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社会保険労務士法人エンジー
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営業時間 平日:8:30-17:30
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公開日 2017/02/01
最終更新日 2018/06/10
先月以降、処遇改善加算の加算率発表以外にさほど目新しい動きは出てこなかった2017年1月。
そこで今月は今までと趣向を変え、口コミを中心に介護予防事業を円滑に起ち上げることに成功したA社・B社長の事例をご紹介させていただきたいと思います。
総合事業の全国開始が直前に迫り、要支援単価の低下に翻弄される事業者が多い中、本事例は何を我々に教えてくれるのか?是非、そんな視点でお読みいただければ幸いです。
最近、総合事業の動きも見据える中、特にリハビリデイ等で認定外高齢者向けサービスの展開を検討されている事業者様に出会う事がよくあります。
そんな中、A社の事例が頭にあるせいか、「この事業の目的はどこにあるのですか?」と敢えてうかがうことがあるのですが、多くの事業者様からの回答は概ね次の3点でした。
「地域でニーズがありそうだから」
「保険サービスの収益が落ち、保険外サービスで少しでも売上を上乗せ・回復せたいから」
「将来、要支援・要介護者になるかもしれない方々と早めに接点をつくっておけば、ゆくゆくは当社サービスをそのままご利用いただける等、保険内サービス事業にも好影響を及ぼすことが出来るかもしれないから」
勿論、上記の考えが正しい、とか、間違い、という類の話ではありません。
ただ、今回ご紹介させていただくA社は、実は、上記3つの何れも目的に据えていた訳ではありませんでした。では、彼らの目的は一体何だったのか?
それは、「既存ご利用者の願いを叶える」この一点だけでした。
「要支援1や2、特に要支援1の方はADLが回復する見込は十分にあり、運動する機会を増やすことが出来さえすれば、要支援認定から外れる可能性は高いし、かつ、ご利用者本人もそれを望んでいる場合が多い」
ご利用者と日々触れ合う中、B社長はそんな想いを強く抱いていたそうです。とはいえ、介護保険事業の枠組みの中では、要支援1の方に週2回、週3回、と回数多く来ていただく事は経営的にも難しい。何とかこの矛盾を解決出来ないか、、、、
そこから生まれたのが、「保険サービスとは別で週に1回、既存ご利用者向けに保険外で運動指導サービスを提供する」というアイデアでした。
B社長はこのアイデアをもって、要支援1のご利用者(Cさん)のところへ向かいます。
「Cさん、前回お聞かせいただいた、『出来れば週にもう1回多く通いたい』というお話、社内で色々検討してみたんですが、やはり経営的には対応が難しく、Cさんのご希望をそのまま叶えて差し上げることは難しい状況です、力不足で本当に申し訳ありません」
「ただ、我々としても、Cさんには絶対に元気になっていただきたい。その為に何が出来るか?について色々考えたのですが、例えば週末、デイサービスが休みの日曜日に、保険外で運動指導サービスを提供させていただく、という案は如何でしょうか?保険は活用出来ませんが、1回約3時間、2,500円程度いただければ、喜んで対応させていただきたいのですが、、、」
その話を聞いたCさんからは「是非、お願いするよ」とその場で即、返事。
「ありがとうございます。では、せめて、週末のご利用時にも送迎はやらせていただきます」
こうして、先ずは要支援1の方を中心とした「既存ご利用者のための介護保険外サービス」が始まったのです。
当然ながら、認定の入り口に立ったばかりの要支援1のご利用者にとって、週1回の運動と週2回の運動とでは、ADLの改善スピードも、効果も格段に変わってきます。予想通り、Cさんの運動機能もどんどん回復されていきました。そんな中、Cさんの回復ぶりを見ていた要支援2のご利用者(Dさん)が、デイサービス中にCさんに尋ねます。
「最近、以前に比べて見違えるほど元気になってきたんじゃない?何かやってるの?」
「あぁ、週末に1回、自費の運動指導サービスを受けているんだ」
「あぁ、以前、B社長が言っていた、あのサービスか。そんなに元気になるのなら、俺も行ってみようかな」
こうして「保険外サービス」が賑わい始め、一人、また一人、と、ご利用者が認定から外れる、という嬉しい状況が起こってきました。
しかしながらこの話、このままキレイな美談で収まる訳ではありません。
要支援1の方がお元気になり、認定がはずれる、ということは即ち、保険サービスのご利用者が1名減少してしまう、ということです。経営者であれば、この矛盾に悩むことも当然あるでしょう。
