名古屋の介護・福祉業界に強い社会保険労務士法人エンジー/行政書士事務所エンジー/中小企業診断士エンジー
社会保険労務士法人エンジー
地下鉄名城線 東別院駅 徒歩1分
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営業時間 平日:8:30-17:30
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公開日 2025/12/17
みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。
今回のブログは、介護サービスでの指定申請におけるポイントをおさえ、疑問を解決するガイドとなります。
そんな方へ向けて、おおまかなスケジュールや提出先ごとの主な必要書類、つまずきやすいポイントと記載例など、網羅的に解説します!ぜひ最後までご覧ください。
まずは「指定申請」どういったものなのか、軽く整理しておきましょう。
介護保険サービスを提供し介護報酬を請求するためには、事業所ごとに「指定」を受ける必要があります。「指定」とは、行政がその事業所について《介護保険サービスを提供し介護報酬を受け取ることを正式に認めること》をいいます。
いくら立派な法人を作っても、指定を受けるまでは介護保険サービスとして動くことはできません。
次に、新規指定申請について、最低限おさえておきたい3つのポイントを順番に見ていきましょう。
1つ目は、「申請者は原則として法人である」ということです。
株式会社・合同会社・医療法人・社会福祉法人・NPO法人など、いろいろな形がありますが、いずれにしても個人事業主のままでは介護保険サービスの指定は受けられません。
2つ目は、「指定をする人(指定権者)」は、サービスや場所によって違うということです。
愛知県の場合、
が入り混じっているので、まずは自分の事業がどのパターンにあたるかを見極めることがスタートラインです。
3つ目は、「指定には期限(有効期間)があり、6年ごとに更新が必要」ということです。
この記事は新規指定がテーマですが、「一度通れば終わり」ではない、というイメージを持っておいていただけると、運営計画を立てる上でも役立ちます。
愛知県で介護事業をするのであれば、
そのまま、愛知県への申請が必要なのでは?と思いがちですが、
名古屋市内に事業所を構える場合は、
原則として名古屋市に申請することになります。
申請先を判断する際のわかりやすいイメージとしては、以下の通りです。
この記事では、「愛知県(県所管)」と「名古屋市」に絞って説明していきます。
実際に開業時の相談で一番よく聞かれるのが、
「申請はいつまでに提出したら開業に間に合うか」
といった質問です。
結論からいうと、愛知県も名古屋市も、原則 月1回、1日付で指定をしており、その2か月前までに「不備なしで受理」されていることが基本ラインです。
例えば、3月1日からサービスを開始したいとした場合、
という流れになります。
書類に不備があると、差し戻し → 修正 → 再提出…といったやり取りが発生します。
そのため、実務的には指定を受けたい月の3〜4か月前から準備を始めておくのが安心です。
名古屋市は、もう少し細かく「締切日」が決まっています。
というタイムラインです。
「10日まで」と「末日17時まで」という2つの締切があるので、余裕をもって書類を作り、修正が入ることを前提に見込んでおくことが重要です。
ここからは、愛知県・名古屋市どちらにも共通する大まかな流れを追っていきます。
最初のステップは、「誰が申請者になるのか」 を決めるところからです。
すでに介護とは別の事業で法人をお持ちであれば、その法人を使うこともできます。その場合、定款の目的に「介護事業」「居宅サービス」などの文言が入っているかを確認しておきましょう。なければ、定款変更や目的追加が必要になるケースもあります。
これから法人を作る場合は、株式会社にするか、合同会社にするかNPO等、別の法人格にするかといった検討と並行して、いつから事業を始めたいのかも決めておくと、そのあとのスケジュールが組みやすくなります。
次に考えるのが、どんな設備のある場所で、誰と始めるかです。
など、サービスごとに細かな基準があります。
ここを完全に暗記する必要はありませんが、「どのくらいの広さ・どのくらいの人数が必要なのか」のイメージだけは持ったうえで、物件探しや採用計画を進めるのがおすすめです。
物件の候補が見えてきたら、いきなり契約してしまう前に、まずは申請先の窓口で「図面相談」をしておきましょう。
図面相談では、
といった点を、申請先の市役所や県庁の担当者と一緒に確認します。
愛知県:毎月1〜20日の間に予約のうえ、図面相談
名古屋市:同じく1〜20日の間に、建物基準があるサービスは図面相談(予約制)
ここで「そもそもこの物件だと基準を満たせない」とわかってしまうと、契約後に大きな損をしてしまうこともあるので、必ず契約前に相談しておきます。
図面の方向性が固まってきたら、いよいよ書類作成です。指定申請書をはじめ、次のような書類を一つずつそろえていくイメージです。
・指定申請書
・サービスごとの付表
・勤務体制・勤務形態一覧表
・平面図・設備一覧
・運営規程
・法人の登記事項証明書・定款・役員名簿
書類名を並べると構えてしまいがちですが、
実際には様式が用意されているものが多く、
パズルのように必要な情報を埋めていくイメージです。
書類がまとまったら、いよいよ提出です。
提出には申請手数料がかかります。おおまかなイメージとしては、
が目安ですが、実際の金額は必ず最新の情報をご確認ください。
無事に「受理」されれば、あとは審査結果を待つフェーズに入ります。この間に、必要な備品の購入・設置、採用・研修、運営規程やマニュアルの最終調整などを進めていくことになります。
サービス内容や自治体によっては、「現地確認」が行われる場合もありますが、ここで基準をきちんと満たしていれば、晴れて指定通知書が届きます。
この通知書に記載された「指定年月日」から、介護保険サービスとして動き出すことができます。
愛知県内で介護サービスを始めるとき、「どこに」「いつまでに」「いくらで」申請するのかは最初につまずきやすいポイントです。愛知県と名古屋市それぞれの提出先・提出期限・手数料の違いを、一目で比較できるよう表にまとめました。
| 愛知県(県所管エリア) | 名古屋市 | |
| 所管エリア | 名古屋市・岡崎市・一宮市・豊田市・東三河地区を除く愛知県内の介護保険事業所 | 名古屋市内の介護保険事業所 |
| 主な提出先 | 高齢福祉課介護保険指導第一G または各福祉相談センター(サービス・市町村による) | 名古屋市介護事業者指定指導センター/介護保険課 施設指定担当 |
| 主な提出方法 | 原則「電子申請・届出システム」によるオンライン申請。難しい場合は予約制で窓口持参。 | 申請書類を郵送し、その後電話・面談で内容確認。不備がなければ窓口で「受理」。 |
| 提出期限の目安 | 指定希望月の前々月末日までに「受理」されていること。遅くとも2か月前の初めには書類確認を受けるのが望ましい。 | 指定希望月の2か月前の10日までに申請書類を必着、その月末17時までに受理される必要がある。 |
| 指定日 | 原則、翌々月1日付で指定(毎月1回)。 | 月末までに受理されたものを審査し、翌々月1日付で指定(毎月1回)。 |
| 手数料 (居宅・地域密着等) |
新規指定1件あたり30,000円、更新10,000円。 | 居宅サービス・地域密着型サービス・居宅介護支援の新規指定1件あたり30,000円、更新10,000円。 |
| 手数料支払い方法 | 愛知県収入証紙または「あいち電子申請・届出システム」からキャッシュレス決済。 | 名古屋市が交付する納入通知書に基づき金融機関等で納付(詳細は市の手数料案内参照)。 |
| チェックリスト | 事業種別ごとの「指定(開設許可)申請書類一覧表(チェックリスト)」添付が必要。 | サービスごとにチェックリスト(Excel)を公開。申請時は最新版を使用すること。 |
愛知県知事が指定権者となるのは、名古屋市・岡崎市・一宮市・豊田市・東三河地区を除いた市町村の介護保険事業所(ただし地域密着型サービス・総合事業は市町村)です。
サービス別・市町村別に「受付機関一覧表」が公開されているので、まずは自分の所在地とサービスを照らして窓口を確認しましょう。
提出の目安として、指定希望月の前々月末日までに「受理」されていることが必須です。不備があると3〜4回の再提出になるケースもあるため、指定希望月の2か月前の初めには一度提出できていることが理想です。
指定日は月末までに受理されたものを審査し、翌々月1日に指定されます。
・チェックリスト(指定(開設許可)申請書類一覧表)
・指定申請書(厚生労働省様式)
・付表(サービス別の記載事項:訪問介護・通所介護など)
・法人関係書類
・登記事項証明書(3か月以内)、定款、役員名簿 等
・事業所平面図・設備備品一覧(運営基準を満たしているか判断できる内容)
・従業者の勤務の体制および勤務形態一覧表(標準様式)
・運営規程・苦情処理体制・勤務体制図・協力医療機関との契約書 など
サービスごとの詳細は、
県の『手引き(訪問介護編/通所介護編など)』で
必ず確認してください。
| 居宅サービス・介護予防サービス | 30,000円 |
| 介護老人福祉施設 | 45,000円 |
| 介護老人保健施設・介護医療院 | 67,000円 |
原則:愛知県収入証紙で納付。
2025年8月1日以降、「あいち電子申請・届出システム」経由でキャッシュレス決済も可能です。
ほかにも、愛知県への申請として特徴的なのは、できるだけ「電子申請・届出システム」からの申請が推奨されている点や、サービスごとに「指定申請の手引き」と「チェックリスト」が用意されていて、それを見ながら作る前提になっているという点です。
各書類の様式は、きちんと最新版をダウンロードできているかを確認し、元の形を崩さずにそのまま使うことを意識しましょう。
名古屋市内で訪問介護・通所介護・福祉用具貸与・居宅介護支援などを行う
| 訪問介護・通所介護・福祉用具貸与・ 居宅介護支援など |
名古屋市介護事業者指定指導センター |
| 介護老人福祉施設・介護老人保健施設・ 介護医療院など |
名古屋市介護保険課 施設指定担当 |
・指定申請書
・付表(訪問介護事業所等の指定に係る記載事項 など)
・法人の登記事項証明書(3か月以内)
・暴力団排除条例に基づく誓約書
・建物の賃貸借契約書等(所有形態がわかるもの)
・事業所平面図・主要箇所の写真
・従業者の勤務形態一覧表
・資格証の写し(介護福祉士・看護師など)
・運営規程・苦情処理体制の概要
・加算関係の届出書一式(必要に応じて)
・老人居宅生活支援事業の届出書(自治体指定の様式)
・業務管理体制に関する届出書
・社会保険・労働保険加入状況の確認票
こちらも、サービスごとの詳しい必要書類を
「NAGOYAかいごネット」にある指定申請の
手引き+チェックリストで確認してください。
新規指定:30,000円/更新:10,000円
新規指定:45,000円(更新も同額の場合が多いが、詳細は単価表参照と記載)
一体的に申請する場合の減免や、指定不要の「みなし指定」など、一部の特例もあります。
ほかにも、必要書類には、以下のような名古屋市独自の様式があったり、
書類の確認は電話で行われるので、サービス内容を説明できる人が電話に出られる体制を整えておくなど、名古屋市ならではの運用もあります。
登記事項証明書に記載されている正式な法人種別をそのまま記入してください。
登記上の表記(「一丁目」か「1丁目」か等)と一致させます。
登記上の商号とは別に事業所名を決めてもよいですが、運営規程・看板・契約書などと名称を統一させる必要があります。類似の事業所名が近隣にないか、検索してから決めるとなお良いでしょう。
愛知県・名古屋市とも、原則として申請書類が受理された月の翌々月1日が指定日=事業開始予定日となります。
申請書類を出すタイミングではなく、受理されるタイミングから逆算して記載しましょう。
工事や人員採用のスケジュールも、この日付から逆算して組む必要があります。
同一敷地・同一法人で既に指定を受けている介護・障害・医療事業がある場合は、漏らさず記入してください。
病院・診療所・薬局・老健・訪問看護ステーションとしてすでに医療機関コードがある場合のみ記入します。なければ空欄のままでOKです。
初年度は控えめな見込みで構いませんが、事業計画・人員配置と整合する数字にしてください。
勤務形態一覧表に記載した人数と完全に一致させます。管理者がサービス提供責任者を兼務する場合など、兼務状況も正しく反映してください。
運営規程に書いた内容と齟齬のないように記入します。
