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社会保険労務士法人エンジー
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営業時間 平日:8:30-17:30
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公開日 2025/05/14
みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。
今回は、最近報道などでよく耳にする「2025年問題」を取り上げます。
本記事では、介護業界における2025年問題とは何か、そして介護業界に与える影響について、詳しく解説していきます。
医療の文脈で聞いたことのある方も多いと思いますが、
介護・障害福祉にも大いに関係があるんです。
具体にはどんなことが問題となるのか、確認していきましょう。
2025年問題とは、文字通り2025年をめどに顕著になる、医療や介護を中心とした社会保障制度に関する様々な問題を指します。
背景にあるのは、第二次世界大戦後のベビーブームに生まれた、いわゆる「団塊の世代」が2025年に75歳以上の後期高齢者になるという人口構造の大きな変化です。
この団塊の世代が後期高齢者になることで、医療や介護サービスの需要が急激に増加し、それに伴い社会保障費が大幅に増加することが懸念されています。
2025年には、75歳以上の人口は約2,080万人に達すると見込まれており、これは日本の総人口(約1億2,400万人)の約17%を占めることになります。
社会全体が高齢者を支える構造へ今もシフトしていることを示すものですが、これは単に高齢者人口が増加するというだけの話ではありません。
後期高齢者は疾患を抱えていることも多いため、介護ニーズがますます高まることを示しており、社会保障制度への負荷がより一層大きくなることが想定されるのです。
「2025年問題」と並んで「2040年問題」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。この2040年問題では、注目している世代が異なります。
2040年問題は、団塊ジュニア世代(第二次ベビーブーム世代)が65歳以上の前期高齢者となる2040年頃に顕著になるとされている問題のことを指します。
この時期には、高齢者人口がさらに増加する一方で、少子化の影響により現役世代の人口が大幅に減少することが見込まれています。
2025年問題が、団塊世代の後期高齢者化に伴う医療・介護費の増大という、社会保障サービスの需要側の変化に主に焦点を当てているのに対し、2040年問題は、高齢者人口の更なる増加と現役世代の減少という、社会保障制度を支える側の変化に着目していると言えるのです。
つまり、2025年問題は財政的な課題が中心である一方、2040年問題は制度維持そのものの危機という側面が強くなるわけですが、これらの問題は本質的には関連しており、双方の視点を意識しつつ対策を考えていく必要があります。
医療や介護保険制度に関する話題として扱われることの多い2025年問題ですが、障害福祉サービスを提供する事業所や利用者にとっても決して他人事ではありません。
これまで障害福祉サービスを中心に利用してきた方が高齢になった場合、介護保険サービスへの移行が大きな問題となってきます。
障害特性と高齢化に伴う支障の双方に対応する切れ目のない支援を提供するためには、障害福祉サービス事業者と介護事業者の連携が必要となる場面も増えてくることが想定されます。
このように2025年は、日本の社会保障制度全体に関わる節目の年であることがうかがえます。
障害福祉サービスにおいても、このタイミングを捉え、利用者の高齢化に対応した新たな支援のあり方を模索していくことが求められています。
では、実際に、2025年問題はどういった
影響を与えるのか。
介護業界を例に確認していきましょう。
ここでは、以下の3つの観点から影響を見ていきます。
団塊の世代が後期高齢者となり、介護サービスの需要が飛躍的に増大することは先ほども説明したとおりですが、その一方で、少子化は現在も進行しており、現役世代の人口は減少し続けていることも忘れてはいけません。
この結果、何が起こるかというと、介護を担う人材の確保が極めて困難な状況になるのです。これは介護に限った話でもないのです。
厚生労働省の推計によれば、2025年には約32万人の介護職員が不足する見込みであり、現在の介護現場が抱える人材不足の深刻さがますます増すことが予想されます。
ここでの人材不足は、量的な不足というだけでなく、質の低下を招く可能性も否定できないのです。
限られた人員で多くの利用者をケアする状況は、介護職員一人ひとりの業務負担が増加し、結果として離職率を高める悪循環を生み出しかねません。
また、急ぐあまり、十分な知識や経験を持たない人材が現場に投入されてしまうと、今度は適切な介護が提供されないというサービスの受け手側にも悪影響が出てしまうのです。
さらに、人材不足は介護事業所の経営にも大きな影響を与えます。
人員基準を満たせない事業所は、介護報酬の算定や指定にも影響が及び、最悪の場合、事業の継続が困難になることも考えられます。
介護サービスの安定的な提供という意味では、こうした事態は回避しなければなりません。
後期高齢者人口の急増は、医療や介護といった社会保障費の増大に直結します。
先に述べたように団塊の世代は、慢性的に疾患を抱えていることが多く、若年層に比べ医療や介護サービスをより必要としています。
医療や介護は社会保険料だけでなく、社会保障費として国からの支出もありますので、今後国の財政はさらに圧迫され、現役世代の社会保険料や税負担が増加する可能性が非常に高いと考えられます。
こういったことにならないよう避けるためにも、容易なことではないですが、介護事業の効率化といったことも検討していかなければなりません。
介護サービスの需要が供給を大幅に上回ることで、必要な時に適切な介護を受けられない「介護難民」が増加するリスクも高まります。
