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【2025年10月施行】就労選択支援制度とは?目的や他の制度との違いを介護福祉専門社労士が詳細に解説!

著者:enjie_me-admin

【2025年10月施行】就労選択支援制度とは?目的や他の制度との違いを介護福祉専門社労士が詳細に解説!

公開日 2025/06/30

みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。

 

2025年10月から「就労選択支援」という新たな就労支援サービスが始まろうとしています。この記事では「就労選択支援」の具体的なサービス内容や、ほかの就労支援サービスとの違いを詳しく解説します。

就労選択支援とは?

厚生労働省の発表では、2022年12月時点で障害福祉サービスの利用者数が約99万人に迫り、ここ数年で顕著な増加傾向を示しています。

従来は、働く力と意欲のある障害のある方が「移行支援」「継続支援」「一般就労」のいずれかを選択し、そのまま利用開始する仕組みでしたが、実際には「自分に合わないサービスを選んでしまい、すぐに辞めてしまう」というミスマッチが多く発生してしまっていました。

そういったミスマッチをなくすために、利用前に本人の希望・適性・能力を可視化し、最適な進路を選べるようにと新たに設けられたのが「就労選択支援制度」です。

 

就労選択支援制度

2025年10月から始まる「就労選択支援制度」は、2022年10月に「障害者総合支援法」という法律の改正が成立されたことによって新設された支援制度で、障がいのある方が「自分に合った働き方を、一度お試し・点検してから選べるようにする短期サービス」と捉えていただくとわかりやすいかと思います。

障がいのあるご本人の希望や適性・能力に合った就職先や就労支援サービスが選べるよう、支援者が「アセスメント」と呼ばれる利用者の特徴やニーズ把握を行いサポートするのが目的で作られた制度であり、障害者総合支援法に基づいて定められています。

なお就労選択支援は、あくまで障がいのある人の自己決定をサポートする制度であり、就職先や利用する障害福祉サービスの振り分けを行うものではありません。

制度のポイント

就労選択支援の特徴は

  1. 短期集中で結果を出す
  2. 多機関連携による客観的評価
  3. 結果を次の支援へスムーズに引き渡す

という三本柱にあります。

就労選択支援は、障がいを持つ方の就労をサポートするサービスですが、利用者が「主体的」に就労先を選択できるような支援をすることが最大の目的です。

対象となる方

就労選択支援は、原則18歳以上で、就労移行支援・就労継続支援の利用を新たに希望する方だけでなく、既に利用中の方も対象者に含まれます。特別支援学校の高等部生など、卒業後の進路を模索する若年層も利用できます。

特に、就労継続支援A型やB型に関しては、一度利用が始まってしまうとなかなか環境や状況を変えることが難しいため、障がいを持つ方が自分に合う働き方を見つけるために、今後、就労選択支援が重要な役割を担うことになります。

就労選択支援の利用期間

利用期間は、原則1か月です。ただし、適性の把握などで作業体験を継続的に行う必要がある場合は、2か月に延長されます。

他の就労支援サービスとの違い

障害福祉の就労支援には、今回新たにスタートする「就労選択支援」以外にもいくつかの種類があります。 まず就労選択支援で適性を見極めてから、その後に選択ができる支援ですので各サービスの違いを順番に確認していきましょう。

就労継続支援

就労継続支援(A型・B型)は、 “働く場そのもの” を提供し、利用者に「働き続ける経験」を積んでもらうことが目的の支援です。A型は原則として18歳から65歳未満の人を対象としており、雇用契約を結び最低賃金を保証します。B型は基本的に年齢制限はなく、雇用契約を結ばず工賃を受け取りながら働くこととなります。

一方、就労選択支援は、就労選択支援は契約を伴わない短期実習を通じて、「どの現場が合うかを測る前段階」に特化する点が大きく異なります。

就労移行支援

就労移行支援は「一般就労への就職決定」がゴールとなります。18歳〜65歳未満の人を原則対象としており、ビジネスマナー、履歴書作成、面接練習、職場実習、就活同行などを最大2年間で包括的に行います。

一方、就労選択支援は「移行支援に進むか、それとも別ルートにするか」を判断することができる準備・見極めフェーズとなります。

就労定着支援

就労定着支援は、企業訪問・本人面談・助言で離職リスクを下げることが目的です。就業時間や人間関係の調整など環境面をサポートし、一般就労が決まって7か月目から最大3年6か月、働き続けるための“出口フォロー”のような支援です。

就労選択支援は就職前の選択フェーズなので就職・長期サービス利用の前に行う“入口チェック”のサービスといえます。入口と出口で役割がはっきり分かれていると覚えておきましょう。

それぞれの支援のつながり

就労選択支援で「この会社なら続く」という筋道を立てる

  ↓

就労移行/継続支援でスキルを磨き就職

  ↓

就労定着支援で新しい職場での長期定着を後押し

 

それぞれの役割をしっかり把握し、利用者一人ひとりの希望や適性に合わせて適切に組み合わせていくことで「ミスマッチのない進路決定 → 十分なスキル習得 → 安定した職場定着」という好循環を生み出すことができます。

就労選択支援はどこで利用できる?

就労選択支援は以下のような各地域の就労系障害福祉サービス事業所などの、就労支援機関で利用することが可能です。

  • 就労移行支援事業所
  • 就労継続支援事業所
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 自治体設置の就労支援センター
  • 障害者職業能力開発訓練事業所 など

 

ちなみに、就労選択支援の実施主体機関となる要件として以下の条件が定められています。

 

  • 過去3年間において3人以上、通常の事業所に障がい者を雇用させていること
  • 障害者就労支援に一定の経験や実績があること
  • 定期的に自立支援協議会に参加したり、ハローワークへの訪問をしたりして情報収集に努めること

この条件を満たした就労支援機関のみが、就労選択支援を実施することができます。

就労選択支援制度 利用の流れ

就労継続支援や就労移行支援などのサービスを利用している方や、働く意思があり就労支援を検討している障がいを持つ方を対象とした「就労選択支援」ですが、具体的にどのような流れでサービスを受けられるのか?解説いたします。

1. 相談・申請

まず利用者ご本人またはご家族が、お住まいの(住民票のある)市町村窓口か計画相談支援事業所へ相談し、意向を確認します。サービスコード「自立訓練(就労選択)」で受給者証を申請します。越境利用も認められていますが、支給決定はあくまで居住地の自治体が行います。

2. アセスメント

事業所内の作業体験や企業実習、職業興味検査などを組み合わせ、利用者の強み・課題を多角的に評価します。支援員は観察記録を蓄積し、客観性を高めるのがポイントです。

3. 計画作成

ハローワークや学校、医療機関などと連携したケース会議でアセスメント結果を共有し、個別の就労選択プランを作成します。ここで次に進むサービスがほぼ確定します。

4. サービス利用

計画に基づき、1日あたり1,210単位(2025年10月告示時点)の報酬でサービスを提供。終了時に評価書を作成し、移行支援・継続支援A/B型・一般就労などの次のステップへバトンタッチとなります。

 

就労選択支援では、障がいを持つ方ご本人の就労能力や適性、希望を考慮し整理した内容を企業や就労継続支援事業所などの機関と連携することで、適正な就労先を選択することが可能となります。

就労選択支援の利用によってご本人と決定した就労先に就いたあとも、希望に応じていつでも就労選択支援が利用できます。そうすることによって、就労後本人の希望や状況が変わった場合も、変化に応じた選択ができるのです。

就労選択支援の報酬算定

基本報酬は 1日あたり1,210単位です。

ただし、就労選択支援を終えた利用者の8割超を同一法人が運営する就労移行支援・就労継続支援へ誘導した場合、200単位の減算が適用されます。処遇改善加算や特定加算は、ほかの自立訓練系サービスと同じく上乗せ可能です。
導入前には必ず収支シミュレーションを実施し、減算リスクを織り込んだ運営計画を立てておきましょう。

また、就労継続支援 A 型・B 型の事業所は 過去3年間に3名以上の就労実績 があれば、就労選択支援を一体的に提供できます。ただし、利用者の囲い込みを防ぐために中立性を担保するルールが複数設けられています。

たとえば、アセスメント結果をまとめる際には関係機関を交えたケース会議を開催し、議事録を整備することが必須です(会議を実施しないと報酬請求は認められません)。これらの要件を満たす体制づくりを早めに進めることが重要です。

 

特定事業所集中減算(8割超誘導で▲200単位)は見落としがちです。自法人で複数サービスを運営する場合、計画段階から“誘導割合”を定期的にモニタリングしましょう。

制度を利用するメリット

利用者のメリット

本制度を活用すると、障がいのある方ご本人の「やってみたい」「こう働きたい」という思いを尊重しつつ、特性に基づく得意分野と課題を可視化できます。そのうえで最適な支援メニューを選べるため、本人が思い描くキャリアの実現可能性が大きく広がります。

ミスマッチによる短期離職や「また振り出しに戻る」事態を防止することができるだけでなく、短期間の作業体験で自信や成功体験を積めるため、モチベーションが維持しやすいところもメリットの一つと言えるでしょう。

事業所のメリット

もちろんこの制度は、企業サイドのメリットもあります。
ミスマッチによる離職が減る、つまり“適材適所”の配置が促進され、スタッフ負担や教育コストを削減できるほか、計画外離脱の減少で報酬減算リスクも低減することができます。

また、法定雇用率の達成圧力が強まるなか、少子化による人材不足を補う選択肢として障がい者雇用の重要性は高まっています。障がい者の採用経験が浅い企業でも、就労系福祉サービス事業所と連携すれば、採用の立ち上げから職場定着までをスムーズに進められる有効なルートとなるでしょう。

 

利用者だけでなく事業者としても、「ミスマッチの低減」は目指すべき姿です。社会全体が希望を持てる未来へ進んでいきましょう。

制度を利用する上での注意点

制度の制約事項

延長できるのは1回のみで最長2か月。日中活動サービスとの同日併給は原則不可です。また、前述の特定事業所集中減算にも留意しましょう。

申請時の注意点

選択支援員は所定の養成研修を修了している必要があります。研修枠が限られる自治体もあるため、早めの受講計画が不可欠です。受給者証の支給決定期間は、連続利用を想定して余裕を持たせて申請するとスムーズに移行できます。

まとめ

2就労選択支援は、障害のある方が自分に合った働き方を短期で試し、確かめるための新制度です。経営者や事業者にとっては、ミスマッチを防ぎながら定着率を上げる絶好のチャンスでもあります。

 

福祉実践の土台を成すのは、法令と制度の枠組みです。障がい福祉の分野も大きく変化しており、今回の就労選択支援はその新しい流れの一つです。

制度開始は目前です。2025年10月に向けて、スタッフ研修や体制構築、自治体との連携を今から整えていきましょう!

社会保険労務士法人エンジーでも、介護福祉に強みを持つ専門家として、皆様を全力でサポートしていきます。
様々な課題や具体的な対策について、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ

この記事は、厚生労働省が就労選択支援について2024年6月5日までに示した資料をもとに説明しています。最新の情報は、厚生労働省のWebサイトをご確認ください。

厚生労働省「障害福祉サービスについて」
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」(PDF)

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