介護保険法上の目的・通所介護の定義と内容が大きくズレないようにしつつ、自事業所の特徴(小規模・リハビリ重視など)を1文程度で補足しましょう。
「常勤・非常勤」は雇用形態ではなく、その事業所における常勤時間を満たしているかどうかで判断します。兼務とは、「同一事業所内の兼務」を指し、別事業所で働いている場合は専従扱いになるなど、細かな考え方を短く整理します。
・勤務形態一覧表の人数と付表の人数が違う。
・運営規程に記載した営業日・営業時間と申請書の記載が揃っていない。
・協力医療機関との契約書の名称と、運営規程に書いた医療機関名が異なる。
勤務形態一覧表や運営規程の整合性をチェックする際は、
経験者でないと見落としがちなポイントなので
注意して確認するようにしましょう。
実際の書類を書くときに迷いやすい部分の「文章例」をいくつかご紹介します。
自社の方針・サービス内容に合わせて少しずつアレンジして使ってみてください。
「本事業所は、要介護状態にある利用者が、できる限り住み慣れた地域で自立した日常生活を営むことができるよう支援することを目的とする。
利用者の心身の状況および置かれている環境等を踏まえ、通所介護計画に基づき、入浴、排泄、食事等の介護、日常生活上の支援および機能訓練等のサービスを提供する。
また、地域の関係機関等との連携に努め、利用者およびその家族が安心してサービスを利用できるよう、サービスの質の向上に努める。」
「本事業所は、要介護状態または要支援状態にある利用者に対し、居宅において入浴、排泄、食事等の介護並びに掃除、洗濯、調理等の家事援助等の訪問介護サービスを提供する。サービスの提供にあたっては、居宅介護支援事業所が作成する居宅サービス計画に基づき、サービス提供責任者が訪問介護計画書を作成し、利用者および家族に説明のうえ同意を得る。サービスの内容・頻度等は、利用者の心身の状況や家族の状況の変化に応じ、必要に応じて見直しを行う。」
「本事業所には、管理者、生活相談員、介護職員、看護職員、機能訓練指導員等を配置し、関係法令および愛知県(または名古屋市)の定める人員基準を満たす体制とする。営業日ごとに、利用定員およびサービス提供時間に応じた必要数以上の介護職員を配置するとともに、看護職員を少なくとも一人以上勤務させ、利用者の健康管理および緊急時の対応が適切に行える体制を確保する。」
「利用者またはその家族からの苦情に適切に対応するため、苦情受付担当者および苦情解決責任者を定め、事業所内に苦情受付窓口を設置する。苦情は、面談、電話、書面等により随時受け付け、内容を記録のうえ、事実関係の確認および原因分析を行い、必要な改善措置を講じる。苦情およびその対応状況は職員間で共有し、再発防止およびサービスの質の向上に役立てる。」
「地震、風水害、感染症のまん延等の非常災害が発生した場合においても、利用者の安全を最優先に必要なサービス提供を継続できるよう、業務継続計画(BCP)を策定する。非常災害発生時には、事前に定めた避難及び連絡体制に従い、利用者の安全確保、家族等への連絡、関係機関への報告を行う。また、平常時から非常災害に備えた訓練及び職員研修を定期的に実施し、対応能力の向上を図る。」
A. 原則として、3月1日から指定を受けるためには、1月末までに「不備なしで受理」されている必要があります。図面相談や書類の修正期間を考えると、少なくとも前年の11〜12月には準備を始めておくと安心です。
A. まずは「どこに事務所を構えるか」と「誰を管理者・サービス提供責任者にするか」を決め、そのうえで物件の図面相談を行うのがおすすめです。そこから逆算して、指定を受けたい月の2か月前10日までに申請書類を郵送し、月末までに受理を目指す流れになります。
A. 制度上はもちろん可能です。じっくり手引きを読み込み、自治体の担当者に確認しながら進めれば、自力で通すこともできます。ただ、「開業時期が決まっている」「人手が足りない」「一度で通してスケジュールを遅らせたくない」という場合は、最初の1回だけでも専門家のチェックを入れておくと安心です。
指定通知書が届いたら、まず利用契約書・重要事項説明書など利用者向け書類の最終確認をしましょう。次に、業務管理体制の届出や加算の届出など、指定後に必要な行政手続きを早めに済ませます。あわせて、記録様式や請求ソフトの運用方法を職員全員で共有し、受け入れ開始後すぐに回る体制を整えることが大切です。
この10個の問いに「はい」と答えられれば、
かなりスムーズに進められる状態に近づいているはずです。
提出前に必ず確認しましょう。
愛知県・名古屋市で介護サービスを始めるには、事業所ごとの「新規指定申請」が必須です。
指定申請は、指定希望日から逆算して、2か月前には不備なく受理されている必要があり、
書類は種類も多く複雑に見える部分もありますが、手引きとチェックリストを使いつつ、一つずつクリアしていけば必ずゴールにたどり着くことができます。
エンジーがお手伝いできること
・スケジュール設計と「いつまでに何を出すか」の整理
・申請書・付表・運営規程・勤務形態一覧表などのドラフト作成
・行政とのやり取り(補正対応など)の伴走
・指定取得後の労務・給与・処遇改善加算・BCP策定などまでワンストップ対応
上記の例のほかにも、お悩みや疑問に合わせて、
柔軟に伴奏型のサポートをいたします。
ぜひお気軽にご相談ください。
(参考資料)
この記事は以下の資料を参照し作成しています。
公開日 2025/10/29
みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。
今回のブログは、訪問介護計画書を作成するうえでのポイントをおさえ、疑問を解決するガイドとなりますので、ぜひ最後までご覧ください。
訪問介護計画書とは、施設利用者が自宅で受ける介護を、
行うかを一枚にまとめた実行計画です。
ケアプラン(居宅サービス計画)を土台に、事業所のサービス提供責任者が利用者の状態に合わせ、目標とその評価指標、具体的な手順、所要時間、担当者、曜日や時間帯までを具体化してまとめるものです。作成後は利用者とその家族へ計画の内容を説明し、同意を得たのち写しを交付します。実施状況を定期的に確認しながら、必要に応じて見直します。
つまり、訪問介護計画書は現場のサービスと帳票、ケアプランをつなぐ設計図であり、実地指導でも確認される非常に重要な書類です。
訪問介護計画書は、遅くとも初回のサービス提供(初回訪問)を開始する前までに、訪問介護作成・説明・同意・交付を完了しておきます。契約・重要事項説明のタイミングで完了させ、初回訪問まで持ち越さない運用にすると確実です。
作成にあたり、まず以下のような基礎情報を整理したり、目標や担当を設定しておく必要があります。
| ケアプラン情報 | 長期・短期目標、第3表(週間サービス計画表)の曜日・時間帯・頻度を確認(=計画書とケアプランの整合を図る際の基準) |
| アセスメント要約 | ADL/IADL、生活リズム、住環境、医療情報、家族支援、本人の希望、リスク(転倒・誤薬など)を200字程度を目安に要約します。 |
| 目標と評価指標 | 長期/短期の目標を具体的かつ測定可能な、期限を設けて設定し、到達基準と測り方を明確化しておきます。 |
| 具体的サービス内容の設計 | 部位/道具/順序/留意点/到達基準まで明記します。(例:清拭温度、観察項目、臭気0/10 など) |
| 所要時間・日程・担当の確定 | 1回=1枠(1訪問)の利用者宅での滞在時間の目安(入室~退室)、曜日・時間帯、担当(氏名/ID)を決め、第3表と同じ言葉にそろえます。 |
| 説明・同意・交付の証跡 | 説明日・同意者・署名(電子可)・交付日を証跡として残しておきます。変更が生じた際には版ごとに管理し、記録を残し、作成後は遅滞なく交付できるような運用を設計しておきます。 |
作るのは初回訪問の前が鉄則。
契約・重要事項の説明とセットで、
説明→同意→交付まで一気に済ませましょう。
ケアプラン変更や入退院のときも、迷わず見直しです。
また、作成した訪問介護計画書と、実際に行っているケアの進め方にズレが生じた時(ケアプラン(第3表含む)の新規作成時・変更時、入退院や体調の変化、家族体制の変更、加算や体制変更の開始、または同様の延長や短縮等)には、必要に応じて変更(再説明~交付)を行います。
訪問介護計画書における既定の様式はなく、事業所ごとに定めてOKです。
厚労省の解釈通知(老企第25号)にも、訪問介護計画の様式は、各事業所ごとに定めて差し支えないと明記されています。
ただし、
まで含めることが前提となります。
また、実地指導では訪問介護計画書・実施記録・週間サービス計画表の3点にそれぞれ矛盾がないかを確認します。訪問介護計画書ならびに実施記録の作成は省令により義務付けられていますが、実地指導を見据え、週間サービス計画(任意)もふまえた3点セットを意識して作成、運用にあたるとよいでしょう。
「任意様式」においてポイントになるのは再現性です。
誰が書いても同じ水準になるよう、必須項目の表記や順序、単位(分/回/週)などはきちんと揃えましょう。
生活課題・ニーズを簡潔に言語化します。転倒・衛生・服薬などの課題が当てはまります。
例えば「立位が不安定でトイレ掃除が難しい」「家族の支援は日曜のみ」「臭気は10段階中3」など、事実/原因/ニーズの順で書くと読みやすくなります。ここが曖昧だと、そのあとの目標やサービス内容がぼやけてしまいますので、きちんと明確化しておきましょう。
次に、長期目標(3〜6か月)と短期目標(2〜8週間)を設定します。
どちらも達成できたかが判断できるよう 、SMART(具体・測定・達成・関連・期限)で表現します。
例:「2週間以内に火・木の午前、トイレ・洗面の掃除を各30分実施し、臭気スコア0/10を維持」
合わせて、いつ評価するか(例:月1回)、どうやって測定するのか(例:臭気0/10、遵守率90%以上)も決めておきます。
サービスの中身については、目的/具体内容/手順/留意点/到達基準の流れで書きます。
例えば生活援助なら、以下のリストのように整理するとよいでしょう。
| 目的 | トイレ・洗面の衛生維持 |
| 対象部位 | 便器・床・手すり、洗面ボウル・蛇口・鏡 |
| 手順 | ①換気②洗剤③水拭き④乾拭き |
| 留意すべき点 | 薬液の残りに注意 |
| 到達基準 | 臭気:0/10 滑り:0/10 |
身体介護も同様に、順序や角度、確認ポイントまで具体化します。
週間サービス計画表は、いわば1週間分の介護の時間割です。ケアプラン(居宅サービス計画)に書かれた方針と齟齬がないか、そして、計画書の本文に書かれた「曜日・時間・分数・内容・担当者」と一致しているかを確認します。
実地指導では、ケアプラン→計画書→週間表→実績の見比べが行われます。ここで間違いがあると、説明に時間がかかってしまいますので注意しましょう。
作成した計画は、利用者とその家族に分かりやすい言葉で説明し、同意をいただきます。署名(電子署名も可能)と日付、いつ交付したか(交付日)を必ず残してください。途中で内容を変更した際、再度の説明・同意が必要か否かも併せてルール決めをしておくとよいでしょう。
介護計画書に沿った介護を実施し、その後もモニタリング(評価)と、必要に応じ計画を修正しましょう。この時、モニタリングに用いる評価指標を設定しておきましょう。
計画書は作って終わりではなく、運用開始後は以下のポイントに注目し、計画に沿った支援の実施と見直しによりサービスを改良していくことが重要です。
運用が始まったら、決めた頻度(例:月1回)で評価し、同様の方針を継続していくのか、強化していくのか、変更するのか、といった判断について短文で記録を残していきます。
例:「予定どおり週2回実施。臭気0/10を維持。体力低下で乾拭き工程に時間増→所要時間を30→40分へ見直し提案」
計画を変えた場合は、
いつ・なぜ・何を変えたか、
説明・同意をとったかまでを明記しておきます。
これが、現場としての「やむを得ない調整」なのか、もしくは計画的な変更であったのかを区別する根拠になります。変更の履歴は版ごとなどで(例:Ver.1.2/改定日/改定者)管理し、週間サービス計画表と実施記録に即時反映することを心がけましょう。
計画書や記録は、一定期間の保存が求められています。
地域によっては上乗せ期間が定められていたり、電子保存の運用ルールが示されている場合があります。自法人の就業規則や重要事項説明に保存年限と保存方法(紙・電子、版管理)をはっきり明記し、所轄自治体の運用に合わせてください。
電子保存の場合は、検索できるファイル名や版番号、交付日のわかる履歴を整えると、実地指導の応対が格段にスムーズになります。
