【2026年版】処遇改善加算 配分ルールの算定要件とは?変更点やポイントを解説|介護・障害福祉|社会保険労務士法人エンジー
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公開日 2026/07/17
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営する事業者様に向けて、実務に役立つ情報を発信しています。今回は、2026年版の介護・障害福祉サービスにおける「処遇改善加算の配分ルール」について解説していきます。
※本記事は介護保険分野の用語・区分をベースに解説しています。障害福祉サービス分野でも賃金改善や配分の基本的な考え方は共通しますが、制度の詳細は異なるため、必要に応じて最新資料を確認のうえ読み替えてご参照ください。※[11]
介護職員の処遇改善を目的とした処遇改善加算は、2024年(令和6年)6月に、従来の3つの加算が一本化され、「介護職員等処遇改善加算」へ移行しました。2026年度は、令和8年度介護報酬改定により、6月以降の加算区分・加算率・対象サービス等が見直されます。あわせて、一定の要件については令和8年度中の整備を誓約する取扱いや、令和8年度特例要件も設けられています。※[1][2][4]
本記事では、2026年版の処遇改善加算における配分ルール、新区分への移行スケジュール、そして返還リスクを防ぐための実務上の労務管理ポイントを専門家の視点から分かりやすく整理します。
2026年度は、6月以降の加算区分・加算率・対象サービス等が見直される重要な年です。まずは制度の全体像と年間スケジュールを確認しましょう。
2026年6月以降は、4月・5月分と6月以降分で加算率表や対象サービスの整理が切り替わり、改定後の加算区分・加算率が適用されます。既存の加算Ⅰ・Ⅱは「Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ」に再編され、要件整備の誓約や令和8年度特例要件もあるため、通知・Q&Aを踏まえて自社の算定区分を早めに整理することが重要です。※[1][2][4]
新制度の算定をスムーズに開始するためには、4月中旬の計画書提出から6月の算定開始までのタイムラインを正確に把握しておく必要があります。
2026年度の処遇改善計画書の提出期限は、4月・5月から算定する主要ケースでは4月15日、6月から算定するケースや新規対象サービスのみを運営する事業者では6月15日と案内されています。もっとも、提出方法や対象区分は指定権者によって異なるため、必ず最新案内を確認してください。4・5月分と6月以降分では取扱いが分かれるため、余裕を持った準備が必要です。※[7][8][9]
一本化後の最大の特徴は、職種間の柔軟な配分が可能になった点です。2026年からは、対象範囲が拡大されるなかで、どのように配分バランスを維持するかが事業所の大きな課題となります。
旧・介護職員等特定処遇改善加算では、職種間の平均賃金改善額について、いわゆる「2:1:0.5」の配分ルールが設けられていました。※[10]
一方、現在の介護職員等処遇改善加算では、その配分ルールはそのまま引き継がれておらず、介護職員への配分を基本としつつ、事業所内で柔軟な配分が認められています。※[2][3]
処遇改善加算による賃金改善は、介護職員への配分を基本としつつ、「介護職員その他の職員」に対して柔軟に配分することができます。ただし、一部の職員や一部の事業所のみに著しく偏った配分は適当ではないため、職務内容や勤務実態に見合った設計が必要です。※[2][3]
配分方法を決定するにあたっては、処遇改善加算が求める「賃金改善」の根本的な仕組みを理解しておく必要があります。
介護サービス事業者等は、処遇改善加算の算定額に相当する賃金改善を実施する必要があります。賃金改善の対象には、基本給・手当・賞与のほか、当該改善に伴って増加する法定福利費等の事業主負担分を含めることができます。また、賃金水準を引き下げることは、特別な事情に係る届出を行う場合を除き、原則として認められません。もっとも、月額賃金改善要件を満たすために、基本給等以外の手当や一時金の一部を減額し、その分を基本給や決まって毎月支払われる手当に付け替えることは、通知上認められています。経営悪化等により賃金水準を引き下げる場合には、別途届出が必要です。※[2][3]
なお、処遇改善加算の対象者や、賃金改善を実施する際の基本的な仕組みについては、以下の記事で分かりやすく解説しています。あわせてご参照ください。
※関連記事:【介護・障害福祉】処遇改善加算の正しい配分ルールとは?賃金改善の考え方も解説
