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社会保険労務士法人エンジー
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営業時間 平日:8:30-17:30
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公開日 2025/10/29
みなさん、こんにちは!
社会保険労務士法人エンジーでは、介護施設や障害福祉サービスを運営している事業者様に向けて、様々な情報を発信しています。
今回のブログは、訪問介護計画書を作成するうえでのポイントをおさえ、疑問を解決するガイドとなりますので、ぜひ最後までご覧ください。
訪問介護計画書とは、施設利用者が自宅で受ける介護を、
行うかを一枚にまとめた実行計画です。
ケアプラン(居宅サービス計画)を土台に、事業所のサービス提供責任者が利用者の状態に合わせ、目標とその評価指標、具体的な手順、所要時間、担当者、曜日や時間帯までを具体化してまとめるものです。作成後は利用者とその家族へ計画の内容を説明し、同意を得たのち写しを交付します。実施状況を定期的に確認しながら、必要に応じて見直します。
つまり、訪問介護計画書は現場のサービスと帳票、ケアプランをつなぐ設計図であり、実地指導でも確認される非常に重要な書類です。
訪問介護計画書は、遅くとも初回のサービス提供(初回訪問)を開始する前までに、訪問介護作成・説明・同意・交付を完了しておきます。契約・重要事項説明のタイミングで完了させ、初回訪問まで持ち越さない運用にすると確実です。
作成にあたり、まず以下のような基礎情報を整理したり、目標や担当を設定しておく必要があります。
| ケアプラン情報 | 長期・短期目標、第3表(週間サービス計画表)の曜日・時間帯・頻度を確認(=計画書とケアプランの整合を図る際の基準) |
| アセスメント要約 | ADL/IADL、生活リズム、住環境、医療情報、家族支援、本人の希望、リスク(転倒・誤薬など)を200字程度を目安に要約します。 |
| 目標と評価指標 | 長期/短期の目標を具体的かつ測定可能な、期限を設けて設定し、到達基準と測り方を明確化しておきます。 |
| 具体的サービス内容の設計 | 部位/道具/順序/留意点/到達基準まで明記します。(例:清拭温度、観察項目、臭気0/10 など) |
| 所要時間・日程・担当の確定 | 1回=1枠(1訪問)の利用者宅での滞在時間の目安(入室~退室)、曜日・時間帯、担当(氏名/ID)を決め、第3表と同じ言葉にそろえます。 |
| 説明・同意・交付の証跡 | 説明日・同意者・署名(電子可)・交付日を証跡として残しておきます。変更が生じた際には版ごとに管理し、記録を残し、作成後は遅滞なく交付できるような運用を設計しておきます。 |
作るのは初回訪問の前が鉄則。
契約・重要事項の説明とセットで、
説明→同意→交付まで一気に済ませましょう。
ケアプラン変更や入退院のときも、迷わず見直しです。
また、作成した訪問介護計画書と、実際に行っているケアの進め方にズレが生じた時(ケアプラン(第3表含む)の新規作成時・変更時、入退院や体調の変化、家族体制の変更、加算や体制変更の開始、または同様の延長や短縮等)には、必要に応じて変更(再説明~交付)を行います。
訪問介護計画書における既定の様式はなく、事業所ごとに定めてOKです。
厚労省の解釈通知(老企第25号)にも、訪問介護計画の様式は、各事業所ごとに定めて差し支えないと明記されています。
ただし、
まで含めることが前提となります。
また、実地指導では訪問介護計画書・実施記録・週間サービス計画表の3点にそれぞれ矛盾がないかを確認します。訪問介護計画書ならびに実施記録の作成は省令により義務付けられていますが、実地指導を見据え、週間サービス計画(任意)もふまえた3点セットを意識して作成、運用にあたるとよいでしょう。
「任意様式」においてポイントになるのは再現性です。
誰が書いても同じ水準になるよう、必須項目の表記や順序、単位(分/回/週)などはきちんと揃えましょう。
生活課題・ニーズを簡潔に言語化します。転倒・衛生・服薬などの課題が当てはまります。
