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社会保険労務士法人エンジー
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2024年4月より、施設系・在宅系を問わず介護事業所では「BCP」の策定が義務化されます。
「BCP」とは、Business Continuity Planの略で、厚生労働省では「業務継続計画」と翻訳しています(介護以外のビジネスでは、主に「事業継続計画」と訳されます)。
BCPの目的は、大地震や水害などの自然災害、感染症の蔓延といった不測の事態が発生した場合でも、可能な限り業務を継続したり、早期に復旧したりできるよう備えることです。
BCP策定が義務化される2024年以降は、そんな非常事態が発生しても「想定外だった」では済まされません。
近年多発している気象災害では、毎回のように介護事業所の被災状況が報道されています。
たとえば、2020年7月の熊本豪雨。
河川の氾濫で特別養護老人ホームが浸水、孤立し、避難の遅れもあって、入所者14人が亡くなりました。
(参考:熊本日日新聞「高齢者14人が犠牲 老人ホームで何が起こった? 熊本豪雨、関係者の証言」https://kumanichi.com/articles/49689)
同じような豪雨災害が起きたとき、もし犠牲者を出してしまったら…。利用者様や職員、地域からの信頼が失われ、事業所や法人の経営にも打撃となるリスクが想定されます。社会的な責任を追及されることは免れません。
しかも、名古屋市をはじめ東海地区は、南海トラフ地震による地震・津波被害や、河川の増水・堤防の決壊などが広い地域で懸念されます。利用者様や職員の生命と安全を確保するためのBCPの策定は、急務といえます。
そこでこの記事では、そもそもBCPとは何か、どのような計画を策定する必要があるのか、策定のポイントなどについてご紹介しています。
何から始めればいいかわからない。BCPについて聞いたことはあるけど、何から手を付けたらいいのか。
そんな方のために当社では、BCP策定支援サービスを展開しています。
BCPは、まず職員を守り、必要なサービスを継続するためのものです。
社員と一緒になって会社の未来を考える絶好の機会としましょう!
目次
まずは厚生労働省がBCP(業務継続計画)についてどのように定義しているか、ガイドラインで確認しておきましょう。
BCP とは「平常時の対応」「緊急時の対応」の検討を通して、①事業活動レベルの落ち込みを小さくし、②復旧に要する時間を短くすることを目的に作成された計画書です。
出典:厚生労働省老健局「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」(2020年12月)
つまり、被災時や緊急時であっても、影響を最小限にとどめながら可能な限り事業を継続すること、早期復旧の準備をしておくこと、が求められています。
介護事業所でBCPの策定が義務化される背景について、同じガイドラインでは下記のように説明がされています。
介護施設等では災害が発生した場合、一般に「建物設備の損壊」「社会インフラの停止」「災害時対応業務の発生による人手不足」などにより、利用者へのサービス提供が困難になると考えられています。
出典:厚生労働省老健局「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」
一方、利用者の多くは日常生活・健康管理、さらには生命維持の大部分を介護施設等の提供するサービスに依存しており、サービス提供が困難になることは利用者の生活・健康・生命の支障に直結します。
上記の理由から、他の業種よりも介護施設等はサービス提供の維持・継続の必要性が高く、BCP 作成など災害発生時の対応について準備することが求められます。
製造業など他の業種と異なり、介護事業は利用者様の生活・健康・生命と直接的にかかわっています。それゆえにこの度、BCP策定が義務化されたということです。
義務化の対象については、「全ての介護サービス事業者」です。令和3年度介護報酬改定において、下記のように取り決められました。
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける。(※3年の経過措置期間を設ける)
出典:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」
つまり、訪問介護や訪問看護、通所介護(デイサービス)、共同生活介護(グループホーム)、小規模多機能型居宅介護…はもちろんのこと、福祉用具貸与・販売や居宅介護支援に至るまでのあらゆる事業所で、3年の経過措置期間が終わる2024年4月までに策定を完了していなくてはいけないこととされています。
多くの事業所では既に、自然災害を想定した「防災計画」などを策定していることでしょう。
この防災計画をもって、BCP(業務継続計画)とすることはできないのでしょうか。
結論からいいますと、防災計画とBCPでは、その目的や対策の検討範囲などが異なるため、そのまま同じものを使うことはできません。ただし、両者には共通する要素も多く、内容を一体的に検討していくことが有効です。