他職種への配分が認められた一方で、事業所内の配分バランスが崩れると不満や離職を招く原因になりかねません。介護職員以外の職員への配分も可能ですが、法人本部の人事・事業部等で働く職員(いわゆる本部職員)については、当該介護サービス事業所等における業務を行っていると判断できる場合に対象となり得るとされています。※[3]
実務上は、資格の有無や経験年数、役割に応じた納得感のあるルールを設計することが重要です。
2026年6月以降は、加算区分がさらに細分化され、それぞれの要件や適用条件がより具体的に整理されます。各区分の違いと、賃金設計への影響を把握しましょう。
新しい区分設計では、賃金改善要件、キャリアパス要件、職場環境等要件、さらに区分によっては令和8年度特例要件の充足状況に応じて、算定できる加算区分と加算率が決まります。※[2][4]
2026年6月以降、既存の加算Ⅰ・Ⅱは「Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ」に再編されます。Ⅰイ・Ⅱイは通知で定める各要件に基づく区分であり、Ⅰロ・Ⅱロは、それぞれⅠイ・Ⅱイの要件に加えて、令和8年度特例要件を満たす区分として設けられています。なお、加算率はサービス種別ごとに異なります。※[1][2][4]
| 新加算区分 | 主な位置づけ | 主な要件の考え方 | 加算率 |
|---|---|---|---|
| 加算Ⅰイ | 2026年6月以降の上位区分の一つ | 通知で定める賃金改善要件、キャリアパス要件、職場環境等要件等を満たす区分 | サービス種別ごとに設定 |
| 加算Ⅰロ | Ⅰイに対応する上乗せ区分 | Ⅰイの要件に加えて、令和8年度特例要件を満たす区分 | サービス種別ごとに設定 |
| 加算Ⅱイ | 2026年6月以降の区分の一つ | 通知で定める賃金改善要件、キャリアパス要件、職場環境等要件等のうち、Ⅱイに該当する要件を満たす区分 | サービス種別ごとに設定 |
| 加算Ⅱロ | Ⅱイに対応する上乗せ区分 | Ⅱイの要件に加えて、令和8年度特例要件を満たす区分 | サービス種別ごとに設定 |
※実際の加算率は、訪問介護、通所介護、介護老人福祉施設などのサービス種別ごとに異なります。また、令和8年度特例要件の内容は、サービス類型によって確認すべき項目が異なるため、最新の厚生労働省通知を必ず確認してください。※[1][2][4]
2026年度は、「職場環境等要件」として生産性向上に関する取組が求められるほか、Ⅰロ・Ⅱロなどの区分に関係する令和8年度特例要件として、ケアプランデータ連携システムへの加入、生産性向上推進体制加算Ⅰ・Ⅱの取得、社会福祉連携推進法人への所属などが示されています。どの要件が必要かは、算定する区分とサービス種別によって確認が必要です。※[2][4]
処遇改善加算の実務において注意すべきなのが、加算の返還や不正請求と判断されるリスクが生じるおそれがある点です。2026年時点の最新実務に即し、リスクを最小限に抑える賃金設計の手順を解説します。※[2][3][8]
加算金を基本給にするか、手当にするか、それとも賞与(一時金)で支給するかというバランスの設計は極めて重要です。
新制度では、処遇改善加算Ⅳ相当額の2分の1以上を、基本給または決まって毎月支払われる手当の改善に充てる必要があります。一方で、通知上、賃金改善は基本給・手当・賞与の組合せで行うことが認められており、ベースアップのみによる対応が難しい場合は、一時金を組み合わせた設計も可能です。実務上は、要件を満たす範囲で月額賃金に配分し、残額を一時金で調整する方法も検討されます。※[2][3]
独自の支給方法や配分ルールを定める場合は、就業規則・賃金規程・内規等の明確な根拠規程として整備し、対象職員に周知しておくことが重要です。
加算の支給対象者、計算方法、支払時期などを定めた「処遇改善手当支給規程」を作成し、必要に応じて既存の就業規則や賃金規程に反映させます。労働基準法に基づき、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・変更に該当する場合、労働者代表等の意見聴取を行ったうえで、所轄労働基準監督署長への届出が必要です。この規程と計画書、実績報告書の整合性が取れていない場合、後日の確認対応や説明を求められる可能性があります。※[2][5][6]
派遣会社から受け入れている派遣スタッフや、事業所を統括する本部の管理職に対して配分を行う場合は、特に証跡書類の管理が必要です。
派遣労働者についても、一定の場合には処遇改善加算による賃金改善の対象に含めることができます。実務上は、派遣料金等への反映を通じて賃金改善につなげる形になるため、派遣契約の見直し内容や証跡書類の管理が重要です。※[3]
