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社会保険労務士法人エンジー
地下鉄名城線 東別院駅 徒歩1分
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営業時間 平日:8:30-17:30
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公開日 2024/11/29
みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。
この記事では、介護事業でこれから起業しようと考えている方に向けて、そもそもどこから手を付ければ良いのか、何を考えないといけないのかなど、介護事業の起業に必要な準備や注意点を順を追って解説していきます。
長い記事になってしまいましたが、この記事を読み終えた頃には、起業に向けた道のりがイメージできるようになっていると思います!
介護事業は他の業種とは異なり、法規制や運営基準など介護事業特有の課題が存在しますので、そういった部分も含めて、介護福祉専門の社労士が徹底解説していきます。
いきなり法人化の話!?と思われるかもしれませんが、介護事業で起業するには、法人格の取得が必要です。
そこで、ここではそもそもどういった法人にすれば良いのか、法人形態から考えていければと思います。
法人形態には例えば、株式会社、合同会社、NPO法人といったものがありますが、これらには非営利・営利の違いもありますので、それぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説します。
非営利法人の場合、税制優遇や補助金などの支援を受けられる場合があります。さらに、社会的な信用度も高く、地域への貢献という観点では介護事業に適した形態と言えます。
一方で、非営利法人という特性上、社員(出資者)に対して収益を分配できませんので、資金調達や経営者のモチベーションが維持できるかというところを見極めないといけません。
介護事業者は非営利法人なのでは?と思われるかもしれませんが、現在は営利法人の形態も一般的になってきています。
このうち、株式会社は一般に金融機関等からの資金調達がしやすいというメリットが挙げられます。
一方で、合同会社は設立費用が比較的安く、手続きもシンプルなため小規模な事業を始める場合に適しています。
どの法人形態を選ぶべきかは、事業の規模や目的、資金調達方法によって異なります。
法人形態の選択は事業の土台を決める大切な決断ですので、専門家にも相談しながら慎重に判断していくことをおすすめします。
法人形態を考えたところで
全体の準備の流れを
確認しましょう。
介護事業を始めるには、まず事業を行う地域のニーズや市場調査を行って、どのサービスを提供するのかというのを考えることが重要です。
一口に介護事業と言っても、訪問介護やデイサービス、小規模多機能型居宅介護など、サービスの種類は多岐にわたり、種類ごとに必要な設備や人員が異なります。
競合が存在するのか、その地域はどういった特性があるのかといったことを考慮して、自分の強みを活かした事業モデルを選定することをおすすめします。
さらに、事業計画書を作成し、収支計画や開業までのスケジュールを具体化していきます。
法人形態が決まったら、次に行うのは「法人格の取得」です。
法人の設立には、法務局での登記手続きが必要です。
印鑑や定款の準備が必要で手続きに数週間かかりますので、時間的余裕を持って準備を進めましょう。
次に、事務所の選定と契約を行います。
利用者のアクセスや地域の競合状況を考慮して、立地条件を絞っていきましょう。
加えて、事務所の設備が基準を満たしていることが求められるため、介護事業に適した物件を選ぶことが重要です。
また並行して、必要な資格を持つ人員の採用を進め、介護保険事業者としての指定基準を満たす体制を整えます。
介護保険事業者として運営するには、都道府県や市町村が実施する指定前研修を受講する必要があります。
この研修では、法令遵守や運営基準に関する知識を学び、事業運営の基盤を固めることを目的としています。
研修のスケジュールは地域によって異なるため、ご自身の地域の自治体の情報を事前に確認しておきましょう。
事業を開始するためには、自治体に介護保険事業者としての指定申請を行う必要があります。
申請書類には、事業計画書や人員配置計画、設備の図面などが含まれており、不備があると審査が遅れるため、事前にしっかりとチェックすることが重要です。
また、審査には数週間から数ヶ月かかることもあるため、計画的に進めていきましょう。
自分たちで揃えるのが大変な場合には社会保険労務士などの専門家にも相談しながら準備をしていくと安心です。
無事に指定を受けることができたら、開業準備に入ります。
設備の最終確認、スタッフの研修、利用者募集の広報活動などを行い、スムーズな運営開始を目指します。