例えば「立位が不安定でトイレ掃除が難しい」「家族の支援は日曜のみ」「臭気は10段階中3」など、事実/原因/ニーズの順で書くと読みやすくなります。ここが曖昧だと、そのあとの目標やサービス内容がぼやけてしまいますので、きちんと明確化しておきましょう。
次に、長期目標(3〜6か月)と短期目標(2〜8週間)を設定します。
どちらも達成できたかが判断できるよう 、SMART(具体・測定・達成・関連・期限)で表現します。
例:「2週間以内に火・木の午前、トイレ・洗面の掃除を各30分実施し、臭気スコア0/10を維持」
合わせて、いつ評価するか(例:月1回)、どうやって測定するのか(例:臭気0/10、遵守率90%以上)も決めておきます。
サービスの中身については、目的/具体内容/手順/留意点/到達基準の流れで書きます。
例えば生活援助なら、以下のリストのように整理するとよいでしょう。
| 目的 | トイレ・洗面の衛生維持 |
| 対象部位 | 便器・床・手すり、洗面ボウル・蛇口・鏡 |
| 手順 | ①換気②洗剤③水拭き④乾拭き |
| 留意すべき点 | 薬液の残りに注意 |
| 到達基準 | 臭気:0/10 滑り:0/10 |
身体介護も同様に、順序や角度、確認ポイントまで具体化します。
週間サービス計画表は、いわば1週間分の介護の時間割です。ケアプラン(居宅サービス計画)に書かれた方針と齟齬がないか、そして、計画書の本文に書かれた「曜日・時間・分数・内容・担当者」と一致しているかを確認します。
実地指導では、ケアプラン→計画書→週間表→実績の見比べが行われます。ここで間違いがあると、説明に時間がかかってしまいますので注意しましょう。
作成した計画は、利用者とその家族に分かりやすい言葉で説明し、同意をいただきます。署名(電子署名も可能)と日付、いつ交付したか(交付日)を必ず残してください。途中で内容を変更した際、再度の説明・同意が必要か否かも併せてルール決めをしておくとよいでしょう。
介護計画書に沿った介護を実施し、その後もモニタリング(評価)と、必要に応じ計画を修正しましょう。この時、モニタリングに用いる評価指標を設定しておきましょう。
計画書は作って終わりではなく、運用開始後は以下のポイントに注目し、計画に沿った支援の実施と見直しによりサービスを改良していくことが重要です。
運用が始まったら、決めた頻度(例:月1回)で評価し、同様の方針を継続していくのか、強化していくのか、変更するのか、といった判断について短文で記録を残していきます。
例:「予定どおり週2回実施。臭気0/10を維持。体力低下で乾拭き工程に時間増→所要時間を30→40分へ見直し提案」
計画を変えた場合は、
いつ・なぜ・何を変えたか、
説明・同意をとったかまでを明記しておきます。
これが、現場としての「やむを得ない調整」なのか、もしくは計画的な変更であったのかを区別する根拠になります。変更の履歴は版ごとなどで(例:Ver.1.2/改定日/改定者)管理し、週間サービス計画表と実施記録に即時反映することを心がけましょう。
計画書や記録は、一定期間の保存が求められています。
地域によっては上乗せ期間が定められていたり、電子保存の運用ルールが示されている場合があります。自法人の就業規則や重要事項説明に保存年限と保存方法(紙・電子、版管理)をはっきり明記し、所轄自治体の運用に合わせてください。
電子保存の場合は、検索できるファイル名や版番号、交付日のわかる履歴を整えると、実地指導の応対が格段にスムーズになります。
クラウド上で管理する運用であれば、アクセスログと自動バックアップを有効にし、紙の運用が混在する場合は、定期的にデータ保存(例:月末にスキャン)し、紙面の情報の廃棄手順まで明文化しておきましょう。
退職・異動時のアカウント停止も忘れずに。
計画書・記録には健康・生活に関するデリケートな情報が含まれます。情報へアクセスできる担当者とその権限を絞り、持ち出しや送受信の方法を社内ルールで明確化しましょう。
スタッフへの個人情報の取扱いに関する教育の機会を設けたり、
情報へアクセスする際の権限を確認するなど、
個人情報の取扱いについては、
定期的に運用を見直すようにしましょう。
目的外利用をしない、不要になった情報を適切に廃棄する、誤送信を防ぐといった基本の徹底が、クレームやトラブルの予防になります。
