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社会保険労務士法人エンジー
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営業時間 平日:8:30-17:30
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みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。
介護・障害福祉の事業所のみなさんは令和5年度分の処遇改善加算の「実績報告」は無事に済ませられましたでしょうか。
ご存知のように、今年の6月から「処遇改善加算」の制度が「介護職員等処遇改善加算」に一本化され、加算率の引き上げが行われました。
それに伴い、令和6年度の実績報告は、様式もこれまでのものと変わっており、新制度用のものになっています。
実績報告書の様式には分かりにくい用語や数値が多く、これまでも様式の記入に苦労されてきた方が多いと思います。
この記事では、今年の制度改正について解説するとともに、今年の制度改正を踏まえ改めて実績報告書作成のポイントをご紹介していきたいと思います。
また、当社には、これまでこんな問い合わせをよく頂いていました。
「勧められるまま加算を取ったものの、何も分からないまま時間が経ってしまった」
「役員や事務職員に支払っていた処遇改善手当は実績に含められないのか?」
「ベースアップ加算は一時金で支払うことはできないのか?」
この記事の後半では、こうしたよくある疑問にもお答えしていきたいと思います。
令和6年6月から、介護職員の処遇改善に関する加算が「介護職員等処遇改善加算」に変更されました。具体には、これまでの「介護職員処遇改善加算」、「介護職員等特定処遇改善加算」、「介護職員等ベースアップ等支援加算」という3つの加算制度が一本化されたのです。この「介護職員等処遇改善加算」の特徴として、大きく次のようなものがあります。
・支給基準の統一:新しい加算は、全ての介護職員を対象にしたものとして設定されるようになり、経験や資格に関わらず、全ての職員の賃金が改善される仕組みとなりました。
・賃金改善の柔軟性の向上:施設や事業所がより柔軟に加算を使えるようになり、具体的な賃金改善の方法を施設や事業所ごとに選択できるようになりました。
・加算の計算方法の簡素化:これまでは複数の加算を個別に計算し申請する必要がありましたが、一本化により加算の計算方法が簡素化され、事業所の事務負担が軽減することが期待されます。
・全職員の公平な賃金改善:新しい加算では、特定の条件を満たす職員だけでなく、全ての職員に対する賃金改善が重視されています。
今回の制度改正により、制度がシンプルになり、加算率も高く設定されるようになりました。さらに、賃金改善の方法も事業所の状況に応じて柔軟に対応できるようになり、賃金改善額の上昇など、職員の処遇改善に向けた取り組みが一層促進されることが期待されます。
令和7年度以降の完全施行に向けて、令和6年度は経過措置期間として設定されています。そのため、令和6年度の実績報告書はこの経過措置を前提とした様式になっています。
処遇改善の実績報告書は、お世辞にも「分かりやすい」見た目にはなっていません。まずは様式ごとに、概要を説明していきます。
まずは「別紙様式3-2」ですが、こちらは令和5年度のものと見た目は少し変わっていますが、記載する内容は同様のものとなっています。
・「令和6年4・5月の加算の総額[円]」には、事業所が報酬として受け取った「処遇改善加算」、「特定加算」、「ベースアップ加算」のうち、4・5月分の総額を記載します。
➡ 数値は「処遇改善のお知らせ」などを見ると分かります。
今回追加された「別紙様式3-3」は、6月以降分の新たな加算区分(「新加算」)について、令和6年度中に新加算の加算区分の変更を行う予定の事業所がある場合に使用するものです。
・「加算の総額[円]」には、別紙様式3-2と同様に、事業所が報酬として受け取った総額を記載します。
➡ こちらも数値は「処遇改善のお知らせ」などを見ると分かります。
「介護職員以外に、どこまで処遇改善を配分できるか」は非常に多く寄せられる質問です。
これまで役員は介護業務に従事する者、事務職員は年収440万円以下など一定の要件を満たす者に限定されていましたが、今回の改正により、すべての職種への配分が認められるようになりました。ただし、役員報酬のみの役員は対象外です。
とはいえ、厚生労働省の通知においては、介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとされていることから、その点は留意するようにしてください。
Q:賃金改善の対象者はどのように設定されるのか。
A:新加算等の各事業所内における配分については、介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとするが、事業所内での柔軟な職種間配分を認めることとする。
介護職員等処遇改善加算等に関するQ&A(第3版)(令和6年6月20日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001266718.pdf
最低賃金をみるにあたって、処遇改善分を含めて最低賃金を上回ってさえいればよいのか?というこちらの質問、「処遇改善」の趣旨からすれば好ましくないことではありますが…
厚生労働省としては、「処遇改善分を除くと最低賃金を下回る」という状況を否定していません。
Q:最低賃金を満たしているのかを計算するにあたっては、新加算等により得た加算額を最低賃金額と比較する賃金に含めることとなるのか。
A:新加算等の加算額が、臨時に支払われる賃金や賞与等として支払われておらず、予定し得る通常の賃金として、毎月労働者に支払われているような場合には、当該加算額を最低賃金額と比較する賃金に含めることとなるが、新加算等の目的等を踏まえ、最低賃金を満たした上で、賃金の引上げを行っていただくことが望ましい。