また、開業後は利用者の声を反映しながら運営を改善するサイクルを確立することが重要です。
定期的な業務の見直し・改善や、スタッフの継続的な教育を行い、信頼される事業所を目指しましょう。
介護事業で起業する際に
求められる資格について
解説していきます。
介護保険や障害福祉サービスを利用する場合には、一定の資格や人員要件を満たす必要があります。
事業者自身が資格を保有している場合もあれば、必要な資格を持つ人材を雇用することで基準を満たす場合もあります。
いずれにせよ、適切な資格要件を理解し、それに基づいた人員配置が求められます。
具体には、
・介護福祉士
・介護支援専門員(ケアマネジャー)
・社会福祉士
などといった資格があります。
また、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者、サービス提供責任者、生活相談員など、資格や実務経験が必要な人員を配置することも求められます。
さらに、事業所の管理者に求められる資格や経験も重要です。
管理者には介護業界での一定の実務経験が必要とされ、加えて事業運営やスタッフ管理のスキルも求められるため、資格保有者を採用するだけでなく、継続的な教育や研修が欠かせません。
特に、指定申請時には人員配置基準を満たしていることが行政によって確認されますので、その点は注意するようにしましょう。そのため、必要な資格保持者を確保できているか、事前にしっかりとチェックすることが重要です。
また、資格取得支援制度を活用することでスタッフのスキルアップを図り、事業全体の質を向上させることも可能です。
介護事業を成功させるためには、資格に関する法的要件を満たすだけでなく、利用者に信頼される体制を整えることも大切な要素です。
一つ前の章でも触れましたが、介護保険事業者として求められる基準があり、事業の種類ごとに定められた人員基準を満たす必要があります。
例えば、訪問介護の場合、介護福祉士や初任者研修修了者などの資格を持つヘルパーを一定数配置することが求められるほか、管理者やサービス提供責任者といった役職も必要になります。
これらのスタッフの配置基準は、利用者の数や提供するサービスの規模によって異なります。
人員基準を満たさない場合には、指定を受けることができなくなってしまいますので、事前に十分な計画と採用活動を行うように気をつけましょう。
運営基準とは、介護事業所が適切に運営され、利用者に質の高いサービスを提供するためのルールを指します。
具体的には、利用者との契約書の作成や、介護サービスの記録・報告を行うことが含まれます。
また、利用者の苦情を適切に受け付け、解決する仕組みを整えることも運営基準の一部です。
さらに、定期的な業務評価やスタッフの研修を実施し、事業所全体の品質を向上させることが求められます。運営基準を遵守することで、行政や利用者からの信頼獲得にも繋がりますので、気を配るようにしましょう。
設備基準は、事業所や施設が安全で快適な環境を提供できるよう定められた要件です。
例えば、デイサービスでは、十分な広さの共有スペースや利用者が安全に移動できる手すり、バリアフリー設計が求められます。
通所系の事業所の場合、定員数に応じた広さが決められており、その他、事務室、相談室、トイレ、洗面所などサービスごとに要件が設定されています。
また、消防法や建築基準法に基づいた安全対策が施されていることも確認されるため、設備基準をクリアするためには、適切な物件選びと、細かな法令確認が欠かせません。
これら3つの指定基準を満たすことは、介護事業を始める上での最低条件です。
事業の信頼性と運営の
スムーズさを確保するために
それぞれの基準を正確に理解し
準備を整えましょう。
次に、起業する際に必要となる費用について解説していきます。
介護事業を起業する際、最初にかかるイニシャルコスト(初期費用)としてかかってくるものには、
・法人設立費用
・事業所の賃貸契約費用
・施設や設備の購入費用
・スタッフの採用費用
などがあります。
例えば、訪問介護の場合、事務所スペースと最低限の備品でスタートできますが、デイサービスなどの施設型サービスでは広いスペースやバリアフリー対応の設備が必要なため、初期費用が高額になりがちです。
そのほかにも、介護保険事業者の指定申請に必要な手数料や、行政に提出する書類作成のための専門家への依頼費用も発生します。
事業開始後には、毎月発生するランニングコスト(運転資金)が必要になってきます。
主な費用としては、
・人件費
・事務所や施設の家賃
・光熱費
・保険料
・消耗品費
・利用者へのサービス提供に伴う運営費(クリーニング、レクリエーションなど)
があります。
特に人件費は全体のコストの大部分を占めるため、効率的な人員配置をするように心がけましょう。
また、広告宣伝費や研修費用なども継続的に発生する可能性があるため、これらを含めた資金計画を立てることが重要です。