しかし、B社長は、この事実に直面しても、自らの軸はぶれませんでした。
「ご利用者の「元気になりたい」という希望を叶えるために始めたのだから、これが正しい姿だ」
他方、経営としては、「いいことをやっているんだから利益が上がらなくてもいいじゃないか」では済まされません。このギャップに直面したB社長はその後、どう対応したか。
「当社は、“介護保険から卒業出来るデイサービス”です」
「“卒業後も運動指導を継続し、元気でいていただくことをご支援するデイサービス”です」
という新たな価値を地域に発信し、口コミも伴い、結果、現在では「介護保険サービス」と「介護保険外サービス」が両輪となって事業全体が好転する、という、善循環が生まれた、という訳です。
A社の事例は単価変動に翻弄される中、つい狭い視野に陥りがちな我々に対し、「顧客志向」という言葉の持つ重要性・深さをあらためて教えてくれているように思います。
制度の議論は少し横に置き、目の前のご利用者や地域が何を望んでいるのか?について真剣に考える事で、ひょっとすると成功確度の高い事業アイデアが見えてくるかもしれません(正にA社のように)。
是非、そんなニュートラルな目線であらためて自らの周囲を見つめ直してみることをおススメする次第です。
公開日 2017/01/01
最終更新日 2018/04/15
12月9日、社会保障審議会・介護保険部会より「介護保険制度の見直しに関する意見」が出ました。この内容は大きく3つに分かれています。
1つ目は「地域包括ケアシステムの深化・推進」、2つ目は「介護保険制度の持続可能性の確保」、3つ目は「その他の課題」です。
そのなかで今回は、介護事業者にとって重要だと思われる2つ、「地域包括ケアシステムの深化・推進」「介護保険制度の持続可能性の確保」についてお伝えます。
個々の内容については、これまで開催された介護保険部会において議論されたものが積みあがったものであり、この場においても触れてきた論点が整理されたものであります。
ですから、今回のニュースレターは、この意見書個々の論点についての詳細ではなく、全体としてどうなったかという観点から確認してまいります。
ではまず、「地域包括ケアシステムの深化・推進」から見ていきます。
まず全体を見てみますと次の図の通りです。
※平成28年12月9日 社会保障審議会・介護保険部会資料より
ここには、大きく3つの論点があります。
「1、自立支援・介護予防に向けた取り組みの推進」「2、医療・介護の連携の推進等」「3、地域包括ケアシステムの深化・推進のための基盤整備等」です。
このなかで、今回注目したいのは「1、自立支援・介護予防に向けた取り組みの推進」のなかにある「(1)保険者等による地域分析と対応」です。
ここでは自立支援・介護予防を推進するにあたり、事業者のあり方について検討するだけではなく、それを管轄する保険者、つまり自治体等に着目するという考え方がとられています。
今後はデータに基づく分析が強化され、適切な指標による実績が評価されます。
それにより保険者である自治体等が「見える化」され、地域ごとの取り組み状況も明確になります。
その評価によってインセティブの付与も検討されており、自治体等にとっては社会保障費に対してより慎重に向き合うことにもなりそうです。
以前のニュースレターでも触れましたが、このことにより保険者である自治体などの動向で事業者にどう影響がでるかについては注視しておきたいところです。
この保険者機能の強化は、社会保障費抑制という観点から見たときに、これまでにない視点から踏みこんだという印象を受けます。
次にもうひとつ採り上げたい論点「介護保険制度の持続可能性の確保」について見ていきます
この論点も大きな視点から見てみますと3つの視点があります。
「利用者負担」「給付のあり方」「費用負担」についてです。
※平成28年12月9日 社会保障審議会・介護保険部会資料より
「利用者負担」については、現役並み所得者の3割負担の議論が更に進んでいます。12月19日、麻生財務相と塩崎厚生労働相との折衝においてこの合意がなされています。
※参照URL:http://www.joint-kaigo.com/article-2/pg125.html
「給付のあり方」については軽度者への支援のあり方についての議論が注目されました。介護保険部会の議論においても、また財務省の財政制度分科会の議論でも、軽度者は地域支援事業へ移行との流れがありました。しかしながら、この移行は今回見送られています。
とはいえ、この論点はこれで決着したというわけではなく、現に12月19日の折衝において麻生財務相と塩崎厚生労働相との間でこの議論が交わされています。
