合は「賃金控除に関する労使協定」が必要です。[7]
なお、労使協定があれば、どのような費用でも控除できるわけではありません。控除項目や金額を明確にし、従業員にその費用を負担してもらう根拠も確認しましょう。
介護・障害福祉サービス事業所における給与計算は、制度の複雑さからミスが発生しやすい業務です。処遇改善手当の配分、変形労働時間制の残業代計算、社会保険料の控除など、確認すべき項目は多岐にわたります。
チェックリストを通じて自社の給与計算に不安を感じた場合や、最新の法改正に対応できているか判断に迷う場合は、労務トラブルや行政指導のリスクを避けるために専門家へ相談するのも手段の一つとなります。
もし愛知県・名古屋市エリアで、賃金体系の変更や給与計算の委託、就業規則の見直しをご検討の事業所様は、介護・障害福祉サービス業界に詳しい社会保険労務士法人エンジーへお気軽にご相談ください。
(参考資料・出典)
この記事は、令和8年10月時点で公表されている以下の資料等をもとに作成しています。
[1] 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省
[2] 1か月単位の変形労働時間制|厚生労働省
[3] 介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)|厚生労働省
関連資料・申請様式:介護職員の処遇改善|厚生労働省
[4] 福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)|厚生労働省・こども家庭庁
[5] 割増賃金の基礎となる賃金とは?|厚生労働省
[6] 随時改定(月額変更届)|日本年金機構
[7] 賃金控除に関する労使協定を締結していますか?|厚生労働省・神奈川労働局 相模原労働基準監督署
[8] 厚生年金保険料等の納付|日本年金機構
[9] 介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)|厚生労働省
[10] 福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)|厚生労働省・こども家庭庁
[11] 確かめよう労働条件:割増賃金不払い|厚生労働省
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