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2019年10月に行われた「財政制度分科会」の内容を確認しておきましょう

著者:enjie_me-admin

2019年10月に行われた「財政制度分科会」の内容を確認しておきましょう

公開日 2019/11/01

最終更新日 2020/01/21

財務省としての意見を発信する「財政制度分科会」が2019年度下期の初月に開催

2021年度法改正に向けての論点整理を行う“介護保険部会”が進みつつある2019年10月。

そんな折、財政的観点から次回法改正に釘を刺すかの如く“財政制度分科会”が10月9日(水)に開催されました。“国の金庫番”とも呼べる財務省が介護業界に対し、どのような改革案を突き付けているのか?今回は財政制度分科会の資料から論点を採り上げ、お届けしてまいります。

財政制度分科会で採り上げられた「論点」「改革の方向性(案)」とは

では、早速、中身に移ってまいりましょう。

財政性分科会の資料においては、「論点」→「(論点を踏まえた)改革の方向性(案)」という構成で介護分野では8点のポイントが公表されています。

約半年前にも同会が開催されており、前回と被る内容も多く含まれていますが、再確認の意味も含め、是非、一つ一つに対して目を通してみていただければ幸いです。

では早速、一番目の論点に入ってまいります。

【論点1:ケアマネジメントの利用者負担の導入

  • 介護保険サービスの利用にあたっては、一定の利用者負担を求めているが、居宅介護支援(ケアマネジメント)については、介護保険制度の導入にあたり、要介護者等が積極的にサービスを利用できるようにする観点から、制度創設以来、利用者負担はない。
  • 介護保険制度創設から約20年が経ち制度が浸透していることを踏まえ、また、利用者自身がケアプランに関心を持つ仕組みとした方がサービスの質の向上につながると考えられることから、ケアマネジメントにも利用者負担を導入すべきではないか。

【改革の方向性(案)】

居宅介護支援におけるケアマネジメントに利用者負担を導入すべき。

また、ケアマネジメントの質を評価する手法の確立や報酬への反映と併せ、利用者・ケアマネジャー・保険者が一体となって質の高いケアマネジメントを実現する仕組みとする必要。

今まで“問題提起→流案”を繰り返してきた本テーマですが、次回法改正時にはいよいよ決着がつく可能性もあろうかと思います。

「1割負担、2割負担といった方法ではなく、例えば月額500円など定額制でも良いのではないか」等という意見も出ており、今後も議論の流れを追いかけていく必要があるかもしれません。続いて、次の論点に移ります。

【論点2:軽度者へのサービスの地域支援事業への移行等

  • 要支援者に対する訪問介護、通所介護については、地域の実情に応じた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を行う観点から、地域支援事業へ移行したところ(2018年3月末に移行完了)。
  • 要介護1・2への訪問介護・通所介護についても、生活援助型サービスをはじめとして、全国一律の基準ではなく地域の実情に合わせた 多様な人材・多様な資源を活用したサービス提供を可能にすることが効果的・効率的ではないか。

【改革の方向性(案)】

  • 要介護1・2への訪問介護・通所介護についても、生活援助型サービスをはじめとして、全国一律の基準ではなく地域の実情に合わせた多様な人材・多様な資源を活用したサービス提供を可能にすべき。

 

論点1と同様、幾度も問題提起されてきた同テーマですが、前回の提起内容と比較すると、内容面においての変化を見て取ることが出来ます。

2019年4月23日に開催された財政制度分科会においては、本テーマにおける「改革の方向性(案)」について、下記のような文言が記載されていました。

「要支援者向けサービスの地域支援事業への定着・多様化にも引き続き取り組むとともに、軽度者のうち残された要介護1・2の者の生活援助サービス等についても、第8期介護保険事業計画期間中の更なる地域支援事業への移行や、生活援助サービスを対象とした支給限度額の設定又は利用者負担割合の引上げなどについて、具体的に検討していく必要。

4月23日(≒約半年前)には「生活援助サービス等についても」という表記だったものが、今回は「生活援助型サービスをはじめとして」に変更となっていることを考えると、「先ずは生活援助型サービスから改革を進めていこう」と“段階的革新”の方針を財務省が新たに打ち出した、と理解することも出来なくはないかもしれません(あくまで筆者の勝手解釈ですが)。

