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公開日 2018/04/01
最終更新日 2018/08/31
第一弾のQ&Aも公表され、ようやく全体像がほぼ見えてきたと言っても過言ではない2018年度法改正。
この時期は資料の読み込みもほぼ終了し、対応策の最終検討・調整に入っている事業者様も多いのではないでしょうか。
ここ数か月の間は法改正関連の情報一色で進んできた本ニュースレターですが、今号からは法改正1本に絞ることなく、直近で発信された行政・市場関連情報のうち、特に事業者として注視すべき内容をトピックスとして採り上げ、お届けしてまいります。
今月は「高齢社会対策大綱(以下、「大綱」と略記)」についてです。
今回話題として採り上げる大綱は、「政府が推進すべき基本的かつ総合的な高齢社会対策の指針」として法的根拠が明確に位置づけられており、今後、ここで示された大方針に基づいて様々な行政施策が展開されていくことになります。
その意味でも本大綱の大枠を理解しておくことは高齢者向けに支援を行っている介護事業者にとって非常に重要な事であることは間違いなく、今号では中でも重要と思われる「(本大綱の)基本的な考え方」、及び、その中で示された「数値目標(介護業界に特に関連深い部分のみ抜粋)」について確認してまいります。
まずは本大綱の「基本的な考え方」について確認してまいりましょう。発表資料の中では、大きく3つの考え方が柱として掲げられています。
(1)年齢による画一化を見直し、全ての年代の人々が希望に応じて意欲・能力を活かして 活躍できるエイジレス社会を目指す。
(2)地域における生活基盤を整備し、人生のどの段階でも高齢期の暮らしを 具体的に描ける地域コミュニティを作る。
(3)技術革新の成果が可能にする新しい高齢社会対策を志向する。
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(1)(2)に関しては(異なる表現ではあったものの)以前より唱えられてきた内容であり、目新しさはそれほどないように映るかもしれません。
しかし、(3)の「新技術を高齢者の能力発揮に向けていく」という部分については或る意味、新鮮に映るのではないでしょうか。
(3)に即して考えてみた場合、今まで介護業界では“介護職員の業務効率化・生産性向上”という文脈で新たな技術(ロボット・ICT・AI等)の活用が叫ばれていましたが、今後は「高齢者自身の能力発揮の最大化」という視点に基づいた新技術や新商品(サービス)が生まれてくる可能性が高い、ということを是非、頭に置いておく必要があるでしょう(「高齢者が日常生活を送る上での能力発揮」という視点もあれば、「高齢者が就労を始めとする“社会参加”を行う上での能力発揮という視点もあるでしょう)。
以上が本大綱における「基本的な考え方」についてです。それでは続いて、本大綱に置いて掲げられた「数値目標」から特に介護業界に関係が深いであろう内容を抜粋してお伝えしてまいります。
先ずは、介護職員に関連する数値目標についてです。
【介護職員に関連する数値目標】
(1)2015年度段階で183.1万人だった「介護職員数」を、2020年代初頭までに「231万人」に増加させる (2)2016年段階で0.5 万円だった「介護人材と競合他産業との賃金差(介護職員26.7 万円、対人サービス産業27.2万円)」を、2020年代初頭までに「解消」させる。
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(2)については各事業者に依る更なる自助努力を期待すると共に、来年10月より予定されている「勤続年数10年以上の介護福祉士に月額8万円相当の処遇改善を行う」ことを算定根拠とした公費枠の増大、ということも念頭に置かれているように推察されます。
続いては健康なまちづくり(ソフト面)に関連する数値目標についてです。
【健康なまちづくり(ソフト面)に関連する数値目標】
(3)2016年度段階で880万人だった認知症サポーター数を、2020年度末までに「1,200万人」に増加させる。 (4)2013年段階で男性が71.19歳、女性が74.21歳だった健康寿命を、2020年までに「1歳以上」、2025年までに「2歳以上」延伸させる。 (5)2017年に79団体だった「生涯活躍のまち構想について取組を進めている地方公共団体数」を、2020年までに「100 団体」にまで増加させる。 (6)2016年段階で男性が62.4%、女性が55.0%だった「働いている、又は、ボランティア活動、地域社会活動(町内会、地域行事など)、趣味やおけいこ事を行っている60 歳以上の方の割合」を、2020年までに男女とも「80%」へ増加させる
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(3)の認知症サポーター数は既に9,687,916人(2017年12月段階)にまで達しており、「2020年度までに1,200万人」という数字は十分達成が見込めるものと思われます。
(4)の目標は、下の(5)(6)の進捗が大きく影響してくると考えて差し支えないでしょう。
続いては、「高齢者が暮らしやすいまちづくり(主にインフラ面)」の数値目標についてです。
【高齢者が暮らしやすいまちづくり(主にインフラ面)に関連する数値目標】
(7)限定地域で行われている無人自動運転移動サービスを、2025年までに「全国普及」させる。 (8)2016年度段階で15,128 台だった「福祉タクシーの導入数」を、2020年度までに「約28,000台」にまで増加させる。 |
(7)2025年までに無人自動運転移動サービスが全国普及する・・・・現時点ではなかなか想像がつきづらい未来像ですが、本分野における世界の加速的な動きを背景に、日本においても2025年“まで”の目標設定がなされているようです。是非、実現に向けて頑張っていただきたい、と個人的には思います。
続いては、「高齢者の住まい」に関する数値目標です。
【高齢者の住まいに関する数値目標】
(9)2013年に4兆円だった既存住宅流通の市場規模を、2025年までに「8兆円」にまで拡大させる。 (10)2014年段階で2.2%だった「高齢者人口に対する高齢者向け住宅割合」を、2025年までに「4%」にまで引き上げる。 (11)住宅確保要配慮者(=低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯など、住宅の確保に特に配慮を必要とする方々)向け賃貸住宅の登録戸数を、2020年度までに「17.5 万戸」までに増加させる。 |
(9)(11)に関しては昨秋に施行された「改正住宅セーフティネット法」により動きが加速していくものと思われます。特に(9)に関しては空き家を高齢者の共同住居として有効活用する等、新たな動きが徐々に始まっていくのではないでしょうか。
それでは最後、その他、関連する数値目標についてです。
【その他、関連する数値目標】
(12)2012年度段階で10.1万人だった「介護施設・サービスを利用できないことを理由とする介護離職者数」を、 2020年代初頭までに「解消」させる (13)2015年段階で24.4億円だった介護ロボットの市場規模を、2020年までに「約500億円」にまで成長させる。
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(13)については特に要注目ではないでしょうか。5年間でおよそ20倍の市場を創造する・・・・
これは、国策的な追い風無くして実現できる数値では決してありません。その意味でも今後、どのような助成金・補助金が形成されるか、しっかりと注視しておく必要があるかもしれません。
以上、高齢者大綱の「基本的な考え方」及び「数値目標」について確認を進めてまいりました。
繰り返しとなりますが、本大綱は「政府が推進すべき基本的かつ総合的な高齢社会対策の指針」として法的根拠が明確に位置づけられており、今後、ここで示された大方針に基づいて様々な行政施策が展開されていくことになります。
国策との関連性が強い介護業界としては今後の“風”をしっかりと見極め、それらを“追い風”として活用出来るような経営戦略を練り上げていく事が今後、ますます重要になってくるものと思われます。その意味でも上記内容をしっかりと把握・理解し、「自社の経営にどう活かしていくか」あらためて思考を深めてみることを強くおススメする次第です。
私たちも今後、より有益な情報を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。
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