それぞれに違いについて、厚労省のガイドラインを確認しましょう。
防災計画の目的は、
「身体、生命の安全確保」「物的被害の軽減」
とされています。
一方、BCPの目的は、
「身体、生命の安全確保に加え、優先的に継続、復旧すべき重要業務の継続または早期復旧」
です。
また、重視する事項についても、防災計画では死傷者数や損害額の最小化を挙げているのに対して、BCPではそれらに加え、下記の事項についても重点的に検討することとされています。
「重要業務の目標復旧期間・目標復旧レベルを達成すること」
出典:厚生労働省老健局「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」
「経営及び利害関係者への影響を許容範囲内に抑えること」
「利益を確保し企業として生き残ること」
つまりBCPにおいては、防災計画で定められているような安全確保に加えて、被害を最小限にしつつ、業務を継続していくための手段について検討するよう求められています。
ひとえに「業務継続」といっても、対応の仕方は自然災害と感染症で大きく異なります。そこで、BCPの計画も、自然災害に対応するものと感染症に対応するもの、それぞれを想定した2パターンを作成する必要があります。
BCP策定における自然災害と感染症の主な違いは、時間的経過にともなう変化という点にあります。
自然災害では、発災直後から数日間の対応が重要です。浸水や建物の被害から人命を守り、一時的なライフラインの途絶を乗り切れるだけの備えが必要です。この数日を乗り越えれば、着実に復旧が進むのが一般的です。
一方で感染症では、長期的な対応が必要となります。感染対策をしながらのケア、感染や濃厚接触で休業する職員の代替要員の確保・心理的なケアも求められることになります。
こうした事情を踏まえ、あらゆる事態を想定した計画を策定しなくてはいけません。
では、策定するBCPの「計画」の中には、具体的には、どのような事項を盛り込む必要があるのでしょうか。
厚労省では、策定のガイドラインのほか、ひな形、研修動画などを公開しています。その目次を見てみると、たとえば自然災害については下記のような項目が並んでいます。
1.総論
出典:厚生労働省「自然災害ひな形(自然災害発生時における業務継続計画)」
2.平常時の対応
3.緊急時の対応
4.他施設との連携
5.地域との連携
6.通所(訪問、居宅介護支援)サービス固有事項
この資料を踏まえれば、厚労省の求める水準のBCPを作成することが可能です。
BCPへのより具体的な記載内容としては、下図のような項目が挙げられています。
しかし、ひな形があるとはいえ、例によって資料は膨大。
上記の自然災害ひな形は、ワードファイルで29ページものボリュームとなっています。
ここまで解説してきたように、BCPの策定は専門性が高くボリュームがありますが、ひな形やガイドラインも公表されているので、手間と時間をかければ事業所のメンバーだけでも作成することは可能です。
とはいえ、せっかく長大な計画を策定するわけですから、「義務化に合わせて、間に合わせで作って終わり」とせず、「使える」内容にしたいところです。
特にBCPは、職員の声を生かしたり、地域の住民や団体、他事業所と連携を取ったりすることが極めて重要となります。
そうして職員や地域からの信頼を醸成できれば、職員の定着や採用、利用者様の獲得など、事業所の経営にも好影響をもたらすことができます。
BCP策定の膨大な作業を円滑かつ有意義に進めるためには、BCPに関しての深い理解が欠かせません。一方で、職員からや地域の方を交えた会議の場のセッティング・運営やその内容をフィードバックしていくスキルも必要です。
そこでBCP策定にあたっては、外部のコンサルティングサービスを活用することをお勧めいたします。
私ども社会保険労務士法人エンジーは、名古屋市内をはじめ、愛知、岐阜、三重で100以上の介護・福祉事業者様を顧問先とし、指定申請や各種加算の取得支援なども得意としています。
東海地区の事業所様のBCP策定は、地域密着、介護・福祉業界に強い社労士法人エンジーにぜひご相談ください。
当社では、このようなBCPの作成支援サービスを得意としております。
2023年6月現在、介護・障害福祉事業の約15社(※)からご依頼を頂き、ミーティングや計画作成、訓練、定期的な計画見直しなどのご支援を行っています。
※例:有料老人ホーム様(従業員数約70人)、訪問介護事業所様(従業員数5人)、就労継続支援事業所様(従業員数約10人)、児童発達支援・放課後等デイサービス事業所様(従業員数約10人)など。
ご興味のある事業所様は、ぜひ下記サービスページをご覧ください。
社会保険労務士法人エンジーでは、訪問介護事業所や就労継続支援事業所など、介護・福祉事業所の指定申請代行、労務顧問などの業務を行っています。
名古屋市周辺を中心に、介護・障害福祉事業の顧問先は100社以上。専門的な知識と豊富な実績で、御社の事業をサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
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