また、その改革アイデアについても、従前は「第8期介護保険事業計画期間中の更なる地域支援事業への移行や、生活援助サービスを対象とした支給限度額の設定又は利用者負担割合の引上げなど」と幾つかの案が配列的に記されていましたが、今回は「全国一律の基準ではなく地域の実情に合わせた多様な人材・多様な資源を活用したサービス提供を可能にすべき」と一点に絞られていることから、“総合事業への移行”を確信の本丸に据えた、と理解することが出来るでしょう(繰り返しになりますが、あくまで筆者の勝手解釈です)。

続いて、次の論点に移ります。

【論点3:地域支援事業の有効活用

  • 要支援1・2向けの訪問・通所介護の地域支援事業への移行については、2018年3月末に完了したところであるが、多様なサービス提供が徐々に普及しているものの、依然として従前相当のサービス提供の占める割合が多い。
  • 地域支援事業の趣旨を踏まえ、住民主体による支援など地域の実情に合った効果的・効率的なサービス提供を推進していく必要。

【改革の方向性(案)】

  • 地域支援事業を有効活用し、住民主体による支援など、従来より効果的・効率的なサービス提供をしている自治体の例を横展開していく必要。

 

「従前相当のサービスが中心では社会保障費の合理的圧縮が実現し難い中、(従前相当より単価が低く済む)基準緩和型サービスの拡大に一層拍車をかけていくべき」という財務省の意向を見て取ることが出来ます。事業者としては“基準緩和型でも持続できるサービスモデル”を早めに検討する必要があるでしょう。

では、次の論点に移ります(次の論点については、4・5をまとめてコメントを加えさせていただきます)。

【論点4:インセンティブ交付金のメリハリ付けの強化

  • 要介護認定率や一人当たり介護給付費については、性・年齢階級(5歳刻み)・地域区分を調整してもなお大きな地域差が存在。その背景には介護供給体制など様々な要因が考えられるが、例えば、軽度者の認定率に地域差が大きいことも一因。
  • インセンティブ交付金は、高齢者の自立支援・重度化防止等を通じて、介護費の抑制や地域差縮減に向けた保険者の取組を推進できる重要な政策手段であるが、実際には取組の成果に応じて交付されているとは言えず、適切な配点やアウトカム指標の設定がなお不十分である。

【改革の方向性(案)】

  • インセンティブ交付金について、都道府県・市町村が最低限取り組むべき点を中心に評価しているが、アウトカム指標への配点の重点化や減点のための指標(ペナルティ)の追加など、実効性のある取組みを評価するメリハリをつけた配分として、財政的インセンティブを強化すべき。

【論点5:保険者機能強化のための調整交付金等の活用

  • 介護の地域差を縮減する観点から、調整交付金の活用も含めた保険者へのインセンティブの付与の在り方を検討し、保険者による介護費の適正化に向けた取組をより一層促進する必要。
  • 介護費用が経済の伸びを超えて大幅に増加すると見込まれる中、若年者の保険料負担の伸びの抑制は重要な課題。2号被保険者の保険料負担分について、保険者機能の発揮を促す仕組みとし、給付と負担の牽制効果を高めるべき。

【改革の方向性(案)】

  • 介護費の適正化などに向けた財政的なインセンティブとして、全自治体の取組みのより一層の底上げを図るため、今年度中に結論を得て、第8期から調整交付金のインセンティブとしての活用を図るべき。
  • 2号被保険者の保険料負担についても、インセンティブ交付金の評価の仕組みを参考にしつつ、介護予防・重症化防止の取組によって認定率や給付の抑制等に成果をあげた保険者(市町村)に傾斜配分する仕組みを検討すべき。

 

端的に言えば、「“実行しました”というプロセスで見るのではなく、“成果を出しました”という結果(=アウトカム)で判断する指標を増やす必要がある」ということ、そして、「頑張って成果が創出出来ればその分だけプラスに予算を付ける一方、頑張らなくても(or頑張れなくても)現状と比較して財政的にマイナスにはなることはない」という現在の仕組みを見直し、「頑張らなければ(or頑張れなければ)通常配分されていた予算総額がマイナスになる(=ディスインセンティブ)」ような仕組みを導入することによって、自治体の変革スピードを促進させるべき、ということかと思われます。恐らく市長会は猛反発すると思われますが、重要な論点として今後の動静を見守る必要があるでしょう。

