行政書士事務所エンジー
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「来年10月の増税実行のタイミングに合わせて、10年以上の介護福祉士の給与を月8万円程度引き上げる財源を準備する」そんな言葉が独り歩きして業界を大きく揺るがせた(or揺るがせている)、新たな処遇改善施策(以降、「新加算」と表記)。
従来の処遇改善加算とは異なる仕組みをつくり、運用することまでは決定していましたが、2018年12月12日に開催された「第166回社会保障審議会介護給付費分科会」において、その全体像・大枠がようやく見えてまいりました。
各社の人財確保・定着にも様々な影響を及ぼしかねない同施策、今回は内容の理解と共に、特に事業者として注視すべき点をポイントとして採り上げ、お届けしてまいります。
それでは、早速、中身に移ってまいりましょう。
先ずは、新加算の大枠のコンセプトについて確認してまいります。
今回の新加算は、「(1)経験・技能のある介護職員に重点化しつつ、介護職員の処遇改善を行う」という当初の趣旨を担保しつつ、「(2)その趣旨を損なわない程度において、その他の職種にも一定程度処遇改善を行う」という特徴を伴っています。
(1)を実現するためには「経験・技能のある介護職員を数多く雇用しているサービス・事業所」に多くの額が行き渡るように配分する必要がある訳ですが、その考え方を如何に仕組みの中に反映させることができるか?というのが、先ずは、論点の1点目。
その上で「その他の職種にも一定程度処遇改善を行う」にあたり、どのような基準を設けることで(1)の考え方を担保していくか?というのが論点の2点目にあたります。上記説明を図で表すとすると、下記になるでしょうか。
※第166回社会保障審議会介護給付費分科会資料より抜粋
上記を前提に、「論点1」「論点2」の内容を順に確認してまいりましょう。先ずは論点1のポイントをお伝えしていきたいと思います。論点1のポイントとしては大きく3点が挙げられます。
続いてはいよいよ各論を確認してまいります。
先ずは「経験・技能のある介護職員を数多く雇用している“サービス”に多くの額が行き渡るかどうか」については、次のような考え方が示されています。
介護職員確保に向けた処遇改善を一層進めるとともに、人材定着にもつながるよう、経験・技能のある介護職員が多いサービスを高く評価することとし、サービス種類毎の加算率は、それぞれの勤続10年以上の介護福祉士(※)の数に応じて設定することとしてはどうか。
※ 現在、介護福祉士の資格を有する者であって、同一法人・会社での勤続年数が10年以上の者
上記内容の通り、新加算も従来の加算と同様、各サービス毎の加算率が設定されることになる訳ですが(詳細の加算率は今年早期に発表予定)、例えば介護給付費分科会では、本議論における参考資料として「(A)全サービス毎の介護職員割合(看護師・療法士・栄養士・事務職等を含んだ全職員中)」「(B)全サービス毎の“勤続10年以上介護福祉士”割合(全介護職員中)」というデータが添付されています。
下記表の通り、(C)=(A)×(B)を行えば「経験・技能のある介護職員を数多く雇用しているサービス」が大枠で見えてきますので、(C)の値を参考に、加算率のウェイト付けが行われるかもしれない、と考えることも出来るでしょう(あくまで現時点における仮説に過ぎませんこと、ご理解下さい。ただ、この論拠に基づけば、例えば新加算の加算率は訪問介護(17.3%)>通所リハ(13.0%)>老健(12.5%)>特養(12.3%)の順に高くなるかもしれません)。
※厚生労働省資料をもとに当社作成
然しながら、多くの方がお気づきの通り、例えば訪問介護を例にとった場合、全ての訪問介護事業所が勤続10年以上の介護福祉士を“17.3%”づつ均等に雇用している訳では決してなく、実際には事業所によって大きなバラつきが生まれている事は明らかです。
他方、だからといって、事業所ごとに“勤続10年以上介護福祉士の割合”を精緻に把握し、その実値に基づいて各事業所に配分していく仕組みが創れるか?となると、そのようなデータを収集する事は不可能に近く、それはそれで現実的ではありません。
そこで今回は、代替策として、下記のような基準が設けられることになるようです。
上記方向性が実行されるとなると、サービス提供体制強化加算・特定事業所加算・日常生活継続支援加算といった、いわゆる“体制加算”を「取得しているか」「取得していないか」によって加算率が2段階に分かれてくることになります。
各体制加算の詳細説明については割愛しますが、体制加算を取得していない事業所は今後の取得の是非について、早めに検討を進める必要が出てくるかもしれないことを頭に留めておく必要があるでしょう(下記は上記内容のイメージとして、厚生労働省が作成したものです。こちらも含めて内容ご確認下さいませ)。
それでは続いて論点の2点目、事業所内での配分方法についてです。
新加算については、「リーダー級の介護職員について。
他産業と遜色ない賃金水準を目指し」「経験・技能のある介護職員に重点化しつつ」「介護職員の更なる処遇改善を行うこととし」「その趣旨を損なわない程度において、その他の職種にも一定程度処遇改善を行う」柔軟な運用を認める、という内容が「基本的考え方」として挙げられています。
その前提のもと、下記①②③の3種類に職員を定義した上で、
配分の考え方については下記の通り、ポイントとして1点の整理が為された次第です。
上記を視覚的にイメージすると、下記のような形になるでしょうか(介護給付費分科会資料より抜粋)。
ポイント4の3)に「等一定のルールに基づくこと」とある通り、上記内容で最終確定と理解するのは早計かもしれませんが、いずれにせよ、上記の様な方向性の基準が来年早期に示される事は間違いないと言えそうです。
以上、介護給付費分科会の資料よりポイントを抜粋してお伝えさせていただきました。
既存職員の定着や新たな介護人財の確保にも影響を及ぼしかねない本情報、経営者・幹部の皆様としては「体制加算を取得するべきかどうか?(未取得の場合)」「上記内容が実行された場合、社内にどのような影響が出るだろうか?」「それらに対する対策は?」「何より、攻めの戦略としてどのように有効活用していくか?」等々、早め早めに頭を働かせておく&準備を進めていくことが重要だと言えるでしょう。
“人財=財産”、私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。
※上記内容の参照先URLはこちら
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