クラウド上で管理する運用であれば、アクセスログと自動バックアップを有効にし、紙の運用が混在する場合は、定期的にデータ保存(例:月末にスキャン)し、紙面の情報の廃棄手順まで明文化しておきましょう。
退職・異動時のアカウント停止も忘れずに。
計画書・記録には健康・生活に関するデリケートな情報が含まれます。情報へアクセスできる担当者とその権限を絞り、持ち出しや送受信の方法を社内ルールで明確化しましょう。
スタッフへの個人情報の取扱いに関する教育の機会を設けたり、
情報へアクセスする際の権限を確認するなど、
個人情報の取扱いについては、
定期的に運用を見直すようにしましょう。
目的外利用をしない、不要になった情報を適切に廃棄する、誤送信を防ぐといった基本の徹底が、クレームやトラブルの予防になります。
前提として、計画書(何を・どこまで)/週間サービス計画表(いつ・誰が・何分)/実施記録は、同じ言葉・同じ分数や単位でそろっていることが大切です。
以下、おこりがちなミスとその予防策を参考にしてください。
例:「安全に配慮」「清潔を保つ」など
達成か未達か判断ができず、改善するにあたっての方向性も見えてきません。「2週間以内に、火・木の午前、トイレ・洗面の掃除各30分で、臭気0/10を維持」といったように、具体的な数値目標や期限を入れましょう。
例:「掃除を支援」のみ
場所・道具・順序・到達基準が不明瞭だと、担当者によっては一貫した質の支援をすることが難しくなります。上記のように、掃除に関する支援をした場合であれば、掃除をした箇所(例:便器・床・手すり)/道具(希釈洗剤・雑巾)/順序(換気→洗剤→水拭き→乾拭き)/基準(臭気0/10・滑り0/10)まで明記しましょう。
ケアプランと自事業所の計画に基づいてサービスを提供する義務があるため、これらの整合が取れないと、監査などの際の説明が困難になります。
ケアマネから変更通知を受けたら、即日で社内週間表・計画本文に反映し、それらの対応ステータスも管理できるようチェックリストを用意しておくとよいでしょう。
緊急時の対応など、利用者の安全に直結する問題については、何をもってして異常と判断するのかといった閾値を把握しておくことや、連絡体制を正確にとり決めておきましょう。
1回=週間表の1枠(1訪問)と定義し、内訳(身体15分+生活15分など)は記録で明示するなど、事業所内の全員で認識を統一させておきましょう。
ミスの多くは、
訪問問介護計画書/週間サービス計画表/実施記録の
同じ意味の言葉や数値基準での表記ブレが原因。
定期的に各書類の整合性を確認することで未然に予防できます。
重要な変更(内容の追加・削除、所要時間の恒常的変更など)は再同意が安心です。
軽微な時間前後などは社内ルールで取り扱いを明確にしておきましょう。
運用として認められる枠組みがあります。
本人確認ができる署名と版管理・交付日の記録を合わせ、所轄の運用に従ってください。
原則の保存年限があります(運用は自治体で上乗せあり)。電子保存は可能ですが、改ざん防止・検索性・版管理を整え、就業規則と重要事項説明に明記しましょう。
後から見ても、どうしてその判断に至ったのかを追うことができるよう、最低限、予定/実績/理由の三点はおさえておきましょう。
判断に迷うときは事前にケアマネ・看護・所轄へ相談できる体制を整えておきましょう。
現場での担当者レベルの判断や、何かのついでの対応は避けるように、計画書にはやること/やらないことを明示しておきましょう。
閾値→連絡順→要請基準を一行ずつで十分です。
例:「SpO₂<92% → 家族→主治医→事業所/呼吸困難・意識障害は救急要請」など
訪問介護計画書の作成は、現場で利用者さんと向き合う職員の皆さまが担う、とても大切なプロセスです。
計画書は単なる事務作業ではなく、利用者さんの生活をどう支え、どんな時間を共に過ごしていくのかという、現場の想いを形にするもの。
その一枚一枚には、支援への工夫や願いが込められています。
私たち社会保険労務士法人エンジーでは、訪問介護計画書の作成そのものを代行することはできませんが、職員の方々が安心して業務に専念できるよう、人事・労務・体制づくりの面から支援を行っています。
働く環境が整うことで、自然と計画書の質やケアの一貫性も高まっていきます。
訪問介護計画書は、現場のケアを支える“道しるべ”のような存在です。
利用者さんの毎日をどう支えるか、その想いを具体的に言葉にする第一歩として、まずは目の前の1枚を丁寧に仕上げてみてください。
このガイドが、日々の現場での気づきや工夫につながるきっかけとなれば幸いです。
(参考資料)
この記事は以下の資料を参照し作成しています。
・訪問介護計画の作成・説明・同意・交付・モニタ・変更準用(省令本文/厚労省)
・ケアプラン標準様式:第3表=週間サービス計画表(厚労省・記載要領PDF)
・実施記録の整備・完結日から2年保存(e-Gov法令)
・(再掲)モニタリングと計画変更の準用(省令本文/厚労省)
・保存年限の自治体上乗せ例(5年)・電子保存可(川崎市)
・医療・介護分野における個人情報の適切な取扱いガイドライン(厚労省・PDF)
公開日 2025/10/27
みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。
「介護職員等ベースアップ等支援加算」は2024年6月から新『介護職員等処遇改善加算』へ一本化され、ベースアップ加算としての単独算定は終了しています。
今回のブログは、経過措置V区分、2.5%/2.0%賃上げの意味、実績報告で返還を避ける実務まで解説します。
「介護職員等ベースアップ等支援加算」は、基本給ベースの賃金改善を後押しするために創設された上乗せ加算であり、処遇改善・特定処遇改善に重ねて、賃上げの下支えをしてきました。
2024年6月以降、処遇改善系の加算が新しく『介護職員等処遇改善加算』へ一本化されました。以降、ベースアップ加算としての単独算定は行いません。
厚生労働省の公式リーフレットにも一本化と加算率引上げ、および経過措置(区分V)が明記されています。
R6年度の準備と移行期間を経て、R7からは「本番運用」となりました。
区分I〜IVのどこを狙っていくかを早めに決めると、 配分設計と人材戦略を整え、対応に向けて動いていくことができます。
参考:「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります(厚生労働省)
新加算は以下の3要件で構成されています。
具体の項目数・特例・周知義務などは年度によって差があるため、最新の資料で確認をするようにしましょう。
役割や等級、賃金体系、研修・評価・昇給の仕組みを文書で明確化し、周知・運用することが柱です。
令和6年度は、準備中でも「整備します」と約束していれば問題なく、令和7年度からは実体の整備・運用が前提となります。
加算額の一定割合を基本給や毎月支払う手当へ充当し、前年度ベースアップ相当分の少なくとも3分の2を月額へ移すことが求められます。
一時金の併用は可能ですが、月額中心が原則で、実績で積み上げ(証跡)を示す運用が必要です。
業務の見える化や生産性向上(ICT・業務改善)、定着・働きやすさに資する取組から複数項目を選んで実施します。令和7年度は選択・実施が求められる項目が増えるため、実施記録を残したうえで、社内に周知し、定期的に振り返って改善する運用(PDCA)に落とし込みましょう。配分の考え方として、介護職員に重点配分しつつ、事業所内での柔軟な職種間配分が認められているという部分がポイントです。介護職以外の職種も対象になり得ます。
「一時金偏重→月額へ」の付け替えが必要なケースに要注意です。
就業規則・賃金規程の整合も早めに行うとよいでしょう。
よくある誤解ですが、+2.5%(R6)/+2.0%(R7)は算定要件ではありません。
賃上げ促進税制の活用などと組み合わせて、2か年で実現を「お願い」しているような位置づけです。
さらに、R6年の加算額の一部をR7年に繰越して賃金改善に充当することが可能であり、不足分は賞与等の一時金で追加配分すれば返還不要として取り扱われることがあります。
返還は「最後に不足を埋めれば回避できる」というのが原則です。
期末の一時金を想定し、
月次で積み上げを見える化しましょう。
参考:介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第2版)(厚生労働省)
実績報告で賃金改善額<加算額であれば返還対象となります。
ただし、不足分を一時金で追加配分すれば返還を求めない取り扱いとなります。
R6で積み上げた加算分の一部は、令和7年度に回して翌年度の賃金改善にあてることができます。
繰越分は原則、当該事業所の職員へ一時金で全額配分しなければなりません。
同一法人の一括申請に限り、他事業所の職員を対象にすることができます。
不利益変更に当たる恐れがある場合は合理的な理由に基づいて、適切に労使の合意を得る必要があります。
「どこまで月額、どこから一時金」といった線引きが肝となります。
配分ルールと証跡(議事録・周知など)を残しておくと後がラクです。
試算は「月次の見込み」と「年度見込み」の二段構えとなります。常勤換算の変動も定期的にチェックすると精度が上がります。
※実際の加算率はサービス種別で異なります。詳細は公式資料をご確認ください。
・常勤換算:10.0人/対象賃金総額(当月):3,600,000円
・仮の新加算率:14.5%(例)
・当月加算額(概算)= 3,600,000 × 0.145 = 522,000円
運用のポイント
月額賃金改善要件に沿って、基本給・毎月手当への充当を優先しましょう。
年度末に不足が見えたら、一時金で追加配分して賃金改善額≧加算額を確保してください。
これは誤解です。
+2.5%(令和6年度)/+2.0%(令和7年度)は、算定要件ではなく国が促す賃上げの目標です。新しい処遇改善加算は、令和6・7年度の2か年で加算額の全体が賃金改善に充てられていればよいという整理で、年度をまたいだ前倒し・繰越の運用も認められています(例:R6の一部をR7へ繰越)。
原則として、実績報告で賃金改善額<加算額なら返還対象です。ただし、不足分を賞与などの一時金で追加配分すれば、返還を求めない取扱いが明確に示されています。
ポイントは、改善実施期間のうちに不足を埋める段取りを組み、配分ルールと証跡(稟議・周知・賃金台帳)を残しておくこと。これにより“うっかり不足→返還”を避けられます。
使い続けられません。
区分V(1)〜V(14)は令和6年度内の経過措置(激変緩和)として設けられた期間限定の区分です。令和7年4月以降は、I〜IVの本運用へ完全移行します。
したがって、R6のうちに自事業所の到達可能なI〜IVの着地点を見定め、要件整備(キャリアパス・月額賃金改善・職場環境等)を前倒しで進めることが重要です。
基本は介護職に重点配分ですが、事業所内での柔軟な職種間配分が認められています。
Q&Aでは介護職以外を含む全職種が配分対象になり得ることが明記され、実務上も看護職・相談員・リハ職・ケアマネ・事務職などに配分している事例が多数みられます。
とはいえ、介護職を基本に、経験・技能のある職員へ重点配分という原則は忘れずに。配分の考え方を文書化・周知しておくと、後日の説明もスムーズです。
以下のポイントを把握、対応できているかを確認しておきましょう。
返還は、初の設計次第で避けることができます。
見込み表+配分ルール+証跡の“三点セット”を日々まわしておけば、
年度末に慌てずに済みます。
毎年度、計画書(別紙様式2:補助金・加算計画書一体化様式)を提出し、年度末(または自治体が定める時期)に実績報告書(別紙様式3)を提出します。
提出先や締切は都道府県・市町村(保険者)等の指示に従う運用のため、必ずお住まいの自治体の案内を確認してください。厚労省の公式ページでは、最新年度の様式・記入例・説明動画がまとめられています。
基本は介護職への重点配分ですが、事業所内での柔軟な職種間配分が認められています。
雇用形態ごとの考え方は次のとおりです。
「決まって毎月支払われる手当」とは、労働に直接関係し、個人事情に左右されない手当を指します。月ごとに額が変動しても“毎月支払い”なら含みます(例:職能・資格・役職・地域などの手当名で可)。一方、通勤手当・扶養手当のように個人事情による手当は含みません。
また、時給や日給の引上げは“基本給の引上げ”として扱ってOKです。なお、月額賃金改善要件を満たすための付け替えで、一部の職員の収入が実質的に減るような運用は不可です。
原則、実績報告で「賃金改善額<加算額」となった部分は返還対象です。
ただし、改善実施期間内に賞与等の一時金で不足分を追加配分すれば、返還は求められません。
追加配分の根拠資料(周知・議事録・賃金台帳等)を整え、実績報告に反映してください。
休止・廃止時の繰越分は他事業所の職員に配分できますか?