では、次の論点に移ります。

【論点6:利用者負担の更なる見直し

  • 介護保険の財源構造は、原則1割の利用者負担を求めた上で、残りの給付費を公費と保険料で半分ずつ負担する構造であり、保険料は65歳以上の者(1号被保険者)と40~64歳の者(2号被保険者)により負担されている。
  • 今後、介護費用は経済の伸びを超えて大幅に増加することが見込まれる中で、若年者の保険料負担の伸びの抑制や、高齢者間での利用者負担と保険料負担との均衡を図ることが必要。

【改革の方向性(案)】

  • 制度の持続可能性や給付と負担のバランスを確保し、将来的な保険料負担の伸びの抑制を図る観点から、介護保険サービスの 利用者負担を原則2割とすることや利用者負担2割に向けてその対象範囲の拡大を図るなど、段階的に引き上げていく必要。

 

財政的な観点から考えれば「直接的受益者である利用者の負担率上昇」という施策はごく自然な(といいますか、止むを得ない)事であるのようにも思いますが、本施策が実行された暁には利用控え等、現場の経営に少なからず影響を及ぼしてくるかもしれません。

こちらも今後の議論の動向を注視しておく必要があるでしょう。では、次の論点に移ります。

【論点7:多床室の室料負担の見直し】

  • 2005年制度改正において、施設サービスにおける食費や個室の居住費(室料+光熱水費)を介護保険給付の対象外とする制度見直しを実施(多床室については食費と光熱水費のみ給付対象外とし、また低所得者には補足給付を創設)。
  • 2015年度介護報酬改定において、特養老人ホームの多床室の室料負担を基本サービス費から除く見直しを行ったが、介護老人保健施設、介護療養病床、介護医療院については、室料相当分が介護保険給付の基本サービス費に含まれたままとなっている。

【改革の方向性(案)】

  • 在宅と施設の公平性を確保する等の観点から、次期介護報酬改定において、これらの施設の多床室の室料相当額についても基 本サービス費から除外する見直しを検討すべき。

公平性、という観点から考えれば、実行される可能性が高い、と考えて差し支えないかもしれません。

では、最後の論点に移ります。

【論点8:補足給付の要件見直し

  • 在宅サービス受給者との負担の均衡の観点から、介護施設等の利用者の居住費・食費は基本的には自己負担とされているが、低所得者に ついては、その居住費・食費について介護保険制度から補足給付が支給されている。
  • この補足給付については、福祉的性格を有するため、預貯金等の資産等を有する経済力のある高齢者の利用者負担を軽減することは本来の姿ではなく、2014年改正により、所得要件に加えて預貯金等の一部資産を勘案する資産要件が加えられたが、その要件は十分か。

【改革の方向性(案)】

  • 在宅サービス受給者と施設サービス受給者との負担の均衡や世代間の公平性を確保するため、現行の預貯金等の基準(1,000 万円)等の要件の更なる見直しが必要。

「年金額が低くても、預貯金が500万円程度があれば10年居住が可能(特養の平均入所期間は約4年間。約8割は5年未満で退所)」という財務省試算から考えると、「基準を1,000万→500万に引き下げるべき」

という論点が次回の法改正時に議論される可能性が高い、と考えることが出来るでしょう。

国策の“風”を読み取り、早め早めの準備を

以上、財政制度分科会内の資料「社会保障について」より、介護事業者に直接関係のある部分から論点を幾つか抜粋してお伝えさせていただきました。

本内容は国全体の方針ではなく、あくまで「財務省」という一省庁の意見である、ということはしっかり認識しておく必要はあろうかと思いますが、それでも10%への増税が実行され、「財政健全化」が待った無しとなっている我が国としては、財務省の挙げる声に一定の重みがあることも否めない事実だと思われます。

事業者としては上記内容を踏まえつつ、「もしこれらの施策が実行された場合にどう対応するか?」について事前に頭を働かせておくことが重要だと言えるでしょう。

私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。

※上記内容の参照先URLはこちら↓

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20191009.html

 

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