介護報酬の入金サイクルは通常月末締め翌々月末入金であるため、初期段階ではキャッシュフローの管理が特に重要となります。万が一の事態に備え、数か月分の運転資金を確保しておくと安心ですね。
コストをしっかりと把握し資金計画を立てることが
その後の安定した経営に繋がりますので
ここも大変重要なポイントです。
起業する際の資金調達方法として、金融機関からの融資を選択することが多いと思います。
日本政策金融公庫は創業者向けの融資制度を数多く提供しており、介護事業にも積極的に融資を行っていますので、ひとつ候補に上がると思います。特に、新たな事業を始める際の「新創業融資制度」や、小規模事業者向けの「生活衛生貸付」などが利用可能です。
地方銀行や信用金庫も地域密着型の融資プランを提供しているため、地元の金融機関に相談するのも有効だと思います。
融資を受ける際には、事業計画書を見て、事業の将来性や収益見込みがどうなのかという点を必ず確認されますので、しっかりと作り込んでいくようにしましょう。
事業計画書には、収支計画、ターゲット市場、競合分析などを盛り込み、説得力のある内容にすることがポイントです。また、借入金額に応じて保証人や担保が必要になる場合があるため、事前に条件を確認し、準備を整えておくことが大切です。
介護事業を起業する際には、国や自治体が提供する助成金・補助金を活用することで、資金負担を軽減することも可能です。
例えば、「地域介護・福祉空間整備等事業」では、介護施設の新設や改修に対する補助金が提供される場合があるほか、「キャリアアップ助成金」などを利用し、従業員の採用や研修にかかる費用を一部ですがカバーすることもできます。
助成金や補助金は返済の必要がない点がメリットですが、その分、申請手続きが煩雑で締切が厳しいことが多いため、早めの準備が必要です。申請には、計画書や必要書類の提出が求められるため、社労士や行政書士といった専門家のサポートを受けるのも良い方法です。
自治体によって支援内容が異なりますので、ご地元の自治体で利用可能な制度を確認するのが良いと思います。
融資と助成金・補助金を
上手く組み合わせることで
効率的な資金調達を行いましょう。
これまで起業について解説してきましたが、ここで気を引き締める意味合いも兼ねて、介護事業の経営の難しさ、経営上の注意点について、お伝えしておきたいと思います。
介護事業は需要が高い一方で、廃業率も比較的高い業種として知られています。
その主な原因は、資金繰りの難しさや担い手不足、利用者が確保できないことなど、多岐にわたります。
特に人材不足は深刻な状況ですので
①介護スタッフを確保すること
②離職者を減らすこと
上記の2点が経営を安定させる上で大きなポイントとなります。
また、要件の変更など介護報酬の改定も経営に大きく影響しますので、定期的な改定に対応できる柔軟な運営が求められます。
これらのリスクをきちんと把握し、事前に対応策を講じることで廃業のリスクを十分に軽減できますので、落ち着いて準備を行っていきましょう。
その上で、介護事業を成功させるためには、綿密な事業計画の策定が不可欠です。
収支計画やターゲット層の設定、地域ニーズの分析などを具体的に盛り込むことで、事業の方向性が明確になり、リスクを最小限に抑えることができます。
事業計画は融資の申請や行政への指定申請時にも使いますので、丁寧に作って損はありません。
計画は一度立てたら終わりではなく、定期的に見直し、事業の現状や外部環境に応じて柔軟に更新していくことが必要です。特に収支計画では、介護報酬の入金サイクルを考慮し、資金繰りに無理が生じないよう設計することが重要です。
計画に基づいた堅実な運営を行い、廃業率の高さというハードルを乗り越えていきましょう。
計画の質が事業の未来を左右する
と言っても過言ではありませんので
入念に準備しましょう。
今回の記事では、介護事業で起業する際の全体的な流れや注意すべき点について解説してきました。
今回解説したポイントを参考に、計画策定や介護事業社の指定、資金調達などを一つずつ着実に進めていきましょう。
開業準備で不安な点やわからないことがある場合には、専門家へ相談してみるのもおすすめです。社会保険労務士法人エンジーでも無料相談を受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。
さらに、現在は、介護・障害福祉サービス事業の経営者を対象とした「会社成長塾」も開催しておりますので、こちらもご活用いただければと思います。
会社成長塾は介護、障害福祉サービス経営者のための学び場です。
「福祉事業ごとの収益構造を知る」「自立型職員のリーダーシップ」「採用の考え方を学ぶ」など、介護・障害福祉業界で生きる経営者の悩みや視点に深くスポットを当てたカリキュラムですので、よりリアルで具体的な悩みや課題に向き合うことが出来ます。
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