原則、休止・廃止となる事業所の繰越分は、その当該事業所の職員へ一時金等で配分します。
ただし、同一法人による一括申請の場合に限り、他事業所の職員へ配分することも可能です。
配分方針の文書化と労使合意、支給記録(証跡)を必ず残しておきましょう。
「介護職員等ベースアップ等支援加算」は2024年6月に一本化され、現行は新「介護職員等処遇改善加算」での運用が前提です。2024年度は区分Vの経過措置、2025年4月からI〜IVが本運用となるため、目標区分を早めに定めて要件整備を進めましょう。
+2.5%/+2.0%は“要件ではなく目標であり、介護職を基本にしつつも、多職種へも柔軟に配分することができます。
実績報告では賃金改善額≧加算額を確保し、不足分は一時金の追加配分やR6→R7の繰越で対応可能です。
エンジーがお手伝いできること
制度の“いま”を押さえたうえで、月次の見込み表×配分ルール×証跡を運用に落とす。この基本ができていれば、返還は設計で避けられます。
迷うときは“どの区分をいつ狙うか”から一緒に整理しましょう。
この記事は厚生労働省の公式サイトおよび資料を基に作成しています。
公式サイト
・「福祉・介護職員の処遇改善(総合ページ)」
・「介護職員の処遇改善:TOP・制度概要」
資料
・「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第2版)」(令和7年3月17日)
・「『処遇改善加算』の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)リーフレット」
・「処遇改善に係る加算全体のイメージ/移行資料(新加算V(1)〜V(14)・I〜IV)」
・「介護職員の処遇改善について(資料)」
・「介護保険最新情報 Vol.1353(令和7年2月10日)」
・「介護保険最新情報 Vol.1367(令和7年3月17日)」
最新情報は公式ページでご確認ください。
公開日 2025/09/23
みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。
今回は、令和6年度に行われた「介護職員等処遇改善加算」への一本化について、要件や加算率等、特にこれまでの3種類の加算からの変更点に加え、令和7年度における変更点・要点をポイントごとにわかりやすく解説いたします。
令和6年6月から介護職員の処遇改善に関する加算が「介護職員等処遇改善加算」に変更され、加算率の引き上げが行われました。
具体的には、これまでの
・「介護職員処遇改善加算」
・「介護職員等特定処遇改善加算」
・「介護職員等ベースアップ等支援加算」
上記3つの既存の加算制度が「介護職員等処遇改善加算」に一本化されました。
今回の制度改正により、制度がシンプルになり、加算率も高く設定されるようになったほか、賃金改善の方法も事業所の状況に応じて柔軟に対応できるようになり、賃金改善額の上昇など、職員の処遇改善に向けた取り組みが一層促進されることが期待されます。
介護職員等処遇改善加算は、介護職員の賃金向上や労働環境の改善を目指して導入された制度ですが、全ての介護サービスが加算の対象となるわけではありません。これはこれまでの旧加算と同様の考え方で、サービスの性質や目的に鑑み、具体的には次のサービスが加算算定非対象サービスとされています。
・(介護予防)訪問看護
・(介護予防)訪問リハビリテーション
・(介護予防)福祉用具貸与
・特定(介護予防)福祉用具販売
・(介護予防)居宅療養管理指導
・居宅介護支援
・介護予防支援
そもそも今回の改正が
行われた背景から
考えてみましょう。
以前の記事でも紹介したように、介護業界は深刻な人材不足に直面しています。
現場におられる方は嫌というほど体感しておられるかと思いますが、高齢化が進み介護需要は増加の一途をたどる一方で、新たな労働力の確保が困難となっているのが現状です。
また、介護職員の離職率は他業種に比べて高く、継続的な職員の確保が課題となっています。
このようなことから、介護職員の処遇改善と職場環境の向上が急務とされてきました。
そのような背景の中で、介護職員等処遇改善加算の一本化によって、介護職員の賃金向上を図ることが一つ大きな目的になっています。
賃金の向上は、職員のモチベーション向上にも寄与し、結果的にサービスの質の向上にも繋がることが期待されています。
さらに、労働環境の改善を図ることで、職員が長期的に業界で働きたいと思える環境、働き続けられる環境を整えることもこの改正の重要な目的になっていると言えます。
新加算では、旧加算に比べ、より広範な職員を対象としており、給与の改善だけでなく、キャリア支援など柔軟な配分が可能になった点が大きな特徴です。
詳しくは以下の2点が主な違いとして挙げられます。
①加算の対象職種の拡充
②目的の拡充
新加算は旧加算の各区分の要件と加算率を組み合わせた上で、Ⅰ~Ⅳの4区分に再編されました。
旧加算では、3つの加算ごとに段階が設けられていたため、組み合わせが全部で18通りありました。
一方で、新加算は4通りしかないため、場合によっては新加算における加算率が旧加算での加算率を下回る可能性があるため、令和6年度の激変緩和措置(経過措置)が設けられていました。
区分Ⅴはあくまで「経過措置」として設けられていたもので、2025年3月31日をもって完全に終了します。そのため、2025年4月以降はⅠ~Ⅳのみでの運用となります。
すでに経過措置の期限(2025年3月末)が過ぎているため、本来であれば各事業所は新区分(Ⅰ~Ⅳ)に移行済みであるべきなのですが、実際には移行準備が遅れている施設や事業所もあるのが現状です。
ですので「どの区分に移行するのか」を早急に決めて、必要な書類整備や体制づくりのスケジュールを組み、早めに対応しましょう。移行にあたっては、キャリアパス要件や賃金改善計画の整備などが必要となるため、「いつまでに何を準備するか」スケジュールを具体的に設計しておくことが重要です。
厚生労働省は処遇改善に関して、2024年度に+2.5%、2025年度に+2.0%の賃金ベースアップ目標を示しています。これは「加算の算定要件」そのものではありませんが、政府が処遇改善に求める水準を示した目安と理解するとよいでしょう。
また、2024年度から2025年度にかけての2年間を通して必要な賃金改善原資を充当できる仕組みも明確化されています。つまり、単年度だけでなく複数年度を見据えた運用が可能であり、中長期的な人材確保戦略と合わせて賃金改善計画を立てることが求められます。
厚生労働省:介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第2版)
2025年度からは、事業所の負担を軽減するために一部の要件に弾力的な運用、つまり≪実情に応じた緩和措置≫が認められています。主なポイントは以下の通りです。
これらの弾力化は、「要件を満たすために形式だけの制度を作る」のではなく、事業所の実情に合わせた現実的な対応を可能にする狙いがあります。うまく活用することで、必要以上に形式に縛られずに処遇改善に取り組むことができます。
厚生労働省:「処遇改善加算がさらに取得しやすくなります!」pdf
区分Ⅲ以上を狙う方が、
中長期的に原資・採用力で優位です。
キャリアパスの誓約を使って、
要件のハードルを今期中に越えておきましょう。
では、実際にどの区分を目指すべきなのでしょうか。
「自社の現在地」を把握するため、厚生労働省が提供している「介護職員の改善処遇:移行ガイド」を活用してみましょう。
①自動試算
上記の「移行ガイド」に、サービス名と現行の加算区分を入れるだけで、推奨の移行パターン(①推奨/②次善)と満たすべき要件の一覧を確認することができます。
今年必要な誓約・猶予の可否も明記されているので、これらを活用して、目的の加算を取得するための最短ルートを策定してみましょう。
②到達区分を”Ⅱ以上”に設定
Ⅰ~Ⅳのうち、Ⅱ以上で配分設計の自由度と原資を確保しましょう。
要件は誓約で先行充足できるので、「計画書で宣言」、「社内規定整備・運用」を年度内に達成することができるよう、タイムスケジュールを意識して行動することが重要です。
③人事・賃金ドキュメントの棚卸し
任用基準/研修計画/昇給基準(キャリアパスⅠ~Ⅲ)と、年額440万円の扱い(Ⅳ)、介護福祉士配置(Ⅴ)を「現状→誓約→整備→運用」の順に棚卸ししてみましょう。
この時、「見える化」要件(職場環境等の情報公表)も計画に組み込むようにしてください。
判断に迷ったら、推奨パターンの要件にマークを付けて、
誓約で埋める→期中に証跡を積む、の順で、
スケジュールを前倒しする形で管理してみましょう。
監査にも強い進め方です。
| 加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | 加算Ⅳ | |
| 訪問介護 | 24.5% | 22.4% | 18.2% | 14.5% |
| 訪問入浴介護 | 10.0% | 9.4% | 7.9% | 6.3% |
| 通所介護 | 9.2% | 9.0% | 8.0% | 6.4% |
| 介護老人福祉施設(特養) | 14.0% | 13.6% | 11.3% | 9.0% |
| 介護老人福祉施設(老健) | 7.5% | 7.1% | 5.4% | 4.4% |
※処遇改善加算額=総単位数×サービス別「加算率」
※「総単位数」=基本サービス費+他加算減算(処遇改善加算を除く)の1か月合計
厚生労働省:
・介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和7年度分)
・「『処遇改善加算』の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引きあがります」pdf
※ほか、特定施設・通所リハ・小多機・認知症GH・介護医療院などの一覧は上記pdf「参考3」を参照。
加算率だけでなく、
「月額配分の下限(加算Ⅳの1/2以上を月額で)」
がボトルネックになりがち。
設計段階で必ず反映しましょう。
申請については、介護職員等処遇改善加算を算定する月の前々月の末日までに行うことが必要です。
令和7年度の申請方法。申請様式については、すべて厚生労働省の公式ページにて、Excel形式の様式が配布されており(記入例つき)、記入方法についての説明動画も展開されています。
厚生労働省:介護職員の処遇改善:加算の申請方法・申請様式
処遇改善加算の届出時に用意する必要のある書類です。
こちらは、これまでは加算区分の変更がなければ体制届の提出は不要でしたが、新加算を取得する場合は、全事業所が提出する必要があります。
旧3加算を取得している事業所であっても提出する必要がありますので、注意してください。
体制等状況一覧表と同様に、処遇改善加算の届出時に提出する必要があります。
今年は事務負担軽減の観点から、旧加算と新加算でひとつの様式にまとめられています。
新加算の提出期限は原則2月末までとなります(ただし、年によっては4月15日になったりすることもあり、毎年発表されます)。
年度最後の加算の支払いがあった月の翌々月末日までに提出する必要があります。
例えば3月請求分の加算の支払いを受けるタイミングが5月の場合は、7月31日が期限となります。
実績報告書作成のポイントについては、弊社の記事でも紹介しておりますので、こちらの記事を参照ください。
実績報告書についても処遇改善計画書と同様、旧加算と新加算がひとつの様式にまとめられています。
新加算を配分する際に気を付けるべきこととして、基本的には①加算の算定額以上の賃金改善をする、②加算の前年度からの増加分以上の賃金改善をする、③加算以外の部分で賃金を引き下げない、の大きく3つがあります。
①加算の算定額以上の賃金改善をする
令和7年度への繰越額を除く、処遇改善関連の加算の算定額以上の賃金改善が必要です。
②加算の前年度からの増加分以上の賃金改善をする
令和5年度と比較して増加した加算の額以上の新たな賃金改善が必要となります。ベースアップ(基本給または決まって毎月支払われる手当の一律引き上げ)が基本とされていますが、難しければ他の手当や一定の要件で、ボーナスと組み合わせて実施しても問題ありません。
③加算以外の部分で賃金を引き下げない
処遇改善加算は、あくまでも賃上げを行うことを目的としたものであり、現在の賃金を下げて、その差分に処遇改善加算を充てるということは制度趣旨にも反し、認められません。
上記①~③を全て満たすことが必要となり、もし満たせない場合には、行政処分となることもあり得ますので、この点は気を付ける必要があります。
新処遇改善加算では職種による配分ルールが廃止され、「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある介護職員に重点的に配分することとしつつ、事業所内での柔軟な配分を認める」とされています。これにより、介護職員以外への配分も可能になったと言えます。
ただ、柔軟な配分は認められていますが、職務内容や勤務実態に見合わない著しく偏った配分は望ましくありません。
例えば、一部の職員に加算を原資とする賃金改善を集中させるといったことや、同一法人内の一部の事業所だけに賃金改善を集中させるといったことなどは望ましくないとされていますので、注意してください。
今回の改正はこれまでの制度の
ねらいをより前に推し進める
ための措置と言えますね。
新加算の算定要件は、大きく分けて
①キャリアパス要件
②月額賃金改善要件
③職場環境等要件
の3つがあります。
算定する処遇改善加算の区分により要件が異なり、加算率の高い区分になるほど、要件も増えていきます。
月額賃金改善要件は新加算の全ての区分において満たしている必要があります。
月額賃金改善要件Ⅰは令和7年度から適用になりました。
新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を、月給(基本給または決まって毎月支払われる手当)の改善に充てることとされています。
処遇改善計画書に必要事項を記入することで、実際の金額が自動で算出されます。
※旧加算における賃金改善の多くを一時金で行っている場合は、一時金の一部を基本給・毎月の手当に付け替える対応が必要になる場合があります。その場合であっても、賃金総額は一定のままでも問題ありません。
これまでのベースアップ等支援加算(旧ベア加算)の流れを汲む要件になります。これまでの旧ベア加算が未算定の場合のみ適用されるものです。
「新加算に含まれている旧ベア加算相当の増加額」の3分の2以上を、新たな月給の引上げに使う必要があるというものです。
旧ベア加算を取得し月給引き上げを行ってきた事業所との公平性の観点から措置されているものになります。
介護職員について、職位、職責、職務内容などに応じた任用などの要件を定め、それらに応じた賃金体系を整備することとされています。
なお、キャリアパス要件Ⅰ~Ⅲについては、根拠規程を書面で整備した上で、全ての介護職員に周知することが必要です。
介護職員の資質向上の目標と以下a、bのいずれかに関する具体的な計画を策定し、計画に関する研修の実施または研修の機会を確保することが必要です。
a 研修機会の提供または技術指導などの実施、介護職員の能力評価
b 資格取得のための支援(勤務シフトの調整、休暇の付与、費用の援助など)
介護職員について、以下a~cのいずれかの仕組みを整備することが必要です。昇給に関する仕組みづくりを促すことがねらいです。
a 経験に応じて昇給する仕組み
b 資格などに応じて昇給する仕組み
c 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上であることが必要です。
※小規模事業所などで加算額全体が少額である場合や、職員全体の賃金水準が低く1人の賃金を引き上げることが困難な場合などは適用が免除されます。
経験・技能のある介護職員の定義
-「介護福祉士の資格を持ち、所属する法人等における勤続年数10年以上の介護職員」が基本とされていますが、他の法人における経験や、職員の担当業務や技能などを踏まえて各事業者の裁量で設定することができるとされています。
サービス類型ごとに一定以上の介護福祉士等を配置していることとされています。
具体的には、新加算等を算定する事業所又は併設する本体事業所においてサービス類型ごとに別紙1表4に掲げるサービス提供体制強化加算、特定事業所加算、入居継続支援加算又は日常生活継続支援加算の各区分を算定している必要があります。
新加算Ⅰ・ⅡとⅢ・Ⅳで要件が異なります。
なお、それぞれに令和6年度の経過措置が設けられています。
・新加算Ⅰ・Ⅱの要件
6つの区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)取り組むこと。
情報公表システム等で実施した取組の内容について具体的に公表すること。
・新加算Ⅲ・Ⅳの要件
6の区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組むこと。
多くの要件がありますが、
目指す加算区分には何が必要なのか
整理するようにしましょう。
「最終月に3か月分まとめて精算」といったようなケースも、
Q&Aで明記するようにしましょう。
早めのシュミレーションで、運用月のズレを未然に防ぎましょう。
新加算Ⅰ~Ⅳを取得するために達成する必要のある各要件との対応は次のようになっています。
下記表の加算率は、訪問介護事業を例として記載しています。

(出典:厚生労働省 介護職員等処遇改善加算の全体像)
2025年6月以降は前々月末が原則です。(4・5月算定分は4/15までの特例)
キャリアパスⅠ~Ⅲ、ならびに職場環境等要件はR7年度中の対応誓約で可能です。
賃上げが困難で合理的説明はあれば免除可能です。
計画書で根拠と方針を明確に示すことができるようにしましょう。
厚生労働省:「『処遇改善加算』の制度が一本化(介護職員等改善加算)され、加算率が引きあがります」pdf よりご確認ください。
不足分を一時金で追加配分すれば、返還を求めない扱いも可能としています。
厚生労働省:介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第2版)(令和7年3月17日)
新たな介護職員等処遇改善加算は、従来の加算に比べて介護職員だけでなく多職種の処遇改善を目指しており、より幅広い職員に対する処遇の改善が可能になりました。
また、キャリアアップ支援や職場環境の改善といった取り組みが重視され、職場全体の質の向上も図られ、職員のモチベーション向上や離職率の低下に繋がり、結果として一層の人材確保が目指されています。
加算申請には、各種届出を正確に行っていく必要があります。
加算の趣旨を理解し、職員の処遇改善やキャリアアップ支援に積極的に取り組まれている事業所の皆さんの支えとなるよう、弊社もお手伝いしてまいります。
処遇改善加算も活用しながら
よりよい職場環境をつくり
職員定着に繋げていきましょう。
(参考資料)
この記事は厚生労働省の公式サイト、資料を参照し作成しています。
公式サイト:
介護職員の処遇改善:TOP・制度概要/
介護職員の処遇改善:移行ガイド/
介護職員の処遇改善:加算の申請方法・申請様式
資料:
処遇改善加算がさらに取得しやすくなります!/
介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和7年度分)/
令和7年度の介護職員等処遇改善加算の取得に係る処遇改善計画書の提出期限について/
「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります/
介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第2版)(令和7年3月 17 日)
公開日 2025/07/24
みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。
介護・福祉施設の運営・経営をしていると「36協定の届出を出さなければいけないけど…」「そもそも36協定ってどんな内容だっけ?」「残業の上限規制はどうなっているんだっけ?」といった疑問が生まれることがあると思います。
36協定について一度は耳にしたことがあっても、実際にどのような内容なのか理解していない人が多いのではないでしょうか。
今回のブログでは、そんな36協定への疑問を解決するガイドとなりますので、ぜひ最後までご覧ください。
36協定は「サブロク協定」と読み、労働基準法で定められた法定労働時間「1日8時間、週40時間」を超えて従業員に残業(時間外労働)や休日労働をさせる場合に、使用者と従業員の間で締結する協定のことです。
正式名称は「時間外・休日労働に関する協定」で、労働基準法第36条に規定されていることから、一般的に36協定(サブロク協定)と呼ばれています。
36 協定を締結 + 所轄労基署へ届出しない限り、法定労働時間(1 日8 h/週40 h)を超える残業や法定休日出勤は一切させてはいけません。また、協定を作成していても届出より前の残業・休日労働は違法となります。
上記のように、36協定の控えの提示を求められた際に発覚することもあります。
「あとから出せばセーフ?」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、これは間違い。届出日以前の残業は全て違法となりますので、きちんと届出ることが必要です。
労働基準監督署から行政指導のリスクもあります。悪質・再犯・虚偽報告の場合は過去に書類送検されるケースも。
きちんとルールに則って経営・運営していくためにも、しっかりポイントを押さえておきましょう!