今回の改定でこそ見送られていますが、次期改定へ向けての動きは引き続き着目する必要がありそうです。
※参照URL:http://www.joint-kaigo.com/article-2/pg126.html
一方で「費用負担」については新たに「総報酬割」が導入されます。能力に応じた負担を求めることとなる「総報酬割」は、負担増が想定される層からの反対が多かったものの最終的には導入する方向でまとまりました。ここは、「介護保険制度を維持する」という観点からは、前へ踏み込んだ内容となったと言えそうです。
その導入工程も示され、2020年度に全面導入されます。
※参照URL:http://www.joint-kaigo.com/article-2/pg123.html
「介護保険制度の持続可能性の確保」という全体からみると、「利用者負担」「給付のあり方」というところでは大きな踏み込みがなかった印象を受けますが、「費用負担」においては新たに「総報酬割」の導入により一定の改革に踏み込んだ印象を受けます。
つまり、大きな枠組で捉えた場合、今回の改正は「費用負担」で踏み込んだ一方、「利用者負担」「給付のあり方」については、先に改革を持ち越したという印象を受けます。
ただし、この2つについても引き続き注視することは必要です。
今月は「介護保険制度の見直しに関する意見」ついてお伝えしました。この意見により2018年の報酬改定へ向けて大きな方向性は示されたと言えます。
今後の手続きとしては、議論は介護給付費分科会へと移され、より細かな報酬についての議論に引き継がれます。今後はこの行方について着目していきます。
ところで、これら議論がどこへ落ち着くにせよ、「そもそもこの制度はだれのためのものなのか?」「何の為にあるのか?」という視点が大事でしょう。
もちろん、制度維持のために実務的には事業者と調整すべき点が出てくることもあるかもしれません。しかしながら、「誰のための制度か」という視点こそ最も重要であると改めて感じます。
また、事業者にあっては、制度の活用は重要である一方、それが行き過ぎ制度に振り回されることがないよう、気をつけたいものです。
2018年の改定へ向けて、これからさらに具体的な議論が始まります。
私たちもそれを追いかけ、タイムリーな情報提供をしていきますので、引き続きよろしくお願い致します。
公開日 2016/12/01
最終更新日 2018/04/15
11月16日に開かれた「第132回社会保障審議会介護給付費分科会(以降、本分科会)と表記」において、かねてより話題に上っていた「介護職員の待遇改善(月額1万円)」の具体的方法論が示されました。
来年1月の加算率公表を経て、具体的に加算要件がスタートするのが2017年4月。事業者としては早めに準備を進めておく必要が高いであろう、という想いのもと、今月のニュースレターでは、新たに設けられる加算要件の内容について確認してまいります。
本分科会の中では新たな支給要件の対応案として、先ず、下記内容の解説が為されました。
※第132回社会保障審議会介護給付費分科会資料より抜粋
あらためて確認すると、事業者として「月額1万円相当の上乗せ加算報酬」を獲得するためには、下記2つの要件のクリアーが求められてくる、ということになります。
き定期に昇給を判定する仕組みを設けること(就業規則等の明確な書面での整備・全ての介護職員への周知を含む)
(=キャリアパス要件(Ⅲ))
この2要件のクリアーを条件とする加算区分が、これまでの処遇改善加算(I)の上に更にもう一つ設けられる、ということになる訳です。
ちなみに、この内容を分かりやすく図示したものが下記になります。
※第132回社会保障審議会介護給付費分科会資料より抜粋
更に、『「経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組みまたは一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み」とは具体的にどのようなものなのか?(現行の処遇改善加算(Ⅰ)の要件との違いは?)』という疑問が生じる事も想定した上で、下記のような解説資料も同時に開示されています。
しっかりと目を通し、今回の加算要件に対する理解を深めておくことが重要です。
※第132回社会保障審議会介護給付費分科会資料より抜粋
「月額平均1万円の処遇改善」の報酬を手にしたとしても、当然ながら、全ての介護職員に対して“平等”に1万円ずつを配分しなければならない訳ではなく、その配分基準については、上記➀経験②資格③評価等の基準づくりも含め、各々の事業者の人事戦略に委ねられることになります。
