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6月に公表された「骨太の方針2018」の内容をおさえておきましょう

著者:enjie_me-admin

6月に公表された「骨太の方針2018」の内容をおさえておきましょう

行政舵取りの「羅針盤」とも言える方針書類が公表

2018年6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018~少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現~」、通称「骨太の方針2018」。

この1年間は本書面に記載された内容を大方針として、様々な議論や施策が展開されていくことになります。

中でも医療・介護を始めとする社会保障分野は「財政健全化」の一丁目一番地。その意味において、我々介護業界としても是非、踏まえておくべき内容が数多く含まれています。

表題の通り“行政舵取りの羅針盤”と言っても過言ではない本書面の中で、介護業界に対してはどのような言及が為されているのか?今回は特に事業者として注視すべき内容をトピックスとして幾つか採り上げ、お届けしてまいります。

 

「骨太の方針2018」で採り上げられている介護業界に関連するトピックスとは

【その1】
経済再生と財政健全化に着実に取り組み、2025年度の国・地方を合わせたPB(国と地方の基礎的財政収支。プライマリーバランス=PB)黒字化を目指す。

「2020年度の達成」を目標に改革を進めてきた現政権ですが、税収の伸び悩みや消費税率の引き上げで得られる増収分の使途の変更、補正予算の影響などで思うように計画が進まず、止む無く“5年間の先送り”で落ち着いた形です。

とはいえ、近年の状況から考えるに、“2020年達成目標は非現実的”という向きの見方は恐らく多くの方が既に感じていたことではなかったか、と思われます(あくまで私見の範囲を出ない話ではありますが)。
いずれにせよ、“2025年度黒字化”まではあと7年。是非とも実現に向けて具体的かつ現実的な絵を描いていただきたな、と思う次第です。

 

続いては2つ目のポイント、「財政健全化に向けた大方針」についてです。

 【その2】
2025年度のPB黒字化に向けては、社会保障改革を軸として、社会保障の自然増の抑制や医療・介護のサービス供給体制の適正化・効率化、生産性向上や給付と負担の適正化等に取り組むことが不可欠である。2022年からは団塊世代が75歳に入り始め、社会保障関係費の急増が見込まれる。それまでの2019年度〜2021年度を「基盤強化期間」と位置付け、経済成長と財政を持続可能にするための基盤固めを行う。

上記文面からすると、次期法改正が施行される2021年は「基盤強化期間」の最終年度に当たることになり、このタイミングでどのような改正・改定を行うかによって2022年(=団塊世代が75歳に入り始める年)以降の財政は大きく変わってくることになるでしょう。

その意味においても、次期法改正・報酬改定はドラスティックな厳策が講じられる可能性も十分考えられるかもしれないことを、事業者としては踏まえておく必要があると思われます。

 

続いては3つ目、「介護領域における給付の適正化・効率化」の具体的な論点についてです。

 【その3】

  1. 介護のケアプラン作成、多床室室料、介護の軽度者への生活援助サービスについて、給付の在り方を検討する。
  2. 高齢者医療制度や介護制度において、所得のみならず資産の保有状況を適切に評価しつつ、「能力」に応じた負担を求めることを検討する。
  3. 年金受給者の就労が増加する中、医療・介護における「現役並み所得」の判断基準を現役との均衡の観点から見直しを検討する。

(1)については、今まで提起されてきた内容があらためて反映されたものとなっています。上記のポイント【その2】で示したように、次期法改正のタイミングが“基盤強化期間の最終年度”に当たっている、という位置づけからすると、いよいよ具体的な改革が実行されるかもしれないことを事業者としては意識しておく必要があるかもしれません。

(2)(3)については、現状の財政状況から勘案すれば、致し方ないことなのかもしれないな、と感じる次第です。

 

続いては4つ目のポイント、「都道府県・保険者(市区町村)に対する改革マネジメント」についてです。

 【その4】

  1. 1人当たり医療費の地域差半減、1人当たり介護費の地域差縮減に向けて、国とともに都道府県が積極的な役割を果たしつつ、地域別の取組や成果について進捗管理・見える化を行うとともに、進捗の遅れている地域の要因を分析し、保険者機能の一層の強化を含め、更なる対応を検討する。
  2. 高齢者の通いの場を中心とした介護予防・フレイル対策や生活習慣病等の疾病予防・重症化予防、就労・社会参加支援を都道府県等と連携しつつ市町村が一体的に実施する仕組みを検討するとともに、インセンティブを活用することにより、健康寿命の地域間格差を解消することを目指す。
  3. 介護保険の財政的インセンティブの評価指標による評価結果を公表し、取組状況の「見える化」や改善を進めるとともに、第8期介護保険事業計画期間における調整交付金の活用方策について、改正介護保険法による新たな交付金による保険者の取組の達成状況や評価指標の運用状況等も踏まえ、保険者間の所得水準の差等を調整するための重要な機能を担っていること等に留意しつつ、第7期期間中に地方公共団体関係者の意見も踏まえつつ、具体的な方法等について検討し、結論を得る。
  4. 医療・介護制度において、データの整備・分析を進め、保険者機能を強化するとともに、科学的根拠に基づき施策を重点化しつつ、予防・健康づくりに頑張った者が報われる制度を整備する。