先ほどもご説明いたしましたが、労働基準法第36条に規定されています。協定を締結し、労基署へ届け出て、初めて時間外・休日労働が合法になります。
原則として月45h・年360hが上限となります。
特別条項を付けた場合でも、年720h・複数月平均80h(単月100h)が絶対上限です。
36協定における労働者代表は、労働者の過半数を代表する者のことです。この代表は労働者の意見を会社に伝える重要な役割を担うのですが、「投票または挙手」で公正に選ぶ必要があり、管理監督者や会社の意向で選ばれた者は労働者代表にはなれません。
夜勤も法定労働時間を超える部分は36協定の対象となります。勤務間インターバルが11h未満だと違法残業リスクありと判断されますので、注意が必要です。
介護業界では《夜勤明け+日勤入り》の連続勤務が多くなりやすいので、上限時間よりインターバル確保の指導が増えています。
1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて残業を命じる場合は、36協定の届出が必要になります。
ここで注意するべきポイントは「法定労働時間」と「所定労働時間」です。
所定労働時間とは、会社が就業規則などで取り決めている労働時間のことです。
たとえば「9時出社 休憩1h 17時退勤」と会社で定めた労働時間だった場合、所定労働時間は7時間となります。18時まで残業した場合は1時間残業したことになりますが、7時間+1時間=8時間ですので、法定労働時間「1日8時間」を超えないことになります。
この場合は、36協定を結ぶ必要はありません。
法定休日とは、労働基準法第35条で定められた労働者に必ず提供しなければならない休日のことです。
1週間に最低でも1回、もしくは4週間を通して4回以上の休日を設ける必要があると定められていますので、法定休日に労働を命じる場合も36協定の締結は必須です。
厚生労働省の最新様式は「一般条項=様式第9号」「特別条項=様式第9号の2」となります。
押印欄が削除され、法人番号欄と労働者代表署名欄が明確化されました。Word/PDF は厚労省サイトで取得できます。
電子申請なら「本社一括」扱いができるようになり、グループ施設を持つ法人様は提出工数を劇的に削減できます。
ただし36協定届を協定書として兼ねる場合、労働者代表の署名欄は PDFを印刷して「署名または記名押印」する必要があります。オンラインで提出する場合は、再度スキャンしてデータ化する手間がありますので、スケジュールに余裕を持っておきましょう!
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 時間外労働の限度 | 1日2h/月35h/年360h |
| 休日労働 | 月1回・年6回以内 |
| 協定期間 | 2025/4/1~2026/3/31 (基本的に期間は1年間) |
小規模事業所の残業は『送迎の際に予定より時間がかかった』など突発要因が中心です。上限を月35hとやや低めに設定すると、翌年度に是正勧告を受けにくくなります。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 限度時間超えの延長 | 年720h 以内 |
| 休日労働 | 100h |
| 協定期間 | 80h以内 |
| 特別条項発動要件 | 「利用者急変・看取り」、「感染症拡大による欠員」ほか3項目 |
特別条項を入れる場合、「発動要件」を介護現場の具体語で書くのがポイント。
『繁忙期』だけだと監督署ヒアリングで突っ込まれますので、気をつけましょう。
厚生労働省で公開されている記載例も参考にご案内いたします。
》厚生労働省|「36協定届(一般条項・特別条項)記載例」(PDF)
| ミス内容 | 指摘内容 | 防止策 |
|---|---|---|
| 労働者代表が管理職 | 代表要件違反 | 勤務区分が“管理監督者以外”か確認 |
| 特別条項なしで月60h残業 | 上限超過 | 特別条項を付ける、もしくは残業抑制 |
| 夜勤明けの休憩の扱い | 夜勤明けを休憩扱いしてしまっている | 勤務間のインターバルを確保 |
| 掲示・周知なし | 労基法106条違反 | 食堂や共有PCにPDF掲示 |
夜勤明けを“休憩”に入れてしまう誤記は 年間200件超 の是正事例がある典型ミス。就業規則と賃金台帳、36協定が“同じ言葉”で書かれているか、必ず照らし合わせましょう。
法律上の上限はありません。ただし毎年の見直しを推奨していますので、年に一度時期を決めて確認するようにしましょう。介護報酬改定やシフト変更に合わせて更新することも必要です。
電子は即日〜3日、紙は1週間前後が目安となります。急ぎの場合は、e‑Gov一択で考えていいでしょう。
電子申請については、以下厚生労働省の公式サイトをご確認ください。
》厚生労働省|労働基準法等の規定に基づく届出等の電子申請について
「夜勤 16h → 9h休息 → 早番」がよく問題視されます。インターバル不足は是正指導の対象となる可能性もあります。
令和8年4月の新年度開始を見据え、介護事業所で36協定を更新・新規締結するなら、労使協議→協定書締結→労基署届出 の3ステップを「協定発効日の30日前」から逆算し、代表者選出議事録も同時に準備することで、手戻りなく完了できます。
さらに、代表者が管理職だった/押印欄の記名漏れ/特別条項の上限値誤記といった《返戻の定番ポイント》を事前に潰しておくことが、是正勧告や残業代遡及を防ぐ最短ルートです。
36協定は毎年必ず提出しなくてはならない届出です。労使間で合意した有効期間の開始日までに必ず36協定届を提出するように準備をしていきましょう。
社会保険労務士法人エンジーでも、介護福祉に強みを持つ専門家として、皆様を全力でサポートしていきます。様々な課題や具体的な対策について、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
この記事は厚生労働省の情報を基に作成しています。最新情報は公式ページでご確認ください。
公開日 2025/07/19
最終更新日 2025/07/24
みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。
前回のブログ記事でも解説した令和7年10月から本格開始となる「就労選択支援」を、愛知県でスムーズに立ち上げたい事業者さま向けに、指定申請の流れ・つまずきやすいポイント・最新基準をまとめました。
社会労務士法人エンジーでは「無料相談」もご用意していますので、ぜひ最後までご覧ください。
就労選択支援は、障害者総合支援法の改正で新設された短期集中アセスメント型サービスです。
従来は、働く力と意欲のある障害のある方が「移行支援」「継続支援」「一般就労」のいずれかを選択し、そのまま利用開始する仕組みでしたが、実際には「自分に合わないサービスを選んでしまい、すぐに辞めてしまう」というミスマッチが多く発生してしまっていました。
そういったミスマッチをなくすために、利用前に本人の希望・適性・能力を可視化し、最適な進路を選べるようにと新たに設けられたのが「就労選択支援制度」であり、利用者が自分に最適な働き方や今後の支援形態(就労移行・A型・B型など)を選べるよう、最大1年間の個別支援を行います。
制度は令和7(2025)年10月1日開始が予定されており、以降に新規で B型を利用する場合は原則として就労選択支援を経由する流れになります。
B型を直接利用できなくなる点に現場がまだ追いついていません。競合がまだ少ない今のタイミングでは開設が1〜2期先行するだけで、利用定員の充足や補助金の採択率などでキャッシュフローが有利になります。
就労選択支援制度について解説しているブログ記事も以下の通り書かせていただいていますので、こちらも合わせてご覧ください。
》【2025年10月施行】就労選択支援制度とは?目的や他の制度との違いを介護福祉専門社労士が詳細に解説!
愛知県で就労選択支援事業を始めるなら、まさに今が“先取り”のタイミングです。利用を希望する方が増えている一方で、受け皿となる事業所はまだ少なめ。県も新規参入を後押しする補助制度を用意してくれています。ここでは、早めに動くことで得られるメリットと、愛知県ならではの手続き上の注意点を整理してご紹介します。
愛知県は製造業が盛んで障害者雇用が活発化しています。
就労移行・ B 型の定員不足が続いており、選択支援を経由することで利用者の「職場定着率アップ」が期待されています。さらに県は 2025年度より、支援実績に応じた独自加算(予定) を検討しており、早期参入ほど財政インセンティブを受け取れる可能性があります。
愛知県では、①図面相談 → ② 指定申請書受付というシンプルな2段階制を採用しています。図面相談を事前にクリアしないと申請書そのものを受理してもらえない仕組みで、ここが最大の《関門》です。
愛知県は“図面相談さえ通過すれば、翌月1日付指定も狙える” スピード感が特徴ですが、そのぶん、図面相談での指摘や返戻は少なくありません。
面積計算や用途表示にミスがあるとスケジュールが1か月ずれ込むので、相談締切(希望指定日の約3か月前)から逆算した準備が鍵となります。
| ステップ | 概要 | 目安時期 (指定希望日から逆算) |
|---|---|---|
| 1 | 図面相談(事前審査) | 〜3か月 |
| 2 | 人員・設備基準の確認 | 〜2か月 |
| 3 | 収支確認(A 型のみ) | 〜1か月半 |
| 4 | 指定申請書提出(郵送) | 〜1か月 |
| 5 | 現地確認・指定通知 | 〜半月 |
県は「希望日の前月1日必着」を目安に審査を組んでいます。ゴールから逆算し、図面相談は3 か月前には終えておきましょう。
次に、運営基準について順番に見ていきましょう。
(愛知県公式サイトの情報を基に作成しています。最新情報は公式ページでご確認ください。)
10名
愛知県では、事業者が《地域から期待される役割を果たすことが重要である》との観点から、指定に当たり、原則協議会または市町村による評価内容の提出を求めています。ただし、既に協議会に参画している事業者については、評価を必須としないこととされています。
就労選択支援員養成研修を修了した者
令和9年度末までは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 JEED等が実施する基礎的研修、または以下に掲げる「基礎的研修と同等以上の研修」修了者を就労選択支援員とみなすこととなっています。
基礎的研修と同等以上の研修
それぞれの設備にも基準が設けられていますので、以下の表を参考にチェックください。 詳しい内容は愛知県から公開されております「図面相談マニュアル(PDF)」をご確認ください。
| 事務室※ | □事業の運営を行うために必要な面積を有するか。 □他の部屋に行く際に事務室を通る動線となっている場合、パーテーションやカーテン等の目隠しが設置されているか。 |
|---|---|
| 訓練・作業室 | □内寸で定員×2㎡以上の広さを有するか。 □複数の訓練・作業室を設ける場合、訓練・作業室①、訓練・作業室②のように番号を付しているか。 □一体的に運営する就労実績がある事業所とは別に、専用の訓練・作業室を確保しているか(図面上に明示すること)。 |
| 多目的室 | □内寸で定員×2㎡以上の広さを有するか。 □複数の多目的室を設ける場合、多目的室①、多目的室②のように番号を付しているか。 □就労選択支援の場合、多目的室全部を相談室と兼ねてもよい(以下の平面図例参照)。 |
| 相談室※ | □多目的室と兼ねる場合、室内における談話の漏洩を防ぐため、パーテーション等が設けられているか。 □事業所専用の相談室が設置されているか。訪問系・相談系のサービスを同一建物内で実施する場合、それぞれ相談室を確保しているか(図面上に明示すること)。 □相談に対応するための適切なスペース(机と4人分の椅子が設置できる広さ)を有するか。 |
| 洗面所※ | □利用者の特性に応じたものであるか。 □トイレ使用中に利用者が使えない構造となっていないか。 |
| 便所※ | □利用者の特性に応じたものであるか。 |
※同一事業所において一体的に運営している就労実績のある他のサービスとのみ、兼用しても差し支えありません。
| 設備要件 | 相談室(個室可)、作業訓練室、多目的室、休憩スペース |
|---|---|
| 経費補助 | 対象設備を導入した場合、障害者就労施設等整備費補助金(国 1/2・県 1/4)を活用可能。2025 年度は 4 月に公募開始が見込まれています。 |
研修の受講証は「写し(コピー)」ではなく「原本スキャン(データ)」を求められるケースが増えています。二度手間にならないように、添付前に確認しておきましょう!