前提として、計画書(何を・どこまで)/週間サービス計画表(いつ・誰が・何分)/実施記録は、同じ言葉・同じ分数や単位でそろっていることが大切です。
以下、おこりがちなミスとその予防策を参考にしてください。
例:「安全に配慮」「清潔を保つ」など
達成か未達か判断ができず、改善するにあたっての方向性も見えてきません。「2週間以内に、火・木の午前、トイレ・洗面の掃除各30分で、臭気0/10を維持」といったように、具体的な数値目標や期限を入れましょう。
例:「掃除を支援」のみ
場所・道具・順序・到達基準が不明瞭だと、担当者によっては一貫した質の支援をすることが難しくなります。上記のように、掃除に関する支援をした場合であれば、掃除をした箇所(例:便器・床・手すり)/道具(希釈洗剤・雑巾)/順序(換気→洗剤→水拭き→乾拭き)/基準(臭気0/10・滑り0/10)まで明記しましょう。
ケアプランと自事業所の計画に基づいてサービスを提供する義務があるため、これらの整合が取れないと、監査などの際の説明が困難になります。
ケアマネから変更通知を受けたら、即日で社内週間表・計画本文に反映し、それらの対応ステータスも管理できるようチェックリストを用意しておくとよいでしょう。
緊急時の対応など、利用者の安全に直結する問題については、何をもってして異常と判断するのかといった閾値を把握しておくことや、連絡体制を正確にとり決めておきましょう。
1回=週間表の1枠(1訪問)と定義し、内訳(身体15分+生活15分など)は記録で明示するなど、事業所内の全員で認識を統一させておきましょう。
ミスの多くは、
訪問問介護計画書/週間サービス計画表/実施記録の
同じ意味の言葉や数値基準での表記ブレが原因。
定期的に各書類の整合性を確認することで未然に予防できます。
重要な変更(内容の追加・削除、所要時間の恒常的変更など)は再同意が安心です。
軽微な時間前後などは社内ルールで取り扱いを明確にしておきましょう。
運用として認められる枠組みがあります。
本人確認ができる署名と版管理・交付日の記録を合わせ、所轄の運用に従ってください。
原則の保存年限があります(運用は自治体で上乗せあり)。電子保存は可能ですが、改ざん防止・検索性・版管理を整え、就業規則と重要事項説明に明記しましょう。
後から見ても、どうしてその判断に至ったのかを追うことができるよう、最低限、予定/実績/理由の三点はおさえておきましょう。
判断に迷うときは事前にケアマネ・看護・所轄へ相談できる体制を整えておきましょう。
現場での担当者レベルの判断や、何かのついでの対応は避けるように、計画書にはやること/やらないことを明示しておきましょう。
閾値→連絡順→要請基準を一行ずつで十分です。
例:「SpO₂<92% → 家族→主治医→事業所/呼吸困難・意識障害は救急要請」など
訪問介護計画書の作成は、現場で利用者さんと向き合う職員の皆さまが担う、とても大切なプロセスです。
計画書は単なる事務作業ではなく、利用者さんの生活をどう支え、どんな時間を共に過ごしていくのかという、現場の想いを形にするもの。
その一枚一枚には、支援への工夫や願いが込められています。
私たち社会保険労務士法人エンジーでは、訪問介護計画書の作成そのものを代行することはできませんが、職員の方々が安心して業務に専念できるよう、人事・労務・体制づくりの面から支援を行っています。
働く環境が整うことで、自然と計画書の質やケアの一貫性も高まっていきます。
訪問介護計画書は、現場のケアを支える“道しるべ”のような存在です。
利用者さんの毎日をどう支えるか、その想いを具体的に言葉にする第一歩として、まずは目の前の1枚を丁寧に仕上げてみてください。
このガイドが、日々の現場での気づきや工夫につながるきっかけとなれば幸いです。
(参考資料)
この記事は以下の資料を参照し作成しています。
・訪問介護計画の作成・説明・同意・交付・モニタ・変更準用(省令本文/厚労省)
・ケアプラン標準様式:第3表=週間サービス計画表(厚労省・記載要領PDF)
・実施記録の整備・完結日から2年保存(e-Gov法令)
・(再掲)モニタリングと計画変更の準用(省令本文/厚労省)
・保存年限の自治体上乗せ例(5年)・電子保存可(川崎市)
・医療・介護分野における個人情報の適切な取扱いガイドライン(厚労省・PDF)
著者について