特に都市部においては、介護施設の不足が顕著で、入所待ちの高齢者が大幅に増加する可能性があります。
在宅介護を希望する高齢者にとっても、訪問介護サービスの担い手不足により、必要なサービスを受けられないという状況が広がることも懸念されます。
介護難民の増加は、高齢者本人だけでなく、その家族にも大きな負担を強いることになります。
例えば、家族が仕事を辞めて介護に専念せざるを得なくなるケースや、心身ともに疲弊してしまうケースが増加することが予想されます。
この問題においても、人材不足や財源の問題が大きく絡んでおり、容易に解決できるものではありません。
2025年問題は介護業界にとって大きな危機であり、今後さらに厳しさが増すことが予想されます。
今のうちから人材育成をはじめとする多方面からの対策を講じておくことは、今後の事業運営においても重要なものとなるでしょう。
ここまで2025年問題の深刻さについて見てきましたが、
ではどうすればいいのか?とお思いかと思います。
この難しい局面においても、自分たちでできることはありますので、
できることから対策を始めていくのがよろしいかと思います。
人材確保をするにしてもそもそもどうやって介護職にアプローチしていけばいいのか、そこで悩んでしまう方も多いと思います。
特に、どのようにすれば介護職に関心を持ってもらい、新たな人材と出会えるのか悩ましい問題です。
この課題を解決するためには、情報発信を積極的に行い、事業所の魅力を効果的に伝えることが重要になります。
近年、SNSやWebサイトは、情報収集やコミュニケーションの主要なツールとして、特に若い世代に広く活用されています。
介護事業所においても、この流れを捉え、積極的に情報発信を行うことが、新たな人材との出会いを創出するきっかけにもなるでしょう。
日々の業務に追われ、なかなか時間を取るのが難しいかもしれませんが、これらの情報発信を通じて、事業所の雰囲気を伝え、親近感を持ってもらうこともできます。
さらに、オンライン説明会など直接的なコミュニケーションを取る機会を設けることで、求職者の疑問や不安を解消することにも繋がります。
これらの施策は、介護職に対するイメージアップにも繋がり、これまで介護業界に関心のなかった若い世代に魅力が伝わるかもしれません。
情報発信を積極的に行うことで、より多くの人材にアプローチし、人材不足の解消に繋げていくことが期待されます。
人材を確保するためには、多様な働き方を支援するとともに、労働条件の改善を図る必要があります。
特に、介護職員の能力や経験に応じた昇給・昇格制度を明確化したり、長期的なキャリア形成を支援するといったことは重要になってきます。
また、専門性を高めるための研修機会の提供や、管理職への登用制度などを整備することも重要です。
これらは介護報酬の算定にも関係してきますので、積極的に取り組んで損はありません。
離職率を低下させる上では、職員のキャリア制度だけでなく、その労働環境を整備することも不可欠です。
業務の効率化や役割分担の見直し、職種間連携も通じて、残業時間の削減に取り組みます。
時間外労働が必要であったとしても、忙しいからしょうがないよねで済ませずに、慢性化しないような対策を取ることも重要です。
パワーハラスメント、セクシャルハラスメントなどのハラスメントを防止するための研修実施を検討するのもひとつの手段としてあると思います。
安心して働ける環境づくりも大切です。
どんな組織でもそうですが、定期的なミーティングや意見交換の場の設定、積極的なコミュニケーションなど、職員が気軽に相談できるような雰囲気づくりを心がけるとともに、互いに協力し支え合う関係性を築いていくことも労働環境の改善としては有用です。
ICT活用で業務効率化・省力化を図り、介護職員が質の高いケアを行える(集中できる)ような環境を整備することも重要です。
見守りセンサーや介護記録、オンライン研修・会議、事務作業の自動化などなど、検討できる部分は色々あると思います。
介護現場においてもICTを活用できる部分では積極的に活用していくのが良いでしょう。
スキルアップ支援制度の充実でサービスクオリティの向上や職員モチベーションの維持、キャリアアップを目指します。
資格取得支援もそうですし、研修機会の提供やキャリアパス制度整備といったことでも職員のスキルアップに繋がります。
人材不足対策として、外国人人材の採用を検討することも必要になってくるでしょう。
現在は技能実習生の在留資格も認められていますので、外国人が日本で就職するという事例も増えてきています。
外国人人材を採用する場合の留意点としては、日本語学習や生活支援の充実、異文化理解のための日本人向け研修、資格取得の外国人向け支援の強化といった、受け入れのための体制整備が必要になる点です。
これらの対策を講じることで2025年問題に対応し、持続可能な事業運営と質の高い介護サービスの提供を目指していくことが可能になります。
ここで紹介したものでも対応が難しい場合もあると思います。
各事業所の事情にに応じた対策をその都度判断していくということが
何より大切になってくるのだと思います。
2025年問題の要因となる後期高齢者の増加は避けられないことですが、適切な対策を講じて臨めば、問題でなくしたり、影響を弱めたりすることはできるものだと思われます。
ただ、簡単に解決できる課題でないことも事実ですので、きちんと備えておくことが大切になります。
もちろん介護事業者だけが頑張れば良いというわけではなく、国や自治体といった行政や、地域社会も含めて、各々がそれぞれの立場で取組を進めていくことが不可欠なのだと思います。
今回の内容を参考に、介護事業者の皆様におかれましては、人材確保や育成、業務効率化など、早めの対策を戦略的に講じていきましょう。
社会保険労務士法人エンジーでも、介護福祉に強みを持つ専門家として、皆様を全力でサポートしていきます。
労務管理に関する課題や具体的な対策について、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
著者について