▼厚生労働省 公開様式ダウンロードはこちら 》就労選択支援 指定申請様式
※愛知県独自の書式と混同しないようご注意ください。
毎月ですが、図面相談が通過していること が前提となります。愛知県は月初2営業日までに申請書が到着していれば、同月1日付で指定が可能です。
愛知県社会福祉協議会・名古屋市総合リハビリテーションセンターなどが年3〜4回開催しています。早めに枠が埋まるため、開設予定日の半年前には申込をしておくのがいいでしょう。
可能ですが、活動区分ごとの面積 を明確に分け、動線上の交差がないよう図面上で示す必要があります。
令和7年10月の制度施行を見据え、愛知県で就労選択支援を開設するなら 図面相談→申請書受付 の2段階審査を軸に逆算スケジュールを立てることで、スムーズに進めることができます。
また、図面PDFは14MB以内など県独自の提出ルールがあります。面積計算や雇用契約書の添付漏れといった《返戻の定番ポイント》をあらかじめ潰しておき、一次審査で完結させることが、開設月遅延を防ぐ最短ルートです。
さらに「障害者就労施設等整備費補助金」など複数の補助金・助成金を組み合わせれば、内装・設備費を最大3分の1まで圧縮できる可能性があります。
制度の立ち上げ期で競合が少ない今こそ、資金と書類の準備を同時並行で進め、先行者メリットを確実に獲得しましょう。
社会保険労務士法人エンジーでも、介護福祉に強みを持つ専門家として、皆様を全力でサポートしていきます。様々な課題や具体的な対策について、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
この記事は厚生労働省通知および愛知県公式サイトの情報を基に作成しています。最新情報は公式ページでご確認ください。
公開日 2025/06/30
最終更新日 2025/07/24
みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。
2025年10月から「就労選択支援」という新たな就労支援サービスが始まろうとしています。この記事では「就労選択支援」の具体的なサービス内容や、ほかの就労支援サービスとの違いを詳しく解説します。
》【2025年版】愛知県の就労選択支援 指定申請ガイドの記事も合わせてご覧ください。
厚生労働省の発表では、2022年12月時点で障害福祉サービスの利用者数が約99万人に迫り、ここ数年で顕著な増加傾向を示しています。
従来は、働く力と意欲のある障害のある方が「移行支援」「継続支援」「一般就労」のいずれかを選択し、そのまま利用開始する仕組みでしたが、実際には「自分に合わないサービスを選んでしまい、すぐに辞めてしまう」というミスマッチが多く発生してしまっていました。
そういったミスマッチをなくすために、利用前に本人の希望・適性・能力を可視化し、最適な進路を選べるようにと新たに設けられたのが「就労選択支援制度」です。
2025年10月から始まる「就労選択支援制度」は、2022年10月に「障害者総合支援法」という法律の改正が成立されたことによって新設された支援制度で、障がいのある方が「自分に合った働き方を、一度お試し・点検してから選べるようにする短期サービス」と捉えていただくとわかりやすいかと思います。
障がいのあるご本人の希望や適性・能力に合った就職先や就労支援サービスが選べるよう、支援者が「アセスメント」と呼ばれる利用者の特徴やニーズ把握を行いサポートするのが目的で作られた制度であり、障害者総合支援法に基づいて定められています。
なお就労選択支援は、あくまで障がいのある人の自己決定をサポートする制度であり、就職先や利用する障害福祉サービスの振り分けを行うものではありません。
就労選択支援の特徴は
という三本柱にあります。
就労選択支援は、障がいを持つ方の就労をサポートするサービスですが、利用者が「主体的」に就労先を選択できるような支援をすることが最大の目的です。
就労選択支援は、原則18歳以上で、就労移行支援・就労継続支援の利用を新たに希望する方だけでなく、既に利用中の方も対象者に含まれます。特別支援学校の高等部生など、卒業後の進路を模索する若年層も利用できます。
特に、就労継続支援A型やB型に関しては、一度利用が始まってしまうとなかなか環境や状況を変えることが難しいため、障がいを持つ方が自分に合う働き方を見つけるために、今後、就労選択支援が重要な役割を担うことになります。
利用期間は、原則1か月です。ただし、適性の把握などで作業体験を継続的に行う必要がある場合は、2か月に延長されます。
障害福祉の就労支援には、今回新たにスタートする「就労選択支援」以外にもいくつかの種類があります。 まず就労選択支援で適性を見極めてから、その後に選択ができる支援ですので各サービスの違いを順番に確認していきましょう。
就労継続支援(A型・B型)は、 “働く場そのもの” を提供し、利用者に「働き続ける経験」を積んでもらうことが目的の支援です。A型は原則として18歳から65歳未満の人を対象としており、雇用契約を結び最低賃金を保証します。B型は基本的に年齢制限はなく、雇用契約を結ばず工賃を受け取りながら働くこととなります。
一方、就労選択支援は、就労選択支援は契約を伴わない短期実習を通じて、「どの現場が合うかを測る前段階」に特化する点が大きく異なります。
就労移行支援は「一般就労への就職決定」がゴールとなります。18歳〜65歳未満の人を原則対象としており、ビジネスマナー、履歴書作成、面接練習、職場実習、就活同行などを最大2年間で包括的に行います。
一方、就労選択支援は「移行支援に進むか、それとも別ルートにするか」を判断することができる準備・見極めフェーズとなります。
就労定着支援は、企業訪問・本人面談・助言で離職リスクを下げることが目的です。就業時間や人間関係の調整など環境面をサポートし、一般就労が決まって7か月目から最大3年6か月、働き続けるための“出口フォロー”のような支援です。
就労選択支援は就職前の選択フェーズなので就職・長期サービス利用の前に行う“入口チェック”のサービスといえます。入口と出口で役割がはっきり分かれていると覚えておきましょう。
就労選択支援で「この会社なら続く」という筋道を立てる
↓
就労移行/継続支援でスキルを磨き就職
↓
就労定着支援で新しい職場での長期定着を後押し
それぞれの役割をしっかり把握し、利用者一人ひとりの希望や適性に合わせて適切に組み合わせていくことで「ミスマッチのない進路決定 → 十分なスキル習得 → 安定した職場定着」という好循環を生み出すことができます。
就労選択支援は以下のような各地域の就労系障害福祉サービス事業所などの、就労支援機関で利用することが可能です。
ちなみに、就労選択支援の実施主体機関となる要件として以下の条件が定められています。
この条件を満たした就労支援機関のみが、就労選択支援を実施することができます。
就労継続支援や就労移行支援などのサービスを利用している方や、働く意思があり就労支援を検討している障がいを持つ方を対象とした「就労選択支援」ですが、具体的にどのような流れでサービスを受けられるのか?解説いたします。
まず利用者ご本人またはご家族が、お住まいの(住民票のある)市町村窓口か計画相談支援事業所へ相談し、意向を確認します。サービスコード「自立訓練(就労選択)」で受給者証を申請します。越境利用も認められていますが、支給決定はあくまで居住地の自治体が行います。
事業所内の作業体験や企業実習、職業興味検査などを組み合わせ、利用者の強み・課題を多角的に評価します。支援員は観察記録を蓄積し、客観性を高めるのがポイントです。
ハローワークや学校、医療機関などと連携したケース会議でアセスメント結果を共有し、個別の就労選択プランを作成します。ここで次に進むサービスがほぼ確定します。
計画に基づき、1日あたり1,210単位(2025年10月告示時点)の報酬でサービスを提供。終了時に評価書を作成し、移行支援・継続支援A/B型・一般就労などの次のステップへバトンタッチとなります。
就労選択支援では、障がいを持つ方ご本人の就労能力や適性、希望を考慮し整理した内容を企業や就労継続支援事業所などの機関と連携することで、適正な就労先を選択することが可能となります。
就労選択支援の利用によってご本人と決定した就労先に就いたあとも、希望に応じていつでも就労選択支援が利用できます。そうすることによって、就労後本人の希望や状況が変わった場合も、変化に応じた選択ができるのです。
基本報酬は 1日あたり1,210単位です。
ただし、就労選択支援を終えた利用者の8割超を同一法人が運営する就労移行支援・就労継続支援へ誘導した場合、200単位の減算が適用されます。処遇改善加算や特定加算は、ほかの自立訓練系サービスと同じく上乗せ可能です。
導入前には必ず収支シミュレーションを実施し、減算リスクを織り込んだ運営計画を立てておきましょう。
また、就労継続支援 A 型・B 型の事業所は 過去3年間に3名以上の就労実績 があれば、就労選択支援を一体的に提供できます。ただし、利用者の囲い込みを防ぐために中立性を担保するルールが複数設けられています。
たとえば、アセスメント結果をまとめる際には関係機関を交えたケース会議を開催し、議事録を整備することが必須です(会議を実施しないと報酬請求は認められません)。これらの要件を満たす体制づくりを早めに進めることが重要です。
特定事業所集中減算(8割超誘導で▲200単位)は見落としがちです。自法人で複数サービスを運営する場合、計画段階から“誘導割合”を定期的にモニタリングしましょう。
本制度を活用すると、障がいのある方ご本人の「やってみたい」「こう働きたい」という思いを尊重しつつ、特性に基づく得意分野と課題を可視化できます。そのうえで最適な支援メニューを選べるため、本人が思い描くキャリアの実現可能性が大きく広がります。
ミスマッチによる短期離職や「また振り出しに戻る」事態を防止することができるだけでなく、短期間の作業体験で自信や成功体験を積めるため、モチベーションが維持しやすいところもメリットの一つと言えるでしょう。
もちろんこの制度は、企業サイドのメリットもあります。
ミスマッチによる離職が減る、つまり“適材適所”の配置が促進され、スタッフ負担や教育コストを削減できるほか、計画外離脱の減少で報酬減算リスクも低減することができます。
また、法定雇用率の達成圧力が強まるなか、少子化による人材不足を補う選択肢として障がい者雇用の重要性は高まっています。障がい者の採用経験が浅い企業でも、就労系福祉サービス事業所と連携すれば、採用の立ち上げから職場定着までをスムーズに進められる有効なルートとなるでしょう。
利用者だけでなく事業者としても、「ミスマッチの低減」は目指すべき姿です。社会全体が希望を持てる未来へ進んでいきましょう。
延長できるのは1回のみで最長2か月。日中活動サービスとの同日併給は原則不可です。また、前述の特定事業所集中減算にも留意しましょう。
選択支援員は所定の養成研修を修了している必要があります。研修枠が限られる自治体もあるため、早めの受講計画が不可欠です。受給者証の支給決定期間は、連続利用を想定して余裕を持たせて申請するとスムーズに移行できます。
2就労選択支援は、障害のある方が自分に合った働き方を短期で試し、確かめるための新制度です。経営者や事業者にとっては、ミスマッチを防ぎながら定着率を上げる絶好のチャンスでもあります。
福祉実践の土台を成すのは、法令と制度の枠組みです。障がい福祉の分野も大きく変化しており、今回の就労選択支援はその新しい流れの一つです。
制度開始は目前です。2025年10月に向けて、スタッフ研修や体制構築、自治体との連携を今から整えていきましょう!