実績報告の段階で支払額が加算受給額を下回らないよう、毎月の加算収入見込みと支給実績を管理表で可視化する「月次モニタリング」を行っておくことが、返還リスクの予防策として実務上有効です。期末に一時金だけで調整すると資金繰りや公平感に影響しやすいため、毎月の乖離を確認しながら早めに調整できる体制を整えておきましょう。
実務上も、賃金改善額と加算収入の突合が合わず返還対応の要否を確認するケースがあるため、月次管理が有効です。
処遇改善加算は国の制度ですが、申請窓口や運用の一部は指定権者ごとに異なります。ここでは愛知県内で注意したい地域差を整理します。
愛知県内に複数の事業所を持つ法人であっても、指定権者が異なれば提出先や細かな添付書類のルールが変わる点に注意が必要です。
たとえば、名古屋市、一宮市などでは各市の案内ページが設けられており、愛知県指定分とは提出先や案内が分かれています。愛知県指定分については、県の案内に従って提出先や必要書類を確認する必要があります。さらに、提出期限や提出方法についても、名古屋市では消印有効、愛知県では必着、一宮市では電子申請可といった違いがあるため、必ず各指定権者の最新案内を確認してください。※[7][8][9]
「他の事業所ではどのような運用を行っているのか」「実地指導で何が指摘されるのか」といった点について、よくある相談事例を参考に備えましょう。
よくあるトラブルとして、「加算額を他職種へ広範に配分しすぎた結果、肝心の介護職員から『以前より手取りが減った・増え方が少ない』と不満が出て離職につながった」という人事面での失敗や、「他事業所から異動してきた職員のカウント方法を誤り、計画書と実績報告書の整合性が取れなくなった」といった事務手続き上の不整合が挙げられます。
計画書や実績報告書の数値は、雇用契約書、賃金台帳、勤務記録と整合していることが重要です。根拠資料との整合性が弱いと、返還リスクや確認対応の負担につながるため、事前の検証をおすすめします。
2026年(令和8年度)の処遇改善加算は、新たな区分や要件への対応が必要となり、従来よりも判断が難しい場面が増えています。実際には、どの区分を選ぶか、どのように賃金改善を配分するかは、事業所のサービス内容や職員構成、現在の給与体系、経営状況によって異なるため、一般的な説明だけでなく、自社の状況に合わせて検討することが重要です。
また、配分設計に加え、就業規則・賃金規程への反映、証跡書類の整理、月次での確認体制まで整えておくことで、制度をより安定的に運用しやすくなります。必要に応じて、現状分析、配分設計のシミュレーション、規程整備、月次モニタリング、派遣・委託職員を含む配分整理などについて、専門的な支援を活用することも有効です。
社会保険労務士法人エンジーでは、無料オンライン診断を通じた現状把握を出発点に、配分設計のシミュレーション、規程整備、月次モニタリングの運用支援まで一貫して対応しています。派遣スタッフや委託職員、本部職員への配分についても、按分計算や証跡管理を含めてご相談いただけます。処遇改善加算の配分や賃金改善について不安がある場合は、お気軽にご相談ください。
(参考資料・出典)
この記事は、令和8年7月時点で公表されている以下の資料等をもとに作成しています。
[1] 令和8年度介護報酬改定について|厚生労働省
[2] 介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)|厚生労働省
[3] 介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)|厚生労働省
[4] 介護職員等処遇改善加算の拡充①〜③|厚生労働省
[5] 労働基準法|e-Gov法令検索
[6] モデル就業規則について|厚生労働省
[7] 令和8年度の介護職員等処遇改善加算の取得に係る処遇改善計画書の提出期限について|NAGOYAかいごネット
[8] 令和8年度介護職員等処遇改善加算の届出について(愛知県指定分)|愛知県
[9] 介護職員等処遇改善加算について[2026年度算定分]|一宮市
[10] 【旧制度参考】2019年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(介護職員等特定処遇改善加算)|厚生労働省
[11] 令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について|厚生労働省
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