保険者に対して「給付最適化・効率化」が本格的に課され始めれば、それはそのまま介護事業経営においても大きな影響が出てくる事が容易に予想されます。

今期(第7期:2018年度~2020年度)は保険者として給付の最適化・効率化に取り組まなくともペナルティ等のマイナスは未だ一切発生しない形になっている訳ですが、上記(3)に記載があるように、もし、第8期(2021年度~)以降に調整交付金がインセンティブ財源として活用されることになったとすれば、取り組みや成果創出の状況によって保険者ごとに給付される財減額が変動する事となり、要介護度認定の厳格化等、自治体の介護事業者に対する姿勢・スタンスに大きな変化が生まれてくるものと思われます。

まだまだ実態・実情との乖離や矛盾は数多く存在する状況ですが、いずれにせよ(4)に記載されるような「頑張る人には頑張った分だけ」「頑張れなかった(or頑張らなかった)人には相応に」という流れは止めることが出来ないものとして事業者としてはあらためて認識しておく必要があるのではないでしょうか。

 

続いてはポイントの5番目、「科学的介護」「生産性向上」に関する内容についてです。

【その5】

  1. 科学的介護を推進し、栄養改善を含め自立支援・重度化防止等に向けた介護の普及等を推進する。特に、自立支援・重度化防止等に資するAIも活用した科学的なケアプランの実用化に向けた取組を推進するとともに、ケアマネジャーの質の向上の観点から、その業務の在り方を検討する。
  2. テクノロジーの活用等により、2040年時点において必要とされるサービスが適切に確保される水準の医療・介護サービスの生産性の向上を目指す。
  3. 診療報酬や介護報酬においては、適正化・効率化を推進しつつ、安定的に質の高いサービスが提供されるよう、ADLの改善等アウトカムに基づく支払いの導入等を引き続き進めていく。
  4. 人口減少の中にあって少ない人手で効率的に医療・介護・福祉サービスが提供できるよう、AIの実装に向けた取組の推進、ケアの内容等のデータを収集・分析するデータベースの構築、ロボット・IoT・AI・センサーの活用を図る。

高齢者数が2040年代前半までは増え続けるであろうことが予測され、他方では高齢者を支える為の物理的な人手が不足する事が間違いない中、「(AI活用を通じた)効果性・再現性が高い介護の追求」「アウトカム評価」「(介護ロボット・IoT・AI・センサーなどを活用した)生産性の向上」等々のテーマは我々介護業界にとってもはや「不可避な必達目標」と捉えざるを得ない状況にまで昇華してきているものと思われます。

例えば、2015年段階において24.4億円だった介護ロボットの市場規模に対しては、行政は「2020年までに500億円市場(≒25倍)にまで成長させる」という、具体的な数字まで示し始めてきています。今後、それらの機運が益々高まってくることを事業者としては踏まえておく必要があるでしょう。

 

最後に、一つのポイントとして敢えて紙面を割いて言及するほどではないものの、上記以外で介護業界に関連するであろう内容を以下に抜粋・羅列させていただきます。

 【その6】

  1. 介護人材の処遇改善について消費税率引上げ日の2019年10月1日に合わせて実施する。
  2. 従事者の業務分担の見直し・効率的な配置、介護助手・保育補助者など多様な人材の活用、事業所マネジメントの改革等を推進する。
  3. 元気で働く意欲のある高齢者を介護・保育等の専門職の周辺業務において育成・雇用する取組を全国に展開する。
  4. 高齢者をはじめとして多様な就労・社会参加を促進し、社会全体の活力を維持していく基盤として、健康寿命を延伸し、平均寿命との差を縮小することを目指す。
  5. 介護の経営の大規模化・協働化により人材や資源を有効に活用する。
  6. 新オレンジプランの実現等により、認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等が提供されるよう、循環型ネットワークにおける認知症疾患医療センターの司令塔としての機能を引き続き強化し、相談機能の確立等や地域包括支援センター等との連携を進めることを通じ、地域包括ケアシステムの整備を推進する。
  7. 住み慣れた場所での在宅看取りの先進・優良事例を分析し、その横展開を図る。
  8. 新たな地域別の将来人口推計の下での大都市や地方圏での医療・介護提供に係る広域化等の地域間連携を促進する。

 

国策の“風”を読み取り、早め早めの準備を

以上、「骨太の方針2018」より、介護業界に直接関係のある部分のみを抜粋してお伝えさせていただきました。繰り返しになりますが、本内容は国全体の舵取りの羅針盤方針的な位置づけであり、それ故、相応の重みを伴なった情報であることを強く認識しておく必要があろうかと思います。

事業者としては上記内容を踏まえつつ、「これらの施策に対し、自社としてどう適応していくか?」について事前に頭を働かせておくことは勿論、内容によっては打ち手や対策を早急に検討・開始していくことが重要だと思われます。是非、本情報を有効に活用していただければ幸いです。私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。

※「骨太の方針2018」URLはこちら

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2018/2018_basicpolicies_ja.pdf

 

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