社会保険労務士法人エンジーでも、介護福祉に強みを持つ専門家として、皆様を全力でサポートしていきます。
様々な課題や具体的な対策について、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
》【2025年版】愛知県の就労選択支援 指定申請ガイドの記事も合わせてご覧ください。
この記事は、厚生労働省が就労選択支援について2024年6月5日までに示した資料をもとに説明しています。最新の情報は、厚生労働省のWebサイトをご確認ください。
公開日 2025/05/14
みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。
今回は、最近報道などでよく耳にする「2025年問題」を取り上げます。
本記事では、介護業界における2025年問題とは何か、そして介護業界に与える影響について、詳しく解説していきます。
医療の文脈で聞いたことのある方も多いと思いますが、
介護・障害福祉にも大いに関係があるんです。
具体にはどんなことが問題となるのか、確認していきましょう。
2025年問題とは、文字通り2025年をめどに顕著になる、医療や介護を中心とした社会保障制度に関する様々な問題を指します。
背景にあるのは、第二次世界大戦後のベビーブームに生まれた、いわゆる「団塊の世代」が2025年に75歳以上の後期高齢者になるという人口構造の大きな変化です。
この団塊の世代が後期高齢者になることで、医療や介護サービスの需要が急激に増加し、それに伴い社会保障費が大幅に増加することが懸念されています。
2025年には、75歳以上の人口は約2,080万人に達すると見込まれており、これは日本の総人口(約1億2,400万人)の約17%を占めることになります。
社会全体が高齢者を支える構造へ今もシフトしていることを示すものですが、これは単に高齢者人口が増加するというだけの話ではありません。
後期高齢者は疾患を抱えていることも多いため、介護ニーズがますます高まることを示しており、社会保障制度への負荷がより一層大きくなることが想定されるのです。
「2025年問題」と並んで「2040年問題」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。この2040年問題では、注目している世代が異なります。
2040年問題は、団塊ジュニア世代(第二次ベビーブーム世代)が65歳以上の前期高齢者となる2040年頃に顕著になるとされている問題のことを指します。
この時期には、高齢者人口がさらに増加する一方で、少子化の影響により現役世代の人口が大幅に減少することが見込まれています。
2025年問題が、団塊世代の後期高齢者化に伴う医療・介護費の増大という、社会保障サービスの需要側の変化に主に焦点を当てているのに対し、2040年問題は、高齢者人口の更なる増加と現役世代の減少という、社会保障制度を支える側の変化に着目していると言えるのです。
つまり、2025年問題は財政的な課題が中心である一方、2040年問題は制度維持そのものの危機という側面が強くなるわけですが、これらの問題は本質的には関連しており、双方の視点を意識しつつ対策を考えていく必要があります。
医療や介護保険制度に関する話題として扱われることの多い2025年問題ですが、障害福祉サービスを提供する事業所や利用者にとっても決して他人事ではありません。
これまで障害福祉サービスを中心に利用してきた方が高齢になった場合、介護保険サービスへの移行が大きな問題となってきます。
障害特性と高齢化に伴う支障の双方に対応する切れ目のない支援を提供するためには、障害福祉サービス事業者と介護事業者の連携が必要となる場面も増えてくることが想定されます。
このように2025年は、日本の社会保障制度全体に関わる節目の年であることがうかがえます。
障害福祉サービスにおいても、このタイミングを捉え、利用者の高齢化に対応した新たな支援のあり方を模索していくことが求められています。
では、実際に、2025年問題はどういった
影響を与えるのか。
介護業界を例に確認していきましょう。
ここでは、以下の3つの観点から影響を見ていきます。
団塊の世代が後期高齢者となり、介護サービスの需要が飛躍的に増大することは先ほども説明したとおりですが、その一方で、少子化は現在も進行しており、現役世代の人口は減少し続けていることも忘れてはいけません。
この結果、何が起こるかというと、介護を担う人材の確保が極めて困難な状況になるのです。これは介護に限った話でもないのです。
厚生労働省の推計によれば、2025年には約32万人の介護職員が不足する見込みであり、現在の介護現場が抱える人材不足の深刻さがますます増すことが予想されます。
ここでの人材不足は、量的な不足というだけでなく、質の低下を招く可能性も否定できないのです。
限られた人員で多くの利用者をケアする状況は、介護職員一人ひとりの業務負担が増加し、結果として離職率を高める悪循環を生み出しかねません。
また、急ぐあまり、十分な知識や経験を持たない人材が現場に投入されてしまうと、今度は適切な介護が提供されないというサービスの受け手側にも悪影響が出てしまうのです。
さらに、人材不足は介護事業所の経営にも大きな影響を与えます。
人員基準を満たせない事業所は、介護報酬の算定や指定にも影響が及び、最悪の場合、事業の継続が困難になることも考えられます。
介護サービスの安定的な提供という意味では、こうした事態は回避しなければなりません。
後期高齢者人口の急増は、医療や介護といった社会保障費の増大に直結します。
先に述べたように団塊の世代は、慢性的に疾患を抱えていることが多く、若年層に比べ医療や介護サービスをより必要としています。
医療や介護は社会保険料だけでなく、社会保障費として国からの支出もありますので、今後国の財政はさらに圧迫され、現役世代の社会保険料や税負担が増加する可能性が非常に高いと考えられます。
こういったことにならないよう避けるためにも、容易なことではないですが、介護事業の効率化といったことも検討していかなければなりません。
介護サービスの需要が供給を大幅に上回ることで、必要な時に適切な介護を受けられない「介護難民」が増加するリスクも高まります。
特に都市部においては、介護施設の不足が顕著で、入所待ちの高齢者が大幅に増加する可能性があります。
在宅介護を希望する高齢者にとっても、訪問介護サービスの担い手不足により、必要なサービスを受けられないという状況が広がることも懸念されます。
介護難民の増加は、高齢者本人だけでなく、その家族にも大きな負担を強いることになります。
例えば、家族が仕事を辞めて介護に専念せざるを得なくなるケースや、心身ともに疲弊してしまうケースが増加することが予想されます。
この問題においても、人材不足や財源の問題が大きく絡んでおり、容易に解決できるものではありません。
2025年問題は介護業界にとって大きな危機であり、今後さらに厳しさが増すことが予想されます。
今のうちから人材育成をはじめとする多方面からの対策を講じておくことは、今後の事業運営においても重要なものとなるでしょう。
ここまで2025年問題の深刻さについて見てきましたが、
ではどうすればいいのか?とお思いかと思います。
この難しい局面においても、自分たちでできることはありますので、
できることから対策を始めていくのがよろしいかと思います。
人材確保をするにしてもそもそもどうやって介護職にアプローチしていけばいいのか、そこで悩んでしまう方も多いと思います。
特に、どのようにすれば介護職に関心を持ってもらい、新たな人材と出会えるのか悩ましい問題です。
この課題を解決するためには、情報発信を積極的に行い、事業所の魅力を効果的に伝えることが重要になります。
近年、SNSやWebサイトは、情報収集やコミュニケーションの主要なツールとして、特に若い世代に広く活用されています。
介護事業所においても、この流れを捉え、積極的に情報発信を行うことが、新たな人材との出会いを創出するきっかけにもなるでしょう。
日々の業務に追われ、なかなか時間を取るのが難しいかもしれませんが、これらの情報発信を通じて、事業所の雰囲気を伝え、親近感を持ってもらうこともできます。
さらに、オンライン説明会など直接的なコミュニケーションを取る機会を設けることで、求職者の疑問や不安を解消することにも繋がります。
これらの施策は、介護職に対するイメージアップにも繋がり、これまで介護業界に関心のなかった若い世代に魅力が伝わるかもしれません。
情報発信を積極的に行うことで、より多くの人材にアプローチし、人材不足の解消に繋げていくことが期待されます。
人材を確保するためには、多様な働き方を支援するとともに、労働条件の改善を図る必要があります。
特に、介護職員の能力や経験に応じた昇給・昇格制度を明確化したり、長期的なキャリア形成を支援するといったことは重要になってきます。
また、専門性を高めるための研修機会の提供や、管理職への登用制度などを整備することも重要です。
これらは介護報酬の算定にも関係してきますので、積極的に取り組んで損はありません。
離職率を低下させる上では、職員のキャリア制度だけでなく、その労働環境を整備することも不可欠です。
業務の効率化や役割分担の見直し、職種間連携も通じて、残業時間の削減に取り組みます。
時間外労働が必要であったとしても、忙しいからしょうがないよねで済ませずに、慢性化しないような対策を取ることも重要です。
パワーハラスメント、セクシャルハラスメントなどのハラスメントを防止するための研修実施を検討するのもひとつの手段としてあると思います。
安心して働ける環境づくりも大切です。
どんな組織でもそうですが、定期的なミーティングや意見交換の場の設定、積極的なコミュニケーションなど、職員が気軽に相談できるような雰囲気づくりを心がけるとともに、互いに協力し支え合う関係性を築いていくことも労働環境の改善としては有用です。
ICT活用で業務効率化・省力化を図り、介護職員が質の高いケアを行える(集中できる)ような環境を整備することも重要です。
見守りセンサーや介護記録、オンライン研修・会議、事務作業の自動化などなど、検討できる部分は色々あると思います。
介護現場においてもICTを活用できる部分では積極的に活用していくのが良いでしょう。
スキルアップ支援制度の充実でサービスクオリティの向上や職員モチベーションの維持、キャリアアップを目指します。
資格取得支援もそうですし、研修機会の提供やキャリアパス制度整備といったことでも職員のスキルアップに繋がります。
人材不足対策として、外国人人材の採用を検討することも必要になってくるでしょう。
現在は技能実習生の在留資格も認められていますので、外国人が日本で就職するという事例も増えてきています。
外国人人材を採用する場合の留意点としては、日本語学習や生活支援の充実、異文化理解のための日本人向け研修、資格取得の外国人向け支援の強化といった、受け入れのための体制整備が必要になる点です。
これらの対策を講じることで2025年問題に対応し、持続可能な事業運営と質の高い介護サービスの提供を目指していくことが可能になります。
ここで紹介したものでも対応が難しい場合もあると思います。
各事業所の事情にに応じた対策をその都度判断していくということが
何より大切になってくるのだと思います。
2025年問題の要因となる後期高齢者の増加は避けられないことですが、適切な対策を講じて臨めば、問題でなくしたり、影響を弱めたりすることはできるものだと思われます。
ただ、簡単に解決できる課題でないことも事実ですので、きちんと備えておくことが大切になります。
もちろん介護事業者だけが頑張れば良いというわけではなく、国や自治体といった行政や、地域社会も含めて、各々がそれぞれの立場で取組を進めていくことが不可欠なのだと思います。
今回の内容を参考に、介護事業者の皆様におかれましては、人材確保や育成、業務効率化など、早めの対策を戦略的に講じていきましょう。
社会保険労務士法人エンジーでも、介護福祉に強みを持つ専門家として、皆様を全力でサポートしていきます。
労務管理に関する課題や具体的な対策について、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
公開日 2025/03/24
最終更新日 2025/05/14
みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。
今回は、厚生労働省から2月に公表されたばかりの「介護人材確保・職場環境改善等事業」について、その事業概要や申請方法等を解説していきます。
令和6年度の補正予算において、介護事業者や障害福祉サービス事業者に向けた「介護人材確保・職場環境改善等事業」が実施されることとなりました。
介護人材確保・職場環境改善等事業は、簡単に説明すると、介護現場における人手不足を解消するために、介護施設等の働く環境の改善や賃金アップを支援することで介護職員を増やし定着させることを目的とした制度です。
具体的には、介護サービス事業者等に対して補助金を交付し、それを活用して一時金を支給したり、職場環境を改善してもらう、ということになります。
今回の補助事業のねらいは
何なのか。その背景から
確認していきましょう。
介護業界では、長年にわたる人材不足が問題視されており、政府はこの状況に対応するために、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」(令和6年11月22日)において、「足元の人材確保の課題に対応する観点から、令和6年度報酬改定において講じた医療・介護・障害福祉分野の職員の処遇を改善するための措置を確実に届け、賃上げを実現するとともに、生産性向上・職場環境改善等による更なる賃上げ等を支援する」こととされたことを踏まえ、賃上げに向けた取組等に必要な緊急の措置を講じることとし、その財政的措置として介護人材確保・職場環境改善等事業」を補正予算に組み込みました。
なお、予算規模としては、806億円という大規模なものとなっており、介護職員一人当たりおよそ5万4千円の一時金(ボーナス)を支給できる規模となっています。
では、今回の経済対策の中でこのような対応が取られた背景とはどんなことなのでしょうか。
これまでも、色々な記事で言及してきたように、日本の高齢化が進む中で、介護職員の需要は増加する一方、担い手となる人材が不足しており、ますます深刻化しています。
地方だけでなく都市部においても介護施設の人手不足が問題となっています。
求職者の減少と離職率の高さが課題であり、安定した介護サービスを提供する上で重要な要素であるため、緊急度は非常に高いと言えるでしょう。
介護職員の給与水準は他業種と比較しても低いといったことがよく指摘されます。
そのため、介護職員の処遇改善を図るために、本事業では補助金を活用してボーナス等の一時金を支給することが可能となっています。
これにより、賃金の底上げが図られ、結果として人材の確保や離職率の低下に繋がると考えられます。
昨今の物価高騰により、生活費が増加し、介護職員の経済的負担が大きくなっています。
特に、食品の値上がりは、多くの職員にとって大きな問題です。
今回の補正予算を活用した介護職員の給与改善は、政府の物価高騰への対応の一環としての意味も持つものと考えられます。
介護業界の生産性向上も大きな課題であり、介護業務の効率化を図るために、職員の負担を軽減することが求められています。介護助手の雇用を促進すること等により、職員の負担を減らし、より質の高いケアを提供することも大切な取組になってきます。
職場環境改善等に向けて、下記のいずれかの取組の実施の計画又はすでに実施していることとされています。
本事業の実施主体は、厚生労働省が管轄し、各都道府県が具体的な申請受付や交付決定を行います。各自治体ごとに事業の詳細が異なるため、介護事業者の皆様におかれましては、自治体の公式発表を確認し適切な申請を行うよう注意してください。
補助金は、人件費に充てることができます。ほかにも以下のような取組も支援対象となります。
なお、パソコンや見守りセンサーなどICT機器の導入費は補助の対象外(この補助金では購入不可)となっている点に注意が必要です。
対象経費に該当するかどうかの判断は各都道府県が行うことになるため、事業計画書の内容等充実させ、的確に伝えることが大切です。
