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【令和8年版】介護・障害福祉の処遇改善加算の返還リスクを回避!よくある7つのミスと確認ポイント

【令和8年版】介護・障害福祉の処遇改善加算の返還リスクを回避!よくある7つのミスと確認ポイント

公開日 2026/05/10

社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、実務に役立つ情報を中心に発信しています。

今回は、処遇改善加算について取り上げていきたいと思います。

介護や障害福祉サービスにおける処遇改善加算は、現場で働く職員の処遇改善や賃金向上を図る重要な制度です。実績報告の時期が近づくと「計算や書類の不備で返還の対象になってしまわないか」と不安を抱える管理者や事務担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。 本記事では、実績報告で起こりやすいミスや差戻しを防ぐポイントを解説します。

ぜひ、参考にしてみてください!

処遇改善加算で「返還」が求められるのはどんな時?

処遇改善加算の要件を満たしていない場合、加算額の全部または一部について返還を求められる可能性があります。ただし、ミスの内容によって行政の対応は異なります。まずは、返還や行政処分につながり得るケースを整理していきましょう。

悪質なケースと事務的ミスの違い(目安)

  • 悪質なケース:架空請求、賃金改善の未実施、虚偽報告など
  • 事務的な不備:計算誤り、要件の解釈違い、書類の記載漏れなど

悪質な不正請求や虚偽報告にあたり得るケース

架空の職員を配置したように見せかけたり、加算を取得しながら必要な賃金改善を行わなかったりする行為は、悪質な不正請求や不適切な運用と判断され、指定取消しなどの行政処分につながる可能性があります。

介護分野では、介護保険法第22条第3項に基づき、不正利得に該当すると判断された場合、返還対象額に加えて40%相当の加算金が徴収されることがあります。

出典:介護保険法(第22条:不正利得の徴収等)|e-Gov法令検索

一方、障害福祉分野でも、障害者総合支援法に基づく名古屋市の行政処分事例では、虚偽記録や実態と異なる書類提出を伴う不正請求により、指定取消しや返還措置につながったケースが示されています。こちらは障害福祉分野の処遇改善加算そのものの事例ではありませんが、障害福祉分野でも虚偽請求が重い処分につながり得る点には注意が必要です。

出典:名古屋市健康福祉局障害福祉部「令和6年度に実施した行政処分の概要について」

単なる計算誤りや書類不備の場合の取り扱い

意図的ではない計算ミスや書類不備があっても、直ちに重い処分につながるとは限りません。実際の取扱いは、不備の内容、故意性、是正状況、自治体の運用によって異なります。ケースによっては、書類の訂正・再提出、不足分の調整、返還などの対応が必要になることがあります。

 

実績報告の作成中に計算ミスや配分不足が見つかった場合は、早めに自治体の担当窓口へ相談し、必要な修正や追加対応を進めることが大切です。隠さず対応することで、実務上の影響を抑えやすくなります。

処遇改善加算の実績報告でよくある7つのミス

ここからは、実績報告書の作成・点検時に注意したい7つのポイントを見ていきます。

ミス1:賃金改善額が加算収入額を下回っている

処遇改善加算の基本要件である「賃金改善額が加算収入額以上」であることを満たしていないケースです。賞与や一時金で調整した結果、想定より加算収入が多くなり、配分不足が生じることがあります。

満たすべき要件(数式)
賃金改善額 ≧ 加算収入額

年度末に慌てないよう、定期的に進捗を確認しておくことが大切です。

出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-9

ミス2:配分対象や配分根拠の整理が不十分

誰を対象に、どの考え方で配分するのかの整理が不十分なケースです。

介護分野では、介護職員の処遇改善を重視する制度趣旨を踏まえつつ、介護職員以外の職種も賃金改善の対象に含めることができます 一方で、職務内容や勤務実態との関係が分かりにくい配分や、算定対象事業所との関係が不明確な配分、特定の職員や事業所に著しく偏った配分については、実績報告や指導時に説明を求められる可能性があります。実績報告や指導対応を見据え、対象者の範囲、配分ルール、配分理由を整理しておくことが重要です。

出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問2-1、問2-1-2
厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」2(2)

 

ミス3:法定福利費の事業主負担分の計算誤り

賃金改善に伴って増加した法定福利費(社会保険料や労働保険料の事業主負担分)を賃金改善額に含める際の計算ミスです。根拠資料が残っていないと、指導時に適正な改善額として説明しにくくなることがあります。

出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-7

ミス4:就業規則や給与規程と実際の支給実態が合っていない

賃金改善に関する手当や支給ルールが給与規程に十分反映されていない、または古い規程のまま運用しているケースです。

 

実地指導(運営指導)では、賃金規程の記載内容と実際の支給実態の不一致が問題になることがあります。加算要件を満たすには、支給だけでなく根拠となるルール整備も欠かせません。

出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」〔ミス4〜6共通〕

 

ミス5:キャリアパス要件に関する記録や資料が残っていない

キャリアパス要件を満たすために実施した研修、周知、評価運用などについて、内容を確認できる記録や資料が不足しているケースです。研修、周知、人事評価や昇給運用の状況を説明できるよう、日時・参加者・内容などが分かる資料を保存しておくことが望まれます。

ミス6:職場環境等要件の取り組みが実施・周知されていない

処遇改善計画書に記載した職場環境改善の取り組みを実施していない、または現場職員に十分周知できていないケースです。ICT導入やミーティング開催などが計画どおり行われているか、定期的に振り返ることが有効です。