介護職員等処遇改善加算等に関するQ&A(第3版)(令和6年6月20日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001266718.pdf
「最低賃金を満たした上で、賃金の引上げを行っていただくことが望ましい」ということは、
「望ましくはないが、処遇改善分を除いた金額は最低賃金を下回ることもあり得る」ということになります。
ただし、指定権者(自治体)によって独自の判断をしている場合もあるため注意が必要です。
実際に、愛知県では下記のように言い切っています。
「(加算分を含めない)通常の賃金水準は、愛知県の最低賃金以上であることが必要です。」
福祉・介護職員の処遇改善に関する加算について
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shogai/0000061716.html
計画書や実績報告書に小さな文字で、下記のような記載があります。
「本年度の賃金の総額」には、賃金改善に伴う法定福利費等の事業主負担の増加分を含めることができる
「法定福利費等の事業主負担分」とは、社会保険料(厚生年金、健康保険、介護保険のほか、雇用保険、労災保険の保険料)などの会社負担分のことです。
賃金総額=「従業員に実際に支払った額」+「法定福利費の会社負担額」
であることに注意しましょう。
その上で、国としては下記の算式を「標準」として算出する、としています。
「加算前年度における法定福利費等の事業主負担分の総額」÷「加算前年度における賃金の総額」×「基準翌年度から加算当年度までの公定価格における人件費の改定分」
「公定価格に関するFAQ(よくある質問)(ver.22)」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/9c73bbd3/20230401_policies_kokoseido_09.pdf
要するに、「前年度の賃金総額に占める法定福利費会社負担分のパーセンテージ」を、「今年度に従業員に支払った処遇改善額の総額」に乗じて得られる額が、「賃金改善に伴う法定福利費等の事業主負担の増加分」です。
ただし、上記はあくまで「標準」であり、別の計算式を用いることも可能です。
そもそも、開業直後の事業所では、「前年度の法定福利費」が存在しないため、上記の算式が使えません。
そこで社会保険労務士法人エンジーでは、当年度の社会保険の料率をもとに算出する方式をお勧めしています。
ベースアップ加算は、加算額の3分の2以上を、「基本給」や「(毎月払われる)手当」など月給で支給する必要があり、今回の新加算においても、現行ベア加算のベースアップ要件と同じ扱いとされています。
ベースアップ等支援加算の制度ができる前までは、それまでの処遇改善加算、特定加算で、極論、「全額を一時金に充てて支払う」とか、「年始手当」のように臨時に支払われるような手当に充てる、ということも可能でした。
しかし、それでは「介護・障害福祉は月給が安い。だから処遇改善のための資金を、報酬への加算として配る」という政策目標が十分に果たされていませんでした。
そのためベースアップ等支援加算では、その加算額の3分の2=66.6%以上を、「基本給」や「(毎月支払われる)手当」で支給することが求められてきました。
しかし、そのことを知らずに「月給の引き上げを行わなかった」という事業所もあるかもしれません。
介護、障害ともに処遇改善加算等に係るQ&Aが公表され、ベースアップ等支援加算については、3分の2要件(※)をクリアしていない場合、全額返還が必要になるとの回答が出さています。
介護保険最新情報 処遇改善加算等のQ&A(令和5年8月18日)https://www.mhlw.go.jp/content/001136249.pdf
障害福祉サービス 処遇改善加算等のQ&A(令和5年9月29日)https://www.mhlw.go.jp/content/001152426.pdf (問3)
「知らなかった」では済まされないだけに、最初から制度についてきちんと理解した上で加算を取得しなくてはいけません。
もしくは、介護・障害福祉に精通した専門家に代行を依頼するのが確実です。
処遇改善加算は、頻繁に制度改正が行われ、慣れてきた頃に様式が変わったなどということもあります。
令和6年度に開始した新たな加算制度、就業規則や法定福利費との関連性、労働基準法や最低賃金法など労働法規との関連性、行政機関とのやり取り、制度の改廃のキャッチアップ…
これらにきちんと対応していくには、介護・障害福祉に精通した専門家に委託することが手っ取り早い手段です。
選択肢としては、当社のような社会保険労務士や行政書士の事務所のほか、請求代行事業者などが、処遇改善の代行サービスを行っています。
ただ、スポット(単発)での依頼の場合、結局は代行委託後も「自分で帳簿をそろえてほしい」「必要書類が足りないので追加料金が必要」などといったトラブルが発生しがちです。
介護・障害に特化している社会保険労務士法人エンジー・行政書士事務所エンジーなら、労務顧問料と少額のオプション料金で、安心・確実に代行業務を承ります。
特に、愛知県・名古屋市ほか近隣自治体については、独自基準などの情報にも強みを持っています。
また、処遇改善加算については…
☑ 専任の担当者を配置。
☑ 独自の集計ツールで、「いつ誰にいくら処遇改善分を支払ったか」「あといくら支払えば処遇改善分を配分しきれるか」「法定福利費相当額がいくらか」がいつでも分かる。
☑ 専用ツールを活用し、集計や転記のミスなく計画書・報告書を作成。
こんな体制を整えています。
介護・障害福祉でお悩みなら、社会保険労務士法人エンジー・行政書士事務所エンジーにお気軽にご相談ください。
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介護職員処遇改善加算の取得、処遇改善加算要件にあう運用サポート
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