その意味においては、本加算の要件をクリアーすることは当然の事として、経営者としては、「この上乗せ報酬を有効活用して、どのように組織を活性化させるか?」についてもしっかりと計画を練っておく必要があると言えるでしょう。
そのためには入念な準備が必要となる事は間違いなく、早め、早めに行動に移されることを強くおススメする次第です。
当社としても今後、本テーマに対する新たな関連情報が入り次第、適宜、皆様に発信してまいります。
公開日 2016/11/01
最終更新日 2018/04/15
次期介護保険法改正・報酬改定へ向けて論点の整理を行っている、社会保障審議会・介護保険部会。12月の提言取りまとめを視野に、現在、個別の論点に対してもかなり具体的な意見が整理・集約されてきています。
事業者の皆様には早めに議論の動きをおさえておいていただきたく、今回のニュースレターでは同会で議論されているポイントについて抜粋してお伝えしてまいります。
現在の議論を整理・集約すると、大きく分けて下記5つに大別できるものと思われます。
今回は、このなかでも特にご質問・ご相談が多い(2)(3)の内容について触れてまいります。
先ずは(2)、人財確保関連(生産性向上・業務効率化)についてです。
人材確保関連に対する議論は、これまでもここで触れてきましたロボット・ICTの議論です。9月の介護保険部会において、ロボット・ICTの活用促進のために、ロボット・ICTを活用している事業所に対して介護報酬や人員・設備基準の見直し等を介護報酬改定時に検討することが提案されています。
また業務効率化等の観点から法令上提出が必要な書類等の見直しや、ICTを活用した書類の簡素化を求めた提案がされています。この流れはさらに加速しそうですし、公的資金の動向も含め着目しておきたい論点です。
※平成28年9月7日社会保障審議会・介護保険部会資料より抜粋
続いて(3)の論点について触れてまいります。
まず、同会にてとりあげられているサービスの全体について確認しておきましょう(下記)。
介護保険部会では、ケアマネジャーのあり方について、次の視点に基づいて審議が進められています。
特に④の利用者負担問題については、反対署名を22万筆以上集めたことを、「日本介護支援専門員協会」が6月の社員総会で明らかにしましたが、以降も賛否両論(下記)が併記されながら、現在も介護保険部会での審議は継続されています。最終的にどちらに着地するかは未知数ですが、事業者としては「1割負担が導入される」ことを前提に、今後の事を考えておいた方が賢明だと言えるでしょう。
尚、ケアマネジメントの利用者負担導入の際の議論の内容、論点は次の通りです。
※平成28年9月23日社会保障審議会・介護保険部会資料より抜粋
続いて、福祉用具・住宅改修の議論に移ってまいります。
福祉用具については、貸与価格の問題が議論されており、極端な価格差が生じないようにすることなどが論点とされています。
また、住宅改修にあっては、住宅改修の内容や価格について保険者が適正に把握・確認できるようにするとともに、利用者の適切な選択に資するための見積書類の様式や、複数の住宅改修事業者から見積りをとれるようにケアマネジャーが利用者に対して説明することができることを提案しています。
さらに共通項として、福祉用具や住宅改修が,利用者の自立支援、状態の悪化の防止、介護者の負担軽減等の役割を果たしていることも考慮した上で、価格設定や保険給付の対象範囲、利用者負担のあり方等について問題提起しています。
※平成28年10月12日社会保障審議会・介護保険部会資料より抜粋
続いて、軽度者への支援のあり方についてです。
10月4日の財政制度分科会では、「改革の方向性」(案)として,軽度者に対する生活援助については、地域支援事業に移行すべきとのまとめがなされています。
ところが,10月12日の介護保険部会の論点は(以下図参照)、その方向性とは異なっています。すなわち、まずは他のサービスの総合事業への移行状況や、「多様な主体」による「多様なサービス」を着実に進め、事業の把握・検証を行った上で地域支援事業への移行検討を行うべきとしています。正当な理由があるとはいえ、この段階で大きく方向性が変わることは余り例がなく,巷では選挙対策との噂が飛び交うほど注目された動きです。
※平成28年10月12日社会保障審議会・介護保険部会資料より抜粋
最後は、中重度の在宅生活を支えるサービス機能の強化についてです。
この議論は、小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などの地域密着型サービスの利用者数や事業所数を増やすなどの充実をどう図るかというのが焦点です。