 

ミス7:自治体の提出期限やローカルルールを見落としている

実績報告書の提出期限遅れや、指定権者ごとの提出方法、様式案内、提出先の違いを見落としているケースです。期限の厳守と最新情報の確認は欠かせません。

愛知県でも、実績報告の提出がない場合は、加算要件を満たしていない不正請求として全額返還となることがある旨が公式に案内されています。

出典:令和8年度介護職員等処遇改善加算の届出について(愛知県指定分)|愛知県公式ウェブサイト

 

差戻しや返還リスクを下げるための具体的な予防策

処遇改善加算の実績報告に関するミスは、日々の運用のズレがあとから表面化するケースが少なくありません。そのため、返還リスクや差戻しリスクを下げるには、書類作成の段階だけでなく、日頃から確認しやすい運用体制を整えておくことが重要です。ここでは、事業所が実務上取り入れやすい4つの予防策を紹介します。

予防策1:担当者任せにしない「確認フロー」を作る

処遇改善加算の管理が一人の担当者に集中すると、加算収入の見込み、賃金改善の進捗、賞与での調整要否などが属人的になり、年度末になって初めて不足や計算ミスに気づく原因になります。そこで、月次または四半期ごとに確認する項目を決めておくことが有効です。

たとえば、以下の項目を一覧で確認できるようにしておくと、数字のズレを早めに把握しやすくなります。

  • 加算収入の見込額・実績額
  • 賃金改善として支給した基本給、手当、賞与の累計
  • 法定福利費の反映状況
  • 退職・採用による配分見込みの変化
  • 追加調整の要否

出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-2、問1-7、問1-8-2、問1-9

予防策2:賃金改善の考え方を法人内で統一する

経理・労務・現場管理者の認識がずれていると、「この手当は賃金改善に含める想定だった」「この職種は対象外と思っていた」など、判断のばらつきが起こりやすくなります。こうしたズレは、配分根拠の説明不足や、規程と運用の不一致につながります。

そのため、法人内では少なくとも以下の点を共有しておくことが重要です。

  • 誰を配分対象とするか
  • どの賃金項目で改善するか
  • 基本給・毎月手当・一時金をどう使い分けるか
  • 昇給や賃金体系との関係をどう整理するか
  • 就業規則や賃金規程に何を反映させるか

特に、旧ベースアップ等支援加算から現行制度へ移行した事業所では、以前の手当設計や支給ルールが残っている場合もあるため、現行制度に照らして整合しているか確認しておくと安心です。

出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-3、問2-1、問2-1-2
厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」3(1)②④

 

あわせて、過去のベースアップ等支援加算から現行制度への移行状況や、毎月払いの手当や一時金の考え方を実務目線で整理したい場合は、以下の解説記事も参考になります。もっとも、正式な要件確認は厚生労働省の通知・Q&Aもあわせて行うのが安全です。


参考記事:介護職員等ベースアップ等支援加算は今どうなっている? 現行ルールと実務対応を社労士が解説

予防策3:実績報告に必要な資料を年間を通じて整理する

実績報告や運営指導では、要件を満たしているだけでなく、実際の運用を資料で説明できるかが重要です。年度末にまとめて探すと、研修記録、周知資料、規程改定履歴などが散在していることもあります。

そのため以下について、紙またはデータで一元管理しておくと、確認や説明がしやすくなります。担当者交代時の引継ぎにも有効です。

  • 計画書、実績報告書の控え
  • 就業規則、賃金規程、改定履歴
  • 研修計画、実施記録、参加者一覧
  • キャリアパス要件や周知状況が分かる資料
  • 職場環境等要件の取組内容が分かる資料
  • 加算額と賃金改善額の計算根拠資料


出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」3(1)②③④⑦

予防策4:年度末前に自主チェックの時期を決めておく

差戻しや返還リスクは、提出直前に初めて確認を始めることで高まりやすくなります。そこで、実績報告の少し前に自主チェックの時期をあらかじめ設定しておくことが有効です。

たとえば、以下のように流れを決めておけば、期限超過や提出誤りだけでなく、数字や資料面の見落としも防ぎやすくなります。複数事業所を運営している場合ほど、余裕をもった確認が重要です。

  • 賃金改善額が不足しそうかを試算する
  • 未整理の資料がないか確認する
  • 指定権者ごとの提出先、期限、様式を再確認する
  • 不明点があれば早めに自治体へ照会する


出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-9

 

まとめ:日々の運用を整えつつ、判断に迷う場面は専門家の活用も検討を

処遇改善加算の差戻しや返還リスクを下げるには、実績報告の直前だけでなく、日頃から賃金改善額の進捗確認、配分ルールの整理、就業規則や賃金規程の整備、必要資料の保存を進めておくことが重要です。

一方で、処遇改善加算の制度解釈や適正な給与計算、就業規則の改定には専門的な労務知識が求められます。自治体ごとの運用差もあるため、事業所単独では判断に迷う場面もあるかと思います。

自社の規程が、介護保険法や障害者総合支援法に基づく制度、関連通知、自治体案内等に適切に対応しているか確認したい場合や、実績報告に向けた労務管理を点検したい場合は、介護・福祉業界に強い社会保険労務士のサポートを活用するのも有効です。もし処遇改善加算への対応で不明点やお困りごとがあれば、社会保険労務士法人エンジーまでお気軽にお問い合わせください。 

 

(参考資料)

この記事は以下の資料を参照し作成しています。

 

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