万が一気になる点などがある場合には、専門家である社会保険労務士や実施主体である都道府県に事前に相談するのが安心です。
いずれの対応とするかは事業所の判断に委ねられますが、共通して言えるのは「介護現場の職員が安心して働ける土台づくり」を後押しする点です。優秀な人材を新たに確保しやすくなり、長期的な定着率の向上にもつながると期待されることを選択下さい。
今回の補助金は、
基本的には人件費に充てる
ことが想定されています。
ここでは、具体的にどのような事業所と職員が支援の対象となるのか、解説していきます。実際に申請を検討する際には、管轄の都道府県が公表している情報や厚生労働省の通知、Q&Aをあわせて確認するようにしましょう。
本補助金を受けるためには、いくつかの要件を満たすことが求められます。
まず、介護保険サービスを提供している事業所であることが大前提となります。
さらに、「介護職員等処遇改善加算(Ⅰ~Ⅳ)」を算定していることなど、既に一定の処遇改善に取り組んでいる、あるいは取り組む準備が整っている事業所に限られます。
また、令和7年4月以降に新規開設される事業所は対象外とされるため、注意が必要です。
これらの要件を満たした上で、実際の交付可否は都道府県が審査を行い決定します。
書類に不備があると審査に時間がかかったり、場合によっては不交付となる可能性もあるので、計画書や事業所の実績、介護職員の配置状況などをしっかり整理しておきましょう。
補助金の対象となる職員は、主に介護業務に直接従事するヘルパーや介護福祉士、看護助手などです。
ただし、同じ事業所内で働く他の職員(たとえば事務員や調理スタッフなど)も、職場環境の改善や処遇向上の一環として支援対象に含めることが認められています。
具体的には、厚生労働省のQ&Aでも「介護職員以外の職員を含め、すべて対象とすることが可能」である旨記載されており、事業者側の判断配分を行うことが可能です。
令和7年4月以降に新規開設された事業所(新しくできた事業所)や、近く休止・廃止する予定の事業所は補助の対象外です。
また、介護サービスの種類によっても制限があり、居宅介護支援(ケアマネージャーによる介護プラン作成)や福祉用具貸与(介護用品のレンタル)、訪問看護など、直接介護職員が高齢者のケアを行うサービスでない事業は本事業の対象にはなりません。
つまり、介護職員が配置されていないサービス(ケアプランのみ提供する事業や、機器の貸与だけの事業など)は除かれているため留意しましょう。
気になる補助額ですが
今回の補助金ではわかりやすい
計算式に基づいて算出できます。
補助金の金額は、「基準月における介護サービスの総報酬額 × サービス種類ごとに定められた交付率」で算出されます。上記の基準月は、令和6年12月ですが、令和7年1月、2月、3月のいずれでも可とされています。
前の見出しでも記載しましたが、支給額は、「一月当たりの介護総報酬」に「サービス類型別交付率」を掛け合わせて算出されます。
類型別交付率は訪問介護や通所介護など、サービスの種類によって異なり、標準的な配置の事業所を想定した補助水準が設定されています。
具体的には下表のようになっており、標準的な職員配置の場合に常勤職員1人あたり約5.4万円となる水準に設定されています。
表1 介護保険事業費補助金(介護人材確保・職場環境改善等事業)対象サービス
表2 障害福祉人材確保・職場環境改善等事業 対象サービス
表3 障害児支援人材確保・職場環境改善等事業 対象サービス
申請期間や提出書類は都道府県ごとに異なることが多いため、まずは自治体の公式サイトを確認するようにしてください。
一般的には「介護人材確保・職場環境改善等事業計画書」の提出が求められ、どのように補助金を使うかを詳しく記載して審査を受けます。
基準月を設定し、その月の介護報酬に基づいて補助額を算定するため、どの月を選ぶかもポイントになってきます。
事業実施後は「実績報告書」の提出が必要で、計画どおりに費用を使ったか、介護職員への一時金や職場環境整備が実施されたかを確認されます。
報告内容に不備があると交付額の調整や返還を求められる場合があるため、領収書や人件費の支払い記録などの保管を徹底するようにしましょう。
補助を受け事業を実施したあとには、
きちんと実績報告が必要です。もらって
終わりではありませんので気をつけましょう。
「介護人材確保・職場環境改善等事業」は、介護業界の厳しい現状を改善するために設けられた施策であり、物価高騰や人材不足が深刻化する中、補助金を活用して職員の処遇改善と職場環境の向上を図ることは、事業者含め介護にかかわる者みなにとって意義深いものと言えるでしょう。
特に、給与引き上げや一時金支給にとどまらず、介護助手の採用や研修の充実を通じて人材育成を推進できる点は、長期的な目線で見ても重要です。
こうした補助制度を上手に活用することは、介護職員が安心して働ける環境を整備し、利用者へ高品質のサービスを提供する上でも重要です。当事務所でも、申請手続きのサポートから労務管理まで幅広くアドバイスいたしますので、お気軽にご相談いただければと思います。
「令和6年度介護人材確保・職場環境改善等事業の実施について」(厚生労働省老健局)
「介護人材確保・職場環境等改善事業に関するQ&A」(厚生労働省老健局)
「障害福祉人材確保・職場環境改善等事業の実施について」(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部)
「障害児支援人材確保・職場環境改善等事業の実施について」(こども家庭庁支援局)
公開日 2025/02/19
みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。
今回は放課後等デイサービスの「5領域」に焦点を絞って解説していきたいと思います。
令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定において、厚生労働省は放課後等デイサービスにおいて「5領域」の全てを含めた総合的な支援を提供することを運営基準として位置付けました。詳細は令和6年2月6日に「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」から公表された報酬改定の概要で確認ができます。
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について | 厚生労働省
今回のこの改定からは、厚生労働省が5領域を重視する姿勢が見て取れます。
ここでいう「5領域」とは、以下の5つの要素を指しています。
これらの領域は、障害のある子どもたちが自立した生活を送るために必要な基礎能力を育むことを目的に設定されています。これらをバランス良く支援することが、子どもたちの可能性を最大限に引き出すことに繋がるのです。
具体的には、「5領域」に基づく支援プログラムを策定しそれを公表することが事業者には求められ、未実施の場合には報酬の減算も適用されることとなりました。減算は所定単位数の15%となっています。
ただし、この減算措置には1年間の経過措置が設けられており、令和7年4月1日から適用されますので、減算を回避するためには、今年度中に支援プログラムを作成し、公表することが必要になります。
利用者である子どもたちや保護者の方々にとってみれば、より質の高い支援が提供されることとなり、放課後等デイサービスの意義がより深まるものになることが期待されます。
また、こども家庭庁が発表している「放課後等デイサービスの5領域に関するガイドライン(令和6年7月)」では、具体的な支援内容や取り組み事例が示されています。これから支援計画を策定する事業者さんは、このガイドラインも参考にされると良いでしょう。
この「5領域」は、単なる理論で終わる指針ではなく、現場での支援内容を具体化し、子どもたちの生活や成長に繋がる支援を行う実践的な指針なのです。
前置きが長くなってしまいましたが、以下では、5領域の基礎知識から具体的な支援方法まで、詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
「5領域」とは、放課後等デイサービスにおける支援内容を体系化したもので、障害のある子どもたちが自立した生活を送るために必要なスキルや力を、5つの観点に分け支援する考え方になります。
「5領域」は具体的には次の5つの領域を指しています。
たとえば、食事や着替えといった日常生活の基本動作を自分で行えるようになるための支援や、自分の気持ちを表現する力を育む支援を行うことで、子どもたちが地域社会の中で自立した生活を送れるようにするためのものです。
この「5領域」は、ただ発達支援を行うだけではなく、個々の子どもが将来直面するであろう課題に対応できるだけの力を養うための基盤を形づくるためのものとも言えますね。
ではなぜ厚生労働省は
5領域を重視するのか。
その背景について考えてみましょう。
こうした流れが生まれた背景には、子どもたちが安心して成長し、地域の中で自分らしく暮らしていくための「基礎づくり」が大切だと考えられているからです。
障害のある子どもは発達段階や得意分野が一人ひとり異なるため、健康や生活能力だけではなく、コミュニケーションや社会性を含めた複数の観点から支援を行う必要があります。
さらに、5領域を柱とした総合的な支援は、日常生活の困りごとを減らすだけでなく、将来の進学や就労など、ライフステージの変化に合わせて柔軟にサポートを続けられるというメリットもあります。
子どもたち自身が、自分のできることをしっかり理解し、個性を活かせるようになると、家族や周囲との関係も自然と良い方向へ向かい、お互いが安心して成長を見守ることができるでしょう。
質の高い支援を行うためには5領域すべてを見据えたプログラムが欠かせなくなっており、事業所にとっても子どもたちの将来を見据えた支援を提供することが、大切な役割となっているのです。
ここでは、5領域それぞれについて、どういった成果が期待されるのかについて具体的に掘り下げて見ていきましょう。
健康・生活の支援は、子どもたちが自立した生活を送る上で基本的な身の回りのことをこなせるようになることを目指します。例えば、食事の準備や後片付け、着替え、洗濯といった基本的な生活スキルですね。
こういったスキルは、子どもたちが日常生活の中で困難を感じる場面を減らすことに繋がりますし、健康管理の視点からも重要です。
運動・感覚の領域では、体を動かす活動や感覚刺激を通じて身体能力を育成します。
例えば、ストレッチや軽いスポーツ、遊具を活用した遊びを通じて体力を高める支援が行われます。
感覚統合療法といって、視覚、聴覚、触覚などの複数の感覚を組み合わせ、体のコントロールを自然にできるよう促すといった療育もあります。
これらは身体的な成長だけでなく、不安やストレスの軽減にも寄与するという効果もあります。
認知・行動の支援は、集中力や判断力、問題解決能力を向上させるための取り組みです。
計画性や論理的思考を養う支援が一般的で、そのほかにも感情のコントロールに関するプログラムもこの領域に含まれます。
言語・コミュニケーション能力は、他者との交流をスムーズにするための重要なスキルです。
この領域では、話す力、聞く力、そして自分の考えを言葉で表現する力を伸ばす支援を想定しています。
この領域は、子どもたちが他者と良好な関係を築き、地域社会に溶け込む力を育てることがねらいです。
グループ活動や地域イベントへの参加を通じて、協調性や共感力を養い、他者と協力する力を学びます。また、異なる背景を持つ人々と交流する機会を提供することで、多様な価値観を理解する力も育まれます。
このように5領域はそれぞれが
独立しているのではなく相互に関連しながら
子どもたちの成長を支えています。
実際の放課後等デイサービスでは、5領域に基づいた具体的な支援プログラムが提供されています。
ここでは、各領域で行われる具体的なプログラム例とあわせて解説していきます。
「健康・生活」の支援では日常生活で必要なスキルの習得が想定されていることから、簡単な料理作りを体験するプログラムが行われたりします。
こうした経験を通じて、子どもたちは「自分で身の回りのことをする」ための意欲やスキルを身につけていきます。
体操やスポーツは定期的に行われ、体力やバランス感覚の向上に役立つことが期待されます。
子どもたちも楽しく取り組むことができるようにするというのがとても重要ですね。そうすることで、心身のストレス軽減にも繋がり、リラックスした状態で他の活動にも参加しやすくなります。
課題解決型ゲームやパズルを通じて、論理的思考や集中力を養います。
こういった支援により、子どもたちは段階的に「考えて行動する」姿勢を身につけ、日常生活での困難な場面でも自らをコントロールしやすくなります。
言語・コミュニケーションの支援では、言葉を使った表現力を伸ばすプログラムが中心です。絵本の読み聞かせや、発表会の場を設けることで、子どもたちは自分の考えや気持ちを他者に伝える練習を行います。
さらに、ディスカッションや質疑応答の活動も取り入れることで、相手の話をしっかり聞き取るスキルについても育むことが可能となり、聞く力と伝える力の両面からコミュニケーション能力を磨くことができます。
「人間関係・社会性」の支援では、多様な人と関わる機会を増やし、チームワークや共感力を育てる取り組みを行います。
こうした経験を重ねることで、子どもたちは自分以外の人とのコミュニケーションの取り方を学び、社会生活へよりスムーズに適応する素地を築きます。
これらのプログラム例は、5領域の支援を現場でどのように実践しているかを示すあくまで一例です。5領域の視点を取り入れることで、子どもたちは様々な角度からバランスよく成長していくことができるのです。
放課後等デイサービスの5領域の支援は、
子どもたちの未来を支える重要な役割を
果たしているということがわかっていただけたかと思います。
それぞれの領域に基づいた支援は、子どもたちが自分たちらしく自立して生きていけるようにするためのものです。最後に5領域に基づく支援の効果について振り返りましょう。
子どもたちは日常生活で必要な基本的なスキルを習得し身の回りのことを自分でできるようにするためのものでした。
子どもたち自身が自立に向けての一歩を踏み出すきっかけとなり、自己肯定感を高めることにも繋がります。
運動や感覚統合を取り入れたプログラムは、子どもたちの身体的な成長を促進しバランス感覚や体力が向上します。ただ、それだけでなく、身体を動かす楽しさを体験することでストレス解消にも繋がり、心身ともに健康的な体づくりをすることが可能になります。
協調性や共感力といった子どもたちが他者と関わる力を高めることで、子どもたちは学校や地域社会の中で他者と円滑に交流できるようになります。そのことが本人たちの自信にも繋がり社会参加に踏み出す勇気を与えることにもなります。
これらの支援は子どもたちの成長を包括的にサポートするものですが、事業者にとっても、こうした支援の重要性を理解しプログラムを提供することが、子どもたちやご家族の満足度を高める上でも重要なポイントとなるでしょう。
今回は、令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定において評価基準として位置付けられた「放課後等デイサービスにおける5領域」について、その中身について解説してきました。
「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」という5つの領域に基づいた支援を総合的に行うことで、子どもたちは日常生活や社会生活で必要なスキルを身につけ、自己肯定感や社会性を育むことができるのです。
放課後等デイサービスを運営する事業者のみなさまにとっても、5領域の理解と実践は、サービスの質を高める重要な要素となります。
当法人でも、5領域に基づく支援プログラムの立案や運営改善のご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
社会保険労務士法人エンジーでは無料相談を受け付けております。
弊社では指定申請から指定後のサポートまで、御社の事業を手厚く・末永くサポートいたします。
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