具体的には、地域密着型通所介護について、小規模多機能型居宅介護等の普及のため必要があれば、市町村が地域密着型通所介護サービス事業者の指定をしないことができるしくみの導入や、在宅のケアマネージャーが(看護)小規模多機能にご利用者を紹介しても、プランの移動が生じないようにする等の提案が為されています。
このように、ここでの議論は、中重度者の在宅生活を支えるしくみとして,小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などの地域密着型サービスへの期待があらためて強く感じられる流れになっています。
2018年介護報酬改定の方向性は、もちろんすべて決まったわけではないにせよ、この12月のとりまとめへ向けて、その輪郭はかなり明確なってきています。事業者にあってはこうした動向を想定し、特に自社の経営に直接影響が出そうな論点については、体制整備、人材育成などいかに早い段階から手を打つことができるかが重要でしょう。
経営にあっては、まさにその対応力がこれから大きく問われることになりそうです。私たちも今後、更に有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。
公開日 2016/10/01
最終更新日 2018/04/15
公正取引委員会は9月5日、事業者の新規参入や創意工夫発揮の環境整備により、競争を促進し、消費者に良質な商品・サービスを提供、その比較・選択により商品・サービスの質の更なる改善を促すことを目指すとした「介護分野に関する調査報告書」を発表しました。
このような競争政策の観点から介護分野の考え方を整理することは、介護サービスの供給量の増加や質の向上が図られることにつながると考えられるとし、次の4つの視点が提示されています。
今まで介護分野についてはほぼ何も触れてこなかった「公正取引委員会」が敢えてこのような調査報告を出してきたことを考えると、本報告書の内容は2018年法改正含め、少なからず今後の介護経営に影響を及ぼしてくる、と考えるのが自然でしょう。
そのような前提認識のもと、今回のニュースレターでは、特に詳しくお伝えしたいと考える2点の内容について取り上げてまいります。
最初は「特別養護老人ホーム」に関するものです。これは現在、主に社会福祉法人が運営していますが、ここに風穴をあけることになります。
先ずは下記整理資料にご注目下さい。
上記資料にもある通り、本テーマに関する公正取引委員会からの主な指摘事項は次の通りとなっています。
1)医療法人,株式会社等が社会福祉法人と対等の立場で参入できるようにすることが望ましい(あわせて,補助制度・税制等に関するイコールフッティングについても要検討。)
2)自治体は,自らが設置する特別養護老人ホームにおいて,株式会社等を指定管理者とするように,指定管理者制度を積極的に活用していくべき。
3)自治体は,総量規制を適切に運用すべき。あわせて,具体的な事業者の選定に当たっては,選定基準を明確化し,客観的な指標に基づいて選定を行うなど,恣意性の排除を図るとともに,選定の透明性を図るべき。
特に上記 1)2)の指摘について、「株式会社等が社会福祉法人と対等の立場で参入できるようになることにより、確かに競争原理が働き、サービスの質の向上等が促進される」という期待効果は確かに一理あるかもしれません。
しかし、一方では、「営利法人という特性を持った法人が、果たしてセーフティネット機能を全うできるのか(=儲からなくなったらすぐに閉鎖してしまうのではないか)」というリスクも当然ながら潜んでいます。このあたりの論点について今後、どのように整合性を図っていくのかを注視する必要がありそうです。
もうひとつは、介護サービス・価格の弾力化、「混合介護の弾力化」についてとり上げます。
本テーマに関する公正取引委員会からの主な指摘事項は次の通りとなっています。
1)「混合介護の弾力化」を認めることにより、事業者の創意工夫を促し、サービスの多様化を図ることが望ましい。
2)その「混合介護の弾力化」。具体例としては、
◎保険内サービスの提供時間内に利用者の食事の支度に併せて、帰宅が遅くなる同居家族の食事の支度も行うことで、低料金かつ効率的にサービスを提供できるようになる可能性がある。
◎利用者が特定の訪問介護員によるサービスを希望する場合に、指名料を徴収したうえで派遣することが可能となる。
3)国は自治体により事業者の創意工夫を妨げるような運用が行われることがないよう、制度の解釈を明確化し、事業者の予見可能性や透明性を高めるべき。
「混合介護」に関して、「公正取引委員会」のここでの論点は、「事業者の創意工夫を促し、サービスの多様化を図る」という視点で切り込まれています。
一方で介護報酬のプラス改定要素が難しくなるなか(内閣府「経済財政運営と改革の基本方針」等)、保険サービスを補完する保険外サービスへの取組みとして着目されているところもあります。
28年3月には「保険外サービス活用ガイドブック」として厚生労働省、農林水産省、経済産業省が3省併記でまとめた報告書も発表されました。
こうした流れを加味すると、今回ここでとり上げられた事は、今後の「混合介護」のあり方に大きな影響を与えそうです。
さらに政府はこの後の9月12日「第1回未来投資会議」を開催しています。ここでの議論でも「介護は保険外サービスとの組み合わせが必要」との見解を示し、さらに「混合介護」を前進させるべく具体化へ向けた検討に着手しています。
こうした政府の動向をみても、「混合介護」取組みの流れは、ますますスピード感を増すことが予想されます。
このことは、介護事業者にあっては、制度内のいわば「均一のサービス」から「独自のサービス」を提供することが求められ、結果、事業も多様化してくることになりそうです。
しかしながら、ここで注意したいのは「では保険サービスは必要ないのか」という視点です。
「保険外サービスへの取組み」の重要性はいいとしても、それが強調されるあまり「保険内サービス」、つまり従来の基本的な「介護サービス」が軽視されてはいけません。
統計でも明らかなように多くの地域で高齢者人口はこれからも増えることが予想されています。
そのなかで必要なサービスを考えたとき、「保険内サービス」はやはり重要な介護サービスであることには変わりはないでしょう。
最適なサービス提供をしていくために、「保険内、保険外」といういわば「サービス供給者サイド」からの視点だけでなく「利用者サイド」の視点をもつことも重要ではないでしょうか。
※「(平成28年9月5日)介護分野に関する調査報告書について」資料の原本をご覧になりたい方はこちら↓
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/sep/160905_1.html
公開日 2016/09/01
最終更新日 2018/08/26
9月13日 ウィンクあいちにて開催いたしました第6回介護研究会、多くの方に参加いただき誠にありがとうございました。
愛知県中小企業団体央会 愛知県中小企業団体央会 連携調査部 主事 神谷典宏様を講師に迎え、
についてお勉強をいたしました。
後半は、ざっくばらんに懇談会をいたしました。
介護事業所にとって、現在(間違いなく将来も)もっとも重大な懸案事項のひとつは、人材不足です。
平成 27 年 6 月 24 日 に厚生労働省が発表した、『2025 年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について 』http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12004000-Shakaiengokyoku-Shakai-Fukushikibanka/270624houdou.pdf_2.pdf
によると、2025年には介護職員が約38万人不足(現在は約12万人不足)します。
いままのままの求人の仕方では、特に小規模事業所は、ますます人材確保が困難になってきます。
また、介護報酬の減額等で介護保険だけの事業形態では、やはり経営が苦しくなってきます。
そのような状況の中、中小の介護事業所が集まって、事業協同組合を作り、
など、自分たちの経営課題を解決できるコンテンツを構成する協同組合を作るご提案をさせていただきました。
皆さん真剣に聞かれており、積極的なご質問も多くいただき、興味の高さを感じました。
有意義な会だったと思います。
公開日 2016/08/31
最終更新日 2018/06/10
今秋の臨時国会での審議・通過を前提に、8月24日(水)に閣議決定された「平成28年度第二次補正予算(案)」
厚生労働省が提出した予算案の総額は5、698億円、内、1億総活躍社会関連の予算が4,477億円(全体の約8割)で、その内訳は、
となっています。
「平成28年度厚生労働省第二次補正予算(案)の概要」の中から介護事業者に関連がある項目を抽出し、皆様にお伝えしてまいりたいと思います。
「平成28年度厚生労働省第二次補正予算(案)の概要」の中で、特に介護事業者がおさえておくべき必要があると思われる項目は、次の11点です。
先ずは、介護人財の確保・定着、地域包括ケアシステムの促進に関連する予算項目5点から確認してまいります。
いったん仕事を離れた人が再び仕事に就く際の再就職準備金貸付事業について、介護人材の確保が特に困難な地域において再就職準備金を倍増するなどの拡充を行う。
⇒現場を離れた人に戻ってきてもらう呼び水として設けられ、復帰を条件に最大で20万円を貸し付け、2年間にわたって仕事を続ければ返済を免除する仕組みの「再就職支援準備金」。今回の上積みにより、「人材の確保が特に困難な地域において、準備金を倍増(20万円→40万円)するなどの拡充を行う」という方向性が示されています。
自社の管轄自治体がどのような対策を講じるのか、要注目の情報です。
介護施設等への介護ロボットの導入支援を行うとともに、介護ロボットを導入した場合の介護業務の効率化・負担軽減効果について実証検証を行う。
⇒昨年度の補正予算で約50億円もの予算が設けられた「介護ロボット等導入支援特別支援事業(※)」と比較すると小粒な動きに見えるかもしれませんが、生産性向上を目的として、国が「介護ロボット」の導入を促進・加速させたいという意向を持っている事は間違いありません、事業者としてもポジティブにとらえていく必要がありそうです。
※最大300万までの介護ロボット導入費用を10/10助成する事業。その後、申込過多により上限額を3分の1以下に減額。
ICTの活用による介護事業所での事務負担軽減や生産性向上の効果について、事業者、保険者、システム関係等の有識者による検討やモデル事業を行う。
⇒「生産性の向上(業務効率・労働時間短縮)」「海外人材対応(日本語を話すことは出来ても書くことは難しい)」「未来の経済的可能性(アジア国等への輸出展開)」を視野に、特に運営記録関連書類のICT化は今後、益々促進されてくることは間違いありません。
事業者としてもこの動きに対応すべく、タブレットの導入等、ICT化に対して準備・本腰を入れていく必要があるでしょう。
介護人材の処遇改善を平成29年度から遺漏なく実施するため、保険料の上昇回避のための財政安定化基金への特例的積増しに要する費用について、補助を行う。
⇒来年度から開始される「介護職員の給与月額平均1万円底上げ」の為の予算です。
当然ながら全職員に等しく1万円支給しなければならない、という訳ではなく、あくまで「平均1万円の底上げ」を実現すればよい事を含め、本財源をどう自社の人事戦略に活用していくか、早めに検討・決定しておいた方が良いと思われます。
地域づくりを通じた効果的な介護予防の取組事例を収集し、地域の実情に応じた住民主体の通いの場を全国に構築するための手法を分析・提示するとともに、住民に助言指導する都道府県等職員向けの研修を実施する。
⇒効果的な活動事例は草の根的に徐々に出始めているものの、まだまだ初動段階・暗中状態にあると言っても過言ではない「地域包括ケアシステム」。
是非、様々な情報を「見える化」「共有化」することで、活性化を実現していただきたく思います(これは現時点では「事業者」というよりも「自治体」の動きに紐づく予算です)。
続いて、施設整備に関する2点の予算について確認してまいります。
障害者等のグループホームや就労支援事業所等の整備に要する費用について、補助を行う。また、障害者支援施設等の防犯対策を強化するため、非常通報装置・防犯カメラの設置や外構等の設置・修繕などの必要な安全対策に要する費用について、補助を行う。
高齢者施設等の防災対策を推進するため、スプリンクラーの整備、耐震化等に要する費用について補助を行う。
また、防犯対策を強化するため、非常通報装置・防犯カメラの設置や外構等の設置・修繕などの必要な安全対策に要する費用について、補助を行う。
⇒特に「防犯対策強化」に関しては、やはり、相模原の事件が大きく影響しているのでしょう。
最後に「雇用(管理)」の観点から4点の予算を確認してまいります。
仕事と介護の両立に資する職場環境整備に加え、労働者の円滑な介護休業の取得・職場復帰や介護のための時差出勤制度などを実現した事業主を支援する。
ハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者として生活保護受給者等を新たに雇い入れた事業主に対し、助成金を創設する。
中小企業において有期契約労働者等の賃金規定等を改訂し、3%以上増額した場合、生産性向上を加味し、助成額の加算を行う。
65歳以上への定年の引上げ、定年の廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入のいずれかの措置を実施した場合に、当該措置の内容に応じて一定額を助成する65歳超雇用推進助成金(仮称)を創設する。
国が「予算を確保する」ということは即ち、「国としてこの分野・テーマに注力する(=お金をかける)」ということと同義であり、その意味においても、特に上記11点の情報・視点は、介護事業者として要注目すべき情報であることは間違いありません。
是非、戦略的視点を持ちつつ、「この情報をどう活用・取り込み出来るか?」という発想で、社内で検討されてみることをおススメ致します