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業務継続計画(BCP)の策定が義務化されました―2024年から介護報酬の未策定減算が適用されます!

著者:enjie_me-admin

業務継続計画(BCP)の策定が義務化されました―2024年から介護報酬の未策定減算が適用されます!

公開日 2022/05/09

最終更新日 2024/11/08

みなさん、こんにちは!

社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。

2024年4月より、施設系・在宅系を問わず介護事業所では「BCP」の策定が義務化されました。そこで今回は、そもそもBCPとは何か、どのような計画を策定する必要があるのか、策定のポイントなどについて、解説いたします。

そもそもBCPとは?

 

そもそもBCPとは
どういったもの
なのでしょうか。

BCPの目的や背景

「BCP」とは、Business Continuity Planの略称で、一般には「事業継続計画」などと翻訳されています。厚生労働省では「業務継続計画」の翻訳が使用されていますので、このブログでは「BCP」あるいは「業務継続計画」と記載していきます。

BCPの目的は、大地震や水害などの自然災害、感染症の蔓延といった不測の事態が発生した場合でも、可能な限り業務を継続したり、早期に復旧したりできるよう備えることです。

●地震で公共交通機関が止まり、職員が出勤できなくなった。
●大雨で堤防が決壊し、事業所周辺が水没・孤立した。
●電気、ガス、水道の途絶でエレベーターや風呂・トイレ、台所が使えなくなった。
●利用者様や職員の間で感染症のクラスターが発生した。

こういった非常事態が現に発生した際に、対応できるよう、あらかじめ備えておく準備、という意味合いがあります。
BCP策定が義務化される2024年以降は、そういった非常事態が発生しても「想定外だった」では済まされません。

厚生労働省の定義

BCP(業務継続計画)の必要性がわかったところで、まずは厚生労働省がどのように定義しているか、ガイドラインで確認しておきましょう。

BCPは「「平常時の対応」「緊急時の対応」の検討を通して、①事業活動レベルの落ち込みを小さくし、②復旧に要する時間を短くすることを目的に作成された計画書」(出典:厚生労働省「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」)と定義されています。

つまり、被災時や緊急時であっても、影響を最小限にとどめながら可能な限り事業を継続する、早期復旧の準備をしておくために、それらを計画として備えておくということになります。

防災計画と業務継続計画の違い

この記事を読まれている方の中にも、自然災害を想定した「防災計画」などをすでに策定しているという方も多いのではないかと思います。

この既に策定している防災計画を、BCP(業務継続計画)にすることはできないだろうか?と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結論としては、防災計画とBCPではその目的や対策の検討範囲などが異なるため、残念ながらそのまま同じものを使うことはできません。ただし、両者には共通する要素も多く、内容を一体的に検討していくことが有効です。

 

それぞれの違いについて、
厚生労働省のガイドラインを
確認しましょう!

防災計画の目的は、
「身体、生命の安全確保」「物的被害の軽減」
とされています。

一方、BCPの目的は、
「身体、生命の安全確保に加え、優先的に継続、復旧すべき重要業務の継続または早期復旧」
とされています。

また、重視する事項についても、防災計画では死傷者数や損害額の最小化を挙げているのに対して、BCPではそれらに加え、下記の事項についても重点的に検討することとされています。

●重要業務の目標復旧期間・目標復旧レベルを達成すること
●経営及び利害関係者への影響を許容範囲内に抑えること
●利益を確保し企業として生き残ること

出典:厚生労働省「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」

 

つまりBCPにおいては、防災計画で定められているような安全確保に加えて、被害を最小限にしつつ、業務を継続していくための手段について検討するよう求められています。

なぜ義務化になるの?

 

重要性・必要性が理解
できたところで義務化の
背景について説明します。

BCP義務化の背景

介護事業所でBCPの策定が義務化される背景について、厚生労働省のガイドラインでは下記のように説明がされています。

 

——-
介護施設等では災害が発生した場合、一般に「建物設備の損壊」「社会インフラの停止」「災害時対応業務の発生による人手不足」などにより、利用者へのサービス提供が困難になると考えられています。

一方、利用者の多くは日常生活・健康管理、さらには生命維持の大部分を介護施設等の提供するサービスに依存しており、サービス提供が困難になることは利用者の生活・健康・生命の支障に直結します。

上記の理由から、他の業種よりも介護施設等はサービス提供の維持・継続の必要性が高く、BCP 作成など災害発生時の対応について準備することが求められます。
——-
出典:厚生労働省老健局「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」

 

製造業など他の業種と異なり、介護事業は利用者様の生活・健康・生命と直接的にかかわっています。それゆえにこの度、BCP策定が義務化されたということです。

義務化の対象となる介護事業者は?

義務化の対象については、「全ての介護および障害福祉サービス事業者」です。
令和3年度介護報酬改定において、下記のように扱われました。

 

——-
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける。(※3年の経過措置期間を設ける)
——-
出典:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」

 

そして、3年の経過措置期間が終わる令和6年4月までに策定を完了していなくてはならないこととされていましたが、今年度の介護報酬改定では、業務継続計画未策定事業所に対する減算が導入されました。

 

——-
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続に向けた計画の策定の徹底を求める観点から、感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合、基本報酬を減算する。
——-
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」

 

つまり、現在は一部例外はありますが、訪問介護や訪問看護、通所介護(デイサービス)、共同生活介護(グループホーム)、小規模多機能型居宅介護等のほか、福祉用具貸与・販売や居宅介護支援に至るまでのあらゆる事業所で、BCPの作成が求められているということになります。

なお、居宅療養管理指導については、事業所のほとんどがみなし指定であることや、体制整備に関する更なる周知の必要性等を踏まえ、令和6年3月31 日までとされている義務付けに係る経過措置期間を3年間延長するとされています。

BCPを策定するメリットは?

 

BCPを策定することには
義務化に対応するためだけでなく
きちんと効果があります。

命を守れる

BCP策定の一番のメリットとして、入居者・利用者の方の命や職員の命を守るための行動を取れるようになる、ということが挙げられます。
感染症や非常災害の発生時における対応をあらかじめ決めておくものであるため、いざというときにも人命を守るための行動を取ることができるようになります。

事業を守れる

感染症や非常災害の発生時はどうしても平常時よりも人員等のリソースが限られた状況で業務遂行を行うことになるため、必然的に業務効率化について検討することとなり、経営上の改善につながることが考えられます。
さらに、BCPによって人命が守られ、事業の早期回復に繋がります。そのため、経営に対するダメージが少なくなり、事業を守ることができます。

税制優遇や補助金支援を受けられる

BCP策定そのものに対する全国一律の直接的な税制優遇があるというわけではありませんが、防災や減災のために行った設備投資に対しては、税制優遇措置が適用されることがあります。

例えば、防災・減災設備投資に関する特別償却として、「中小企業防災・減災投資促進税制」という制度があります。
これは、防災・減災に関わる対象設備(非常用発電機や感染症対策に対応する空調や換気システムなど)を導入することで、最大20%の特別償却が受けられるというものです。

また、自治体独自にBCP策定にかかるコンサルティング費用や、設備の導入費用の補助をしてくれる場合もありますので、国の制度だけでなく、自治体の制度についてもアンテナを張っておくことも重要です。

業務継続計画未策定減算の新設

先ほども書いたように、令和6年度の介護報酬改定で、新たに「業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入」が行われました。

感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続に向けた計画の策定の徹底を求める観点から「感染症若しくは災害のいずれか、または両方の業務継続計画が未策定の場合は基本報酬を減算する」とされています。

なお、令和6年4月1日以降にBCPが未策定であることが判明した場合は、基準を満たさない事実が発生した時点まで遡って減算が適用されます。
(※居宅療養管理指導及び特定福祉用具販売は減算の対象外とされています。)

例:令和7年10月の運営指導でBCP未策定が判明した場合
×令和7年10月から減算
○令和6年4月まで遡って減算

 

減算単位

・施設系・居住系サービス:所定単位数の3%に相当する単位数を減算
・その他のサービス:所定単位数の1%に相当する単位数を減算

 

経過措置

・「感染症の予防とまん延防止の指針」と「非常災害に関する具体的計画」を策定していれば、令和7年3月31日までの間、減算は適用されません。

・介護サービスのうち、訪問介護、(介護予防)訪問入浴介護、(介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーション、(介護予防)福祉用具貸与、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、(介護予防支援)居宅介護支援については、令和7年3月31日までの間、減算は適用されません。

・障害福祉サービスのうち、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、自立生活援助、就労定着支援、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援、計画相談支援、障害児相談支援、地域移行支援、地域定着支援については、 「非常災害に関する具体的計画」の策定が求められていないこと等を踏まえ、令和7年3月31日までの間、減算は適用されません。

・障害福祉サービスのうち、就労選択支援については、令和9年3月31日までの間、減算は適用されません。

「自然災害」と「感染症」それぞれに対する計画が必要

2パターンのBCPが必要

一言で「業務継続」といっても、対応の仕方は感染症と非常災害で大きく異なります。そこで、BCPの計画も、感染症に対応するものと非常災害に対応するもの、それぞれを想定した2パターンを作成する必要があります。

感染症に関する計画

ここでの感染症は新型コロナウイルス感染症を想定したものになっています。
つまり、事業所において新型コロナウイルス感染症が発生した場合であっても、利用者や職員の感染リスクを低減するために必要な対策や、人繰りなどの問題などへの対応を検討する必要があります。

非常災害に関する計画

非常災害はイメージがしやすいと思いますが、地震や大雨などの自然災害を想定したものです。
非常災害の場合は、感染症とは異なり、物理的な被害が発生するという特徴があります。
入居されている方の生活の場をどう確保するのか等、検討すべき事柄はたくさんあります。

これら2つの計画を策定して初めて、BCP策定義務化に対応していると言えるのです。
以下に感染症と非常災害のそれぞれの違いについて整理いたします。

 

【感染症】

発生直後 感染者、濃厚接触者の検査を進め、感染対策を強化。
発生後数日間 感染対策とケアの両立、職員が感染者・濃厚接触者となった場合は隔離や代替要員の確保を進める。
数日経過以後 収束まで、上記の状況が続く。
ポイント 完全な感染収束・復旧に時間を要するため、長期的な職員の確保や心理的ケアが必要となる。

 

【非常災害】

発生直後 全面的な業務停止のリスクあり。停電・断水等ライフラインの途絶も。
発生後数日間 人命救助の「72時間の壁」。多くの場合、停電は数日で復旧。
数日経過以後 順次、ライフラインや物流などが復旧。
ポイント 発災数日はライフラインの途絶や救助遅れも想定されるため、そこに重点を置いた準備が必要となる。

発生後の時間経過に伴う変化

BCP策定における感染症と非常災害の主な違いは、時間的経過にともなう変化という点にあります。
感染症への対策は、長期的な対応が必要となります。感染対策をしながらのケア、感染や濃厚接触で休業する職員の代替要員の確保・心理的なケアも求められることになります。

一方で、非常災害では、発災直後から数日間の対応が重要です。浸水や建物の被害から人命を守り、一時的なライフラインの途絶を乗り切れるだけの備えが必要です。この数日を乗り越えれば、着実に復旧が進むのが一般的です。

 

こうした事情を踏まえ、
あらゆる事態を想定した計画を
策定しなくてはいけません。

 

策定する「計画」とはどんなもの?自社で策定することもできるの?

BCPに盛り込む事項

では、策定するBCPの「計画」の中には、具体的には、どのような事項を盛り込む必要があるのでしょうか。

厚生労働省では、策定のガイドラインのほか、ひな形、研修動画などを公開しています。 参考:厚生労働省 介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修

策定ガイドラインの目次を見てみると、たとえば自然災害については下記のような項目が並んでいます。

——-
1.総論
2.平常時の対応
3.緊急時の対応
4.他施設との連携
5.地域との連携
——-
出典:厚生労働省「自然災害ひな形」

この資料を踏まえれば、厚生労働省の求める水準のBCPを作成することが可能です。

具体的な作成手順

計画策定は、検討する事項もたくさんありますので、一朝一夕にできるものではなく、ある程度の時間をかけて作ることになります。

 

ここでは、エンジーが
策定支援を行う場合の流れや
スケジュールをご紹介いたします。

 

内容 期間
1.自然災害BCP 「規程」の概要の解説、内容の確認
→(宿題)事業所様にて打ち合わせをもとに「規程」に必要情報をいれていただく
約1ヶ月
2.感染症対策BCP 「規程」の概要の解説、内容の確認
→(宿題)事業所様にて打ち合わせをもとに「規程」必要情報をいれていただく
約1ヶ月
3.机上訓練(自然災害、感染症対策 ➡マニュアルの作成 約0.5ヶ月
4.BCP含め研修計画提案、今回作成した BCP 全体ご説明 約0.5ヶ月
合計 約3ヶ月

 

 

記載すべき内容は膨大

BCPへのより具体的な記載内容としては、下図のような項目が挙げられています。

しかし、ひな形があるとはいえ、資料は膨大にあります。
さらに、自然災害以外にも感染症用の作成もあるので、作り始めるにしても、何から手をつけていいのかわからなくなってしまいがちです。

 

 

BCP策定支援サービスについて

BCPには職員や地域の声を取り入れる

ここまで解説してきたように、BCPの策定は専門性が高くボリュームがありますが、ひな形やガイドラインも公表されているので、時間と手間をかければ事業所のメンバーだけでも作成することは可能です。

とはいえ、せっかく長大な計画を策定するわけですから、「義務化に合わせて、間に合わせで作って終わり」とせず、「使える」内容にしたいところです。
ひととおりの計画を立てて終わりではなく、事業所や周辺地域の実情に見合った定期的な見直しや訓練を継続していくことも欠かせません。

特にBCPは、計画の性質上、職員の声を生かしたり、地域の住民や団体、他事業所と連携を取ったりすることが極めて重要となります。

そうして職員や地域からの信頼を醸成できれば、職員の定着や採用、利用者様の獲得など、事業所の経営にも好影響をもたらすことができます。

エンジーがBCPの策定をお手伝いします

BCP策定の膨大な作業を円滑かつ有意義に進めるためには、BCPに関しての深い理解が欠かせません。
一方で、職員や地域の方を交えた会議の場のセッティング・運営やその内容をフィードバックしていくスキルも必要です。
そこでBCP策定にあたっては、外部のコンサルティングサービスを活用することをお勧めいたします。

 

私ども社会保険労務士法人エンジーでも、BCP策定支援サービスを展開しています。

名古屋市内をはじめ、愛知、岐阜、三重で150以上の介護・福祉事業者様を顧問先とし、指定申請や各種加算の取得支援なども得意としています。

東海地区の事業所様のBCP策定は、地域密着、介護・福祉業界に強い社労士法人エンジーにぜひご相談ください。

 

当社では、これまで約30社※(2024年11月現在)の介護・障害福祉事業者様からご依頼を頂き、ミーティングや計画作成、訓練、定期的な計画見直しなどのご支援を行っています。

※例:有料老人ホーム様(従業員数約100人)、訪問介護事業所様(従業員数5人)、デイサービス様(従業員数約15名)、就労継続支援事業所様(従業員数約10人)、児童発達支援・放課後等デイサービス事業所様(従業員数約10人)、グループホーム様(従業員数約20名)など。

 

BCPは、まず職員を守り、必要なサービスを継続するためのものです。
社員と一緒になって会社の未来を考える絶好の機会としましょう!

 

義務化となったBCPですが
しっかり理解をしながら策定を進め
実のある計画としましょう。

 

》Zoomでの無料相談受付中!